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(沈潜の記憶)
閉ざされた空間に水音だけが響いていた
息を殺しながら壁際を伝う冷たい液体に触れ
朽ち果てた記憶がゆっくりと浮かび上がる
水に浸かった床には古い紙片が散らばり
それは誰かの忘れられた日記の断片だった
断片は水に滲み文字はかすれているが
そこに書かれた言葉が心に刺さった
記憶は沈み込みながらも確かにここにある
過去の痛みと後悔が水と混ざり合い
俺に何かを伝えようとしていた
意識が揺らぎ水面に映る自分の顔を見つめ
俺は深く息を吸い込み未来へと踏み出した