表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仮面ノ騎士  作者: marvin
仮面ノ騎士Ⅱ
49/62

第1話

 再臨歴一九七六年、大陸中央

 カルマンカード公国フォルクレル領、

 北部大森林


 兵務所の厩舎に列がある。

 鬼獣討伐の雇兵らが馬を預けに並んでいる。

 カルマンカードのフォルクレル領は討伐地のほとんどが山林だ。

 前衛も兵站も徒になる。

 人の好さそうな若者が厩務に札を貰っていた。

 見れば大層な優男だ。

 兵と呼ぶには厳つさがない。

 上背はあるから荷物持ちだろうか。

 見目で素性を推し量るに、家督を継げず食い逸れた良家の末といった所だ。

 若い馬持ちなどそういない。

 大方そうした事情だろう。

 遍歴の騎士、と夢を見るにしては剣も鎧も手持ちがない。

 何より馬の見目がが悪い。

 白と黒の斑毛の馬で、牛のように鈍重そうだ。

 売れ残りでもないよりましと、押し付けられたものかも知れない。

 手綱を預けた若者は皆の集まる広場に向かう。

 厩務員に告げた馬の名前は、どうやらサイクというらしかった。


 カルマンカード公国は大陸中央の東にある。

 フォルクレル領はその北部、エピーヌ連峰の麓に位置する。

 平地の少ない土地柄だ。

 国家の全てと同様に、カルマンカードもまた鬼獣の住処で国境が割れる。

 ことエピーヌ連峰に至る山は、整備はおろか開墾さえも放置されて久しい。

 そんな地に、今更ながらの戦端だ。

 国境維持の為ではない。

 街道防衛の討伐でもない。

 国軍規模の派兵には人獣殲滅の目的があった。

 無論詳細は伏せられている。

 一般兵や雇兵には、奇異な鬼獣と知らされた。

 古来、一帯には人獣の逸話がある。

 実際、隣領では人獣と接触。

 最初の討伐隊が壊滅したのは二〇年前だ。

 当時はそれこそ鬼獣の一種と見做されていた。

 此処も長らくは禁足地だった。

 十年前、同じく近隣コッペリオ領にて里が人獣に襲撃された。

 多数の被害が出たらしい。

 公国は急ぎ派兵を決断。

 その際、異端の魔術師による人獣飼育場を壊滅せしめた。

 一説に、人獣には鬼獣毒がない。

 無論、公には厳しく秘されている。

 鬼獣ならざる人の敵は常識に罅を入れる。

 聖典を軸とする国家教会にはその耐性がない。

 今回の派兵は人獣の目撃に端を発している。

 あっと云う間の国軍の参画だ。

 いずれまた、様々な隠滅と利権が念頭に置かれているのは間違いない。


 国府や聖教会ののキナ臭い裏事情についてはファルカも独自に聞き知っている。

 さる止事無い家の使いが依頼と共に囁いた。

 彼が古巣に赴いたのは個人的な理由もある。

 喉に刺さった小さな骨を、今度こそ飲み下せそうな機会だったからだ。

 ファルカは駐屯場の広間を見渡した。

 討伐隊の品定めをする。

 陣頭は公国軍。

 正規兵と雇兵の列が分れているのが領兵。

 慣れない山林で民兵の動員にも数がある。

 彼らは指揮にも慣れいない様子だ。

 いずれ気粗な猟夫などが、焦れて黒軍と揉めたりしない事を祈るばかりだ。

 広間の隅には教会派遣の浄化師(ピュアフクト)の一団もいた。

 守門(ポーター)、所謂僧兵も数人。

 聖職者の自衛、あるいは司祭の警護だ。

 派兵の名目は鬼獣討伐だ。

 同行するのは頷ける。

 ただ、教会の研究機関が絡んでいるなら派遣元が気になる所だ。

 鬼獣毒の効かない人獣の身柄は、云わば教会の商売敵でもある。

 聖教会の指針が禁忌指定であるのは間違いないが、彼らも一枚岩ではない。

 どうやら今回は船頭が危うい。

 ファルカは自身の属する民兵の集まりに目線を戻した。

 兵站人員は若手や女も多い。

 経験のない者が食い扶持稼ぎに集まっている。

 ファルカも前線に立つ気は更々ない。

 荷物持ちの方が動き易いと踏んでの事だ。

 ただ、それも指揮次第だろう。

 班分け、点呼、挨拶がてらに見て回ると、ファルカと同じ歳頃の若者がいた。

 人好きのする若い男だ。

 長身痩躯の優男だが、気取った所が何もない。

 ただ、微かに疼くものがある。

 その正体を脳裏に探るも、目線に気付いた若者が先にファルカに会釈した。

「討伐隊は初めてかい?」

 声を掛けるとはにかんで、荷物持ちなら幾度かは、と若者は応えた。

「オレはファルカだ、辺りの出だが暫くぶりでね、勝手はそうそう明るくない」

 アンタは、と問う。

「僕はもっと東の出だ、自分はラグナス」

 ラグナスか、とファルカは口の中で転がした。

「何処かで会った事はなかったか」

 きょとんとした顔のラグナスを眺めて、ファルカは気のせだろうと手を振った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ