7/15
(闇に沈む扉)
階の虚無から逃れたと思った瞬間、背後で重い扉がゆっくりと閉まる音が響いた。
振り返る余裕はなかった。
俺の足元には再び冷たい水が満ちてきていた。
まるでこの場所が、俺を離さないと決めたかのように。
闇は厚く深く、呼吸が重くなる。
水面に映るかすかな光が揺れ、俺の影を揺らす。
気配が近づく。足音も声もないただの気配。
だが確かにそこに、誰かがいる。
前に進むと、そこにはもう一つの扉があった。
手を伸ばすと、扉の表面はひんやりと濡れていて、まるで生きているかのように微かに脈動していた。
指先が触れた瞬間、冷たい液体がじわりと滴り落ち、体温を奪っていく。
扉を押し開けると、暗闇の向こうから水の流れる音が響いた。
その音は心臓の鼓動のように、一定のリズムで迫ってくる。
俺は息を呑みながら、一歩一歩、深淵へと踏み出していった。