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(消えた階)
水の引いた部屋から逃げ出した俺は、また違う廊下に立っていた。
しかしその廊下の壁には奇妙なことに、いくつものエレベーターのボタンパネルが埋め込まれていた。
どれも使えそうに見えるが、押しても何の反応もない。
その中にひとつだけ、薄くぼんやりと光るボタンがあった。
それは「消」という漢字が書かれているように見えた。
好奇心と恐怖が入り混じる中、俺はそのボタンを押した。
すると目の前の空間がぐにゃりと歪み、気づけばそこには見覚えのない階があった。
だがその階はまるで現実から切り離されていた。
時間も空間も存在しない、何もかもが消えたような虚無の空間だった。
そして気づいた。
俺はこの場所に呼ばれていたのだと。
その先にある答えを求めて。