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仮面ノ騎士  作者: marvin
魔宴ノ剣士Ⅰ
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第1話

 再臨歴一九七一年、大陸東部

 ノウムカトル公国ステヴナン領、領館別棟


 その日、領館に呼ばれた娘は十二人だ。

 近く祝祭の日に催される祭事の神子として、十代頭の少女が集められた。

 近隣四つの里から呼ばれた少女らは、段取りと衣装合わせで泊まり込む。

 ザビーネもそのひとりだ。

 リアーヌ、シュゼット、アデリーヌは、同じ里の娘だった。

 アデリーヌはザビーネのひとつ下の十二歳。

 内気で人見知りだが、仲が良かった。

 性格は正反対。なのにいつもザビーネの背に半身を隠して寄り添っている。

 ザビーネは社交的だ。他の娘の輪にも気兼ねなく入り込める。

 するとアデリーヌはいっそう背に身を隠しいつもも嫉妬めいた不安を覗かせた。

 ザビーネはそっと後ろ手に指を絡めいつものように独りにしないと合図を送る。

 そうこうする内、二人の大人が現れた。

 領主のギルーク・メッサーラ伯爵は、この祭事の主催だった。

 祭事の委細を企画したのは、一昨年に赴任したばかりの司祭らしい。

 少女は一様に顔を伏せこっそり先を窺った。

 司祭はあまり人前に出ない。

 事故で顔に傷を負ったとの事で、顔に精巧な鉄の面を着けているからだ。

 二人の大人の挨拶は思いの外に短く、皆を見渡す目線ばかりが印象に残った。

 アデリーヌの指がいっそう強く繋がりを求める。ザビーネは頬で頷いて見せた。


 後に起きた事故の際、大人は不在だった。

 警備の衛士も他所にいた。

 祭事に備えて近隣の鬼獣を一掃する策は、遠く異なる場所で行われていた。

 これは事後の推測だ。

 追われた喰人鬼(オーグル)の群れが柵を越えたらしい。

 其処が敷地の内とは云え、建屋は森の縁にあり警護の小屋も離れていた。

 十一人の少女が惨殺された。

 悉くが見分けも困難な有り様だった。

 辛うじて、まだ息のあった最後の娘は鬼獣に乱暴された上、半分喰われた。

 しかも手当の内に妊娠が発覚した。

 色鬼(サテュロス)の被害にその例がある。

 羊足の鬼種は他の鬼獣の胎で増えるからだ。

 娘を生かす手立てより、恐怖と信仰が人々を煽った。家族さえもそう願った。

 孕んだ仔は焼かれた。

 司祭が焼けた鉄串を以て処置をした。

 いずれ人に産み付けた鬼種の仔は、じきに母胎を鬼獣毒で中毒死させただろう。

 瀕死の娘は修道院に移された。

 万一に生き延びたところで末はなかった。

 娘を穢され、親は逃げるように里を出た。

 敬虔であったが故に羞恥と冒涜に耐えられなかったのだろう。

 後に、ギルーク・メッサーラ伯爵は自らの責と任じて領主を辞した。

 鉄面の司祭もまた、何処かに異動した。

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