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仮面ノ騎士  作者: marvin
断章Ⅴ
101/123

萌芽

 再臨歴一九八一年、大陸東部

 シュタインバルト公国フォルゴーン宗主領


 その日届いた大きな木箱は優に大人の一抱えほどあった。

 屋敷の戸口にしゃがみ込み、マリエル・ルミナフは荷を確かめる。

 差出人の名こそ違うが、ミリア・フィストレーズの乱数に沿った彼女宛てだ。

 木箱の前で思案する。

 ダリルに手伝って貰おうにも、今日は子供たちと遠征だ。

 ロッサの掘削を見学に行っている。

 オーベル爺の工房で復元された巨大な自律魔導機(ギュゲス)だ。

 彼はダリルの話し相手でもある。

 罪深きもの(ブラスフェミア)とは出自こそ違うが、大枠で同類でもあった。

 思索の複雑さは桁も違うのに、ダリルはなぜかロッサに多くを学ぶ。

 内心複雑ではあるが、マリエルは純粋に嬉しくもある。

 シュタインバルトに至る旅路と、此処の暮らしでダリルは変わった。

 それを言うなら自身もだ。

 マリエルは自室から工具を持ち出し、木箱の封蝋を削って木蓋を抉った。

 緩衝材に覗く派手な朱色に戸惑う。

 同封の手紙を取り上げて、乱数表で読み解いた。

 どうやらミリアの許にオベロンの知人が訊ねて来たらしい。

 届いたこの荷は、その知人の知人がダリルに宛たものだと云う。

「ダリルに?」

 思わず呆れて呟いた。

 オベロンの知人は聖都で彼の手伝いをしていた人。

 知人の知人は、その友人らしい。

 マリエルとも面識があると云う。

 誰だろう。

 当のオベロンは不在だ。もう二年にもなる。

 大陸北の遺跡の里に奇妙な少女の逸話があると、ひとりで調査の旅に出た。

 いつ戻るかも不明のままで、未だ便りのひとつも寄越さない。

 緩衝材を掻き分けて、マリエルは木箱から荷を抱え上げた。

 六弦琴だ。派手に朱くて目に痛い。

 何気に首に掛けてみた。

 何故こんなものをダリルに送ろと思ったのだろう。

 音楽ほどダリル・カデットに程遠いものはない。

「マリエルさま?」

 声を掛けられ振り返る。

 ラピスの使用人のデボラだ。

 同じくクロエが横に立ち、マリエルと首に掛けた六弦琴を見比べる。

「お似合いですね」

 にやりと笑った。

 マリエルが耳まで赤くなる。

「いや、これは」

「丁度よかった」

 口の中の言い訳を遮り、二人の背からピアズが顔を覗かせる。

 つい先日に完治した目は、まるで底まで見通せる碧い湖のようだ。

 盲目を怠惰の言い訳に使えず、今ではタチアナに車椅子を禁じられている。

 黒布を取って彼女も変わった。

 厳しい皮肉屋に変わりはないが、歳相応に子供っぽくなった。

 自称は何故か十八だが、見目が幼い。それが余計にそう映る。

「貴方も一緒にタチアナの所へ、皆に話したい事がある」

 マリエルの手を取って歩いて行く。

 横目に朱い六弦琴を見て、碧い眼を悪戯に細くした。

「ええ、似合ってる」

「いや、これはダリルの荷物で」

 言い訳しながらは、たと気付いた。

 シュタインバルトの旅の初めに出会ったあの二人連れだ。

 相手も秘めた訳ありで、敢えて皆には話していなかった。

 今なら構わないだろう。

「そうだ、私も話があるの」

 船でバダンテールに着いた時の事なんだけれど、マリエルはそう話し始めた。

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