表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仮面ノ騎士  作者: marvin
幻界ノ魔神
118/123

第17話

 二人は暫し佇んで、やがてエチカがラグナスの背を小突いた。

「さてオッサンであったか、あの竜は」

 先の石碑に目を遣る。

「あの後やたらと騒々しくなったが、ぬしらに関わりのある事か」

 訊ねるエチカに目を遣り、ラグナスは思案する。

 渓谷の底に鬼獣の踏み固めた跡を見た。

 だが、それはオベロンを封じたせいだ。エチカ自身が確かに言った。

「揺れはそうだが、鬼獣を寄越したのは別であろ」

 先を歩きつつ振り返り、エチカが口を尖らせる。

「揺れとは何だ」

「死霊共が騒がしくなったであろ」

 確かに感じてはいた。遭遇も多くなっている。

 揺れは星辰界(アストラル)に起因する霊障の多発を指すのだろう。

「確かに僕らはオベロンを捜しに来たが、関係があるとは思いもしなかった」

 そもその類に強いられた苦戦に、対する手立ての策こそオベロンの助力だ。

 ラグナスに問うのは本末転倒だ。

「だが鬼獣を寄越すとは」

 そんな芸当ができる筈もない。

「何者か此処に目を付けた、という事だな」

 そう何者か。名こそないが知っている。

 放置された遺構だが、此処を霊障の震源と知って手を伸ばしたに違いない。

冥界(ゲヘナ)があると知られたのか」

「それはなかろ、これはわしが勝手に集めたものだ」

 エチカはしれっと自慢気に応える。

「だが星辰界(アストラル)の仕掛けがあったな、今はもう動いておらんが」

 それではないか、とラグナスが頷く。

「押し寄せたのは鬼獣だぞ、魂なきものは星辰界(アストラル)に縁遠かろ」

 むしろ、だからこそではないか。

 攻め入る者が惑わされては元も子もない。

「やれ自業自得と云う訳か」

 ラグナスが言うと、エチカは渋い物でも口に詰めたような顔をした。

「まあよい、オッサンを出してやる」

 ラグナスを見上げる。

「代わりに此処から鬼獣を追い出すのを手伝え」

 勝手な言い種だ。

 とはいえ冥界(ゲヘナ)がある以上、此処を見つけられる訳には行かない。

 ラグナスは頷いた。

「よかろう」

 エチカは石碑の前に立ち、また無造作に手を突き込んだ。

「出してはやるが、暴れるかも知れんぞ」

 ラグナスが止める間もなかった。

 エチカが腕を引き抜くなり、ラグナスの身体は宙に撥ねた。

 懸念は山の様にあった。

 オベロンを封じた際に星辰界(アストラル)揺れがあったと聞いたばかりだ。

 だが、そんな問いも身体ごと飛ばされた。

 突風等と生易しくない。攻城の投石を間近に受けたかの如くだ。

 勿論眼には何も見えない。

 広間の端まで直線で飛び、ラグナスは壁に打ち据えられた。

 床に落ちて転がりながら元居た先を確かめる。

 風が切り裂く音を鳴らすも見目にエチカは悠然としている。

 駆け戻ったラグナスは手前で瀑布に等しい壁に打ち下ろされた。

 エチカがふん、と鼻を鳴らした。

「オベロン、聴いてくれオベロン」

 見渡し、ラグナスは虚空に声を上げる。

 エチカの身体が吊り上げられ、宙に浮く。

 咄嗟にラグナスは手を伸ばし、腕を掴んで引き戻した。

 広間を埋める仄かな影が垣間見える。

「オベロン」

 何かの気配がラグナスを覗き込む。

「ファルカと貴方を捜しに来た」

 静止した。

 動きがないのは思案の間か。

 不意にエチカの身体が落ちた。

 ラグナスが受け止めるまでもなく、エチカは平然と床に降りた。

「わしに問うても知らん」

 ふん、と宙にそう言い放った。

 どうやらオベロンと話しをしているらしい。

「ファルカは谷の下にいる、上を目指している筈だ」

 口を挟むつもりでラグナスが言った。

「いや、それは無理であろ、下には鬼獣が山とおる」

 エチカがラグナスを振り向いた。これは彼女の感想だろうか。

「押し寄せた後、奴らそのまま巣食って」

 言葉の途中でまた宙を見上げる。

「うるさい、そんなものは知らん」

 またオベロンとも話している。

 エチカは苛々と繰り返し見て、不意にラグナスの腕を掴んだ。

『だから、知り合いなんだって』

 エチカを通じて声がした。

『お嬢ちゃんたちが死にそうなんだ』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ