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仮面ノ騎士  作者: marvin
子ノ旅人Ⅲ
46/121

第1話

 再臨歴一九七七年に至る過去、大陸中央

 エルサルドール公国ラコルデール宗主領


 アデル・ルミナフの依頼は厄介だ。

 なお且つ危険が伴っている。

 オベロンの優位点は二つ。

 ひとつはアデルの機密事項への閲覧権限が高く、調査のほぼ全件に及ぶ事。

 もうひとつは、調査対象の専門分野が幽霊に対してほぼ無防備である事だ。

 ただし、あくまでルミナフ家の内に限られる。

 その先には手が届かない。

 依頼された案件は、世俗の家庭の事情に近い。

 ライン・ルミナフの先妻の一子、ディオ・ルミナフについての来歴調査だった。

 アデルの実子であるマリエルとは、十歳離れた異母兄妹にあたる。

 大魔術師が隠遁状態の今、ルミナフ家の実権はディオが握っていた。

 それを探ろうというのだから、多少の色眼鏡はオベロンにもあった。

 ディオ・ルミナフは近々に開位(コーズ)を望むと噂される魔術師だ。

 生まれの年で数えるならば、オベロンとディオは同い歳になる。

 なるほど、人生はこうも違う。

 十六で身体さえなくした身としては、天と地ほどの開きがあった。

 ディオは早くからルミナフの助手を務めている。いわゆる秀才だ。

 ランズクレスト公国連合の最高学府ジルフォート魔導院にっその実績があった。

 専門は魔導工学マギノエンジニアリング

 父に倣って古代工学(ミスエンジニアリング)に手を染めた噂もある。

 ただし、こちらは魔術師界隈の陰口だ。

 妬みを買うほどだった、と受け取っておく。

 事実、人柄に瑕疵はない。

 直轄領で調べた限りは、家族仲も悪くない。

 マリエルに至っては、血の繋がりなど関係のない本当の兄妹だったようだ。

 ただし、それらは全て事故以前だ。

 十七歳までのディオ・ルミナフに限る。

 一九六七年、彼は生死に及ぶ事故に遭った。

 直轄領の工房が焼け落ち、領館一帯が封鎖されるほどの災厄だったらしい。

 その折、アデルとマリエル、ミリア・フィストレーズら親族は皆国外にいた。

 丁度、このエルサルドールで魔導院の別拠点を開拓中だったとの事だ。

 即ち、これが依頼の核たるディオ・ルミナフの失われた時間でもある。

 オベロンは残された記録を辿った。

 だが、事実確認にしか成り得ない。

 事故の初動、ディオ・ルミナフは直轄領区の治療院に搬送されている。

 聖都に数度の転院を経たのは鬼獣討伐で実績のある国軍医療が秀でている為だ。

 その後、再び直轄領に移る。

 オベロンは聖都の治療院を巡った。

 医療記録を覗き見る。

 医員の所感に拠るところ、延命あるいは終末期医療の最終転院の意識だ。

 ディオ・ルミナフに回復の見込みはなかった。

 だが、復活を遂げる。

 その間、二年。

 家族にも直接の対面はない。

 アデルの記憶に依れば、保護膜の向こうに動かぬ影を見たに留まっている。

 直轄領の治療院には機能回復の記録がある。

 完治の契機は幸運という、およそ掴み処のない文言があるだけだった。

 聖都と同様に医員の所感の端書きを探るも成果は捗々しくない様子だ。

 『ある朝の奇跡』以降、外来の専門医に委任されていたからだ。

 それらの医療記録は治療院に残っていない。

 八方塞がりだ。

 報酬の半分を諦めオベロンは一旦手を止めた。

 次の捜査を試みる。

 そちらも表に記録はない。全てルミナフの禁忌に触れているからだ。

 嫌な予感は山ほどあったが、オベロンはルミナフの影の中に踏み込んだ。

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