第2話
ヴィアラット公国バイヤール領。
坑道都市の呼び名に相応しく、採掘場は街の傍にあった。
歴史の深い鉱山で、大樹の根の如く複雑な坑道が縦横に広がっている。
近年は蒸気炉の技術も上がり、髙圧燃料となる鉱石の幅も増えた。
炉そのものを造る希少金属も、此処では多く見つかっている。
そうした有望鉱脈の再採掘中、試掘坑道の一本が崩落。
自然空洞と思しき石窟に通じた。
そこで生じた問題が二つ。
ひとつは、その石窟が鬼獣の生息地に繋がっていると思しき事。
もうひとつは、古地図に印された禁足地が真下にあると分かった事だ。
そして、それらは場所を同じくする可能性が高い。
遺跡は大陸の各地に点在する。
その多くは鬼獣の棲息域であり、国家教会が禁足を指定している。
シュタインバルトの例のように遺跡の封地が公国管理と任じられた例は少ない。
大陸北部のリチル=アスガードもそうだが、こちらは放置されたに過ぎない。
エピーヌ連峰の深奥とあって教会の目が少ないからだ。
フォルゴーン家のような封師の血統もなく、ただ慣習化した稀有な土地だ。
とまれ、聖教会の信仰と再臨歴以前の遺跡が共存する事例は他になかった。
ヴィアラットの坑道の深奥にあるのは前時代の遺構だ。
古地図に拠るも詳細は不明。
坑道都市の懊悩は、この一帯が有望鉱脈として再発見された事だ。
採掘に際して鬼獣の討伐は責務。
だが教会は巣への立ち入りを許可しない。
よって対策は曖昧なままだ。
崩落新道の横穴封鎖を進めつつ、討伐隊が鬼獣の生息域を確定する。
具体的には、保工班の作業を守りつつ鬼獣を狩る討伐班が編成された。
保工班はともかくも、討伐班の募集は難航した。
公軍は動かせない。
部隊の役割りと目標を定めた通常の討伐とは異なるからだ。
調査を兼ねて討伐範囲を拡げる遊撃戦。
しかも狭い坑道に応じた少数部隊は公募で賄われた。
よほど腕に自信のある者か、食い詰めた金目当て。
若しくは何も考えていない者。そうした者が集まった。
馴染みの傭兵は約半数、残りは頭数を揃えたようなものだった。




