シン・浦島太郎
砂浜に一匹のカニがおりました。
カ二は、ときおり砂浜で日向ぼっこをしているウミガメの事が好きで、いつも岩陰から眺めていました。
ある日、いつものように岩陰からウミガメを見ていると、二人の人間がやってきました。
「え、待ってカメじゃん。デカすぎマジウケる」
金髪のギャルはスマホで写真を撮り始めました。
「俺マジ強えから、カメの甲羅とかもうバッキバキよ」
小太りの男は、木の枝でカメを叩き始めました。
「きゃー武蔵君かっこいー」
ウミガメは甲羅に籠ったまま身動きが取れませんでした。
「あいつ! 俺のウミガメちゃんをいじめやがって」
怒り狂うカニ、しかし仲間のカニが人間に捕まる光景を何度も目にしている為、怖くて足がすくんでしまいました。
「ちょっとよろしいですか?」
遠くの方から新たな人間が現れました。
「私はウミガメ愛護委員会の浦島と申します。貴方たち、今ウミガメをいじめていましたよね?」
そういうと懐から拳銃を取り出して、二人につきつけました。
「え? マジ?」
あっけにとられる二人の頭に、男は弾丸を一発ずつ打ち込みました。
「助けて頂いてありがとうございます」
「気にしないでください、これが仕事ですから」
男とウミガメが親しげに話しています。
カニは名門鳴門海峡大学でウミガメ語と韓国語は習いましたが、日本語は受講していなかったので男が何を言っているのか分かりませんでした。
「よろしければ私の住む宮殿に来ませんか? すごくいいシーシャが手に入ったんですよ」
「ほう、シーシャですか、いいですね」
男はおもむろに服を脱ぎ始めました。
「ちょっとまったー!」
人間が服を脱ぐ意味を名門鳴門海峡大学で習っていたカニは思わず飛び出しました。
「おい人間! ウミガメちゃんは僕のモノだぞ!」
「え、誰ですか?」
見知らぬカニの登場にウミガメは驚きを隠せません。
「……そういうことですか」
海パン姿の男は笑みを浮かべて去っていきました。
「若いっていいわね」
岩陰でシーシャを吸いながら二匹を覗く乙姫
カニとウミガメの恋物語はこれから始まるのです。