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第十話 空に溶けた光

 ふたりは、丘に腰を下ろして空を見上げていた。

 沈みゆく太陽と、昇りゆく星たちが、空を半分ずつ染めている。


 その景色は、かつて誰も見たことのない“はじまりの空”。


 「ねえ、ソル」


 「うん?」


 「わたしたちがこうして並んでいること、

  ほんとは今でも“掟破り”なんだよね」


 ソルは笑った。


 「うん。でももう、誰もそれを“罰”だなんて言わない。

  言わせない。僕が、そう決めたから」


 ヨゾラはそっと目を閉じる。


 「……星たちも、そう言ってた。

  “もう、選ばせることはしない”って」


 あの夜、ふたりが願い合った“想い”は、

 世界そのものを変えるには小さすぎたかもしれない。


 けれどそれは確かに――誰かの心に、何かを灯した。


 それから月日が流れた。


 昼と夜の民は、少しずつ互いを知るようになり、

 “薄明の刻”は年に一度の祝祭となった。


 その名は、『星結びのほしむすびのよい』。


 ひとときだけ交わる光と闇が、誰かと誰かを繋ぐ日。


 けれどその起源を、誰もはっきりとは知らない。


 ソルとヨゾラの名も――

 いつしか、歴史から静かに消えていった。


 ただ、風の強い夜。

 星がひときわ輝く黄昏に。


 ふたりの影が、丘の上で肩を寄せ合っているのを見たと、

 語る者がいる。


 それが幻か、奇跡か。


 誰にもわからない。


 けれど、確かに今も、

 あの空のどこかで――


 太陽と夜空の恋は、生き続けている。



『太陽の少年と夜の巫女が恋に落ちたとき ―空に願った、たったひとつの想い。』―完―

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