表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仮面ノ騎士  作者: marvin
幻界ノ魔神
104/123

第3話

 再臨歴一九八二年、大陸北部

 リチル=アスガード公国スーラージュ領、ヌヴィル大山、コルベル村


 見渡せば白く連なる尖った稜線。

 地面を舐める灰色の雲。

 年季の入った轍の上を二人連れの馬騎りが行く。

 一頭は痩せた早駆けの馬、もう一頭は肥えた白黒の斑毛だ。

 騎手は共に見目二十代の半ば、人懐こそうな若者と端正な美丈夫だった。

 エピーヌ連峰でも数える高峰、ヌヴィル大山はリチル=アスガード公国にある。

 領府の統治下にあるとは云え、自治村落が点在するだけの険しい山岳だ。

 教会さえも碌になく、土着の慣習も放置されている。

 二人連れの訪れたコルベル村も、そのひとつだった。

 先にも幾つか集落はあるが、馬はこの先道がない。

 彼らは里で顔役を訪ね、暫しの滞在を願い出た。商用便の下調べが理由だ。

 二人連は名をファルカ、そしてラグナスと名乗った。


 コルベルは近頃往来が多い。むしろ行商も増えている。

 そうした理由も相まって、余所者もそう珍しくない様子だった。

 あんたらは愛想の良い方だ。

 むしろ若いのにしっかりしている。

 ファルカとラグナスはそう評された。

「それじゃ早速、行くとするかな」

 空いた小屋を宿に借りると、ファルカはラグナスを促した。

 麓で揃えた食材袋をラグナスに担がせ、共同調理場に向かって歩いて行く。

 集う女衆を見て取るや、やあ姐さん方、とファルカは気軽に声を掛けた。

「麓の根菜があるんだが、ここいらじゃどうするのが旨いかな」

 するりと入って話の輪に加わる。

 茫然とするラグナスを呼んで、ファルカは荷袋を寄越せと手を振った。

 食材の交換、料理の手伝い。ラグナスは方々に呼ばれて回る。

 気付けば料理の手習い役まで熟していた。

「麓で聞いたんだがね、大きな帽子の変な男が山から降りて来ないらしい」

 ファルカはさり気に話材を混ぜ込み、ラグナスに片目を閉じて寄越した。

 ラグナスはそっと息を吐く。

 何故か自分の周りの者は社交性がやたらに高い。

 それとも自分が拙いだけだろうか。

 日暮れて小屋に戻る頃、ファルカは辺りの事情通になっていた。

 一方のラグナスといえば、貰った食材が袋に収まらず両手に抱えている。

 持ってお行きと次々に渡され、どうしたものかと途方に暮れた。

「適材適所ってやつだ」

 目論見通りと言わんばかりにファルカはラグナスに目を細くした。


 そも二人が遥かヌヴィル大山に至るには、かなりの紆余曲折があった。

「拳の通じない相手はキツイ」

 古戦場跡の後、二人は互いの不利を知った。

 ファルカの言葉がこの旅の端的な目的だ。

 死霊の類は物理に滅せず、時にラグナスを惑わせる。

 在する隠世を星辰界(アストラル)

 常世の双界を跨ぐそれらを星辰態(アストラルノード)と云う。

 その接点と思しき物はラグナスもよく知っていた。冥界ノ門(デュミナス)だ。

「そういや、あのオッサンも追っていたな」

 ファルカの思い至ったオッサンこそがオベロンだ。

 ファルカは長らくオベロンと共にいて、その為人を知っている。

 引き込むならば遠慮の要らない相手だ。

 何より星辰態(アストラルノード)に関しては当人に頼るのが手っ取り早い。

 ファルカの覚えている限りエルサルドールに向かったのが最後だ。

 幾年も前の事ではあるが。

 オベロンは魔術師ミリア・フィストレーズを追っていた。

 その後の経緯を知らないままに、二人はエルサルドールに彼女を訪ねた。

 ファルカ持ち前の勢いだ。

 待っていたのは思わぬ偶然と因縁だった。

 二人は新たな目的を得た。行方知れずのオベロン捜索だ。

 それを目的に至ったのが大陸北部のヌヴィル大山だった。

 エルサルドール公国からはエピーヌ連峰を跨いだ反対側に位置していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ