この気持ちの悪い全集に引導を与えよ!①
俺らがこの私立真間高等学校に入って2度目の5月
が訪れた。
5月は4月の気持ちのいい気温から少し気温は上がり、ちょっと汗ばむような日も増えてきたが、基本的には穏やかな天候で過ごしやすい日々だ。
そんな5月のある日、真間高の生徒会室は外の穏やかな天気とは裏腹に、何やら不穏な空気が漂っていた…
「おい、あれは順調か?」
「もちろんですよ会長、もうそろそろで実現しますよ、僕らの願いが…!」
「ふははははは!!!!!もうそろそろか!!」
生徒会長である俺と書記の青山相馬は、まるで悪の組織のボスと手下のような会話をした。
まぁ悪の組織と言われても仕方のないことをしているのは自覚している。
当選 治井 哲也
自分が生徒会長に当選した時、俺はやる気に満ち溢れていた、それはもう、学校を俺が変えてやる!みたいな気持ちがあったんだ、だけどいざ生徒会長になってみると、やるのは先生から言われた仕事をやるだけ。
予算案を考えろだの、新入生歓迎会の企画を考えろだの。
自分たちからなにかやるというのは少なく、全くもって面白くなかった。
そのためやる気はスーーッと消え失せた。
それもそのはず、学校を変えてやる!とか意気込んでた奴が、実際は学校全体を変えるどころかトイレの大便器一つも変えられないとなれば、やる気なんて消えるに決まってる。
そもそも面白さ目的で生徒会長とかやるべきではなかったんだ…くっそぉ……
真間高のルールとして、生徒会は1年間勤務である、そのため俺はあと1年ほどの勤務が義務付けられている…なんという罰だ…
それに加え仕事は周りのやつが大抵やってくれた、まぁ俺みたいなやつが異端なだけで本来は優秀でやる気がある奴らが来るのが生徒会だからな、仕事も早いのは不思議ではない。だがそれはいい迷惑になりつつあった…確かに初めはよかった。
なんにもやらなくていいのだから、しかし2週間ほどが経って思った
【暇というのはなによりも苦痛だ】
生徒会長は放課後何か用事がない限り、生徒会室に午後17時ほどまでは滞在しなければならないという掟がある。なんで滞在しなければいけないのか?んなこと知らん、先生にも聞いてみたがとりあえずルールだから滞在しろと言われた。
全くこれだから凝り固まった奴らは……
多分俺がいなくてもなんとかなると思いながら生徒会室にいる日々にはかなり飽き飽きしていた。
スマホ見ようとも思ったが、みんながやってる中でいじるのもなぁとか思っちゃうし……
なんで生徒会長が別にいらない的な扱いなんだよおかしいだろ、
俺は一応生徒のトップ的存在なのに、どうしてだよ。なんでなんだよ。
別にいる必要もないのに生徒会室にいる毎日。
しかし、そんな日々を過ごす中で
俺は、何か生徒会に楽しいことを作れば、退屈な日々を打開できるのではと考えた。
俺は "楽しみ" を作ろうと思った。
暇を潰せて、生徒会室に行きたくなるような何か…
善は急げとも言う、
俺は友人であり書記でもある青山を誘うことにした、何か面白そうなこと知ってそうだしな。
『最近俺暇だからさ、暇潰しできることないか?』
『あー確かに会長なんにもやってませんよね』
そんなズバズバ言う?酷くない?
『わかったから何かねぇか?暇潰せるもの』
『あーーーそれならこれ手伝ってくださいよ』
青山は仕事で使っていた自身のノートパソコンを開いて、一つのファイルを見せてきた。
画像がたくさんあるのはわかるが、一つ一つが小さくて何の写真なのかはわからない。
『なんだよこれ』
俺が疑問を抱いていると、青山は
『真間高の女子の写真集で…』
俺は青山が全てを言う前に一つの写真を開いた、すると、おそらく陸上部の女子がハードルを飛び越えてる瞬間の写真が出てきた。セパレート型のユニフォームを着ていて、高校生男子からしたらかなりセンティシブな写真だ。
それにこのへそもかなり綺麗だな…
てか写真を分析してる場合じゃねぇぞこれ!
『おい!お前これ盗撮じゃねぇか!』
俺は青山の首を掴み、グラグラと揺らす
『あああぁ!!痛い!痛い!説明をさせてくださいよ!』
『お前には失望したぞ!青山!元からヤバイ奴とは思ってたけど盗撮してるなんて…!』
青山は俺の手を自分の首から振りほどき、悲しげな雰囲気を持たせて、説明を開始する
『僕も…こんなことはしたくなかったんですよ…でも…僕の家にお金がないから…これを売ってぇ…、どうしてもお金が必要で…だから僕もォンフンフンッハ、ボクハァ…、ウワァァァァァ!ウワァァァ! ハッハッハッ ヒックヒック!』
『あーー!!!泣くな泣くなわかったから!』
こいつは泣くとどこぞの議員みたいになるからやめてほしい
『わかった、その理由ならみんな許してくれる!安心しろ!』
『っうぁ…ほ、本当ですか?』
『あぁ!勿論!仲間を信じたらいける!』
『あ…っうぁ…そ、それなら、っあ…よかった…』
『あぁよかったな』
多分許してはくれないとは思う
『そ、それじゃあ…明日会長の家のカメラ持ってきてください…あ、明日色々話します…』
こいつ俺が協力する前提なのかよ
『いや俺協力すんの?』
『ひ、暇じゃないんですか?』
『いや暇だけどこれは…』
『この計画が成功したら、俺と会長は膨大な資金を獲得できますよ…それに自分たちもこの写真たちを堪能できますよ…会長』
『で、でもバレたらやばいぞ』
『バレなければいいんですよ、バレなければ、バレなければね…それ以外はすべて最高な条件だと思いますよぉ…会長』
こいつゥゥーーー!!さっきまで泣いてたやつとは思えないほどドス黒い奴になってるんだけどォォー!!
…
…
いや待てよ?
よくよく考えればデメリットは少ない。
写真も堪能できれば、資金も入手できる。
あれ…?
これ最高じゃないか?
『よし乗った、やろう』
俺は即答した
そして、俺たちは女子の写真を厳選し、写真集にし、できた写真集を売り捌くという邪悪すぎる計画を取ることにした、まぁ後輩のためだもんねしょうがないね、具体的なところは青山が考えるから、俺は写真を撮るだけでいいと言われた、
まぁ俺が考えても失敗しそうだしな。
『この計画があればお金も稼げますし、自分たちで楽しむことできますよぉ…グヒヒヒヒヒヒヒ』
計画の内容が決定した時の青山の笑い声は普通に怖かった、
多分この世にやってきた悪魔かなんかだと思う。
青山は見た目は好青年だが、中身は多分軽犯罪くらいなら簡単にやらかすレベルのやつだと思う、
こいつが将来ニュースで出てきても俺は
「あいつはやると思ってたよ」とか答えるだろう。
まぁ俺も人のこと言えないんだけどな……
なんやかんやで計画が開始した。俺は中学時に父親から貰ったカメラを校内に持ち込み、「学校を紹介するためのパンフレットを作るための写真が必要」という理由をつけて撮影を行い始めた。
この理由は青山が作ったもので、メンバーや生徒総会、教職員にもバレないための理由として完璧なものだ、なんであいつは優秀なやつなのにこうなってしまったのか…
まぁ俺も父から貰ったカメラをほぼ犯罪(ていうか多分犯罪)に使われるとか思ってなかっただろうな…
ごめんよお父さん、貰ったカメラをこんな理由で使ってしまって。
だが、一度やってしまったものはしょうがない、後戻りはできない。
俺はどこまでも歩み続けてやる。
金と女子の写真のために……
そんなこんなで俺と青山は女子の撮影をしまくった、
来る日も来る日も撮った…
雨の日も風の日も撮った…
時には好みの違いで喧嘩したりした…懐かしいな…
写真を指差しながら青山
『どう考えてもこの人の方が人気出ますよ!この
女子を大きい写真にしたら男子達は食いつくこと間違いなしですよ!!!!!』
『いいや!この女子は完全にお前の好みだろ!』
『僕の好みは全男子の好みと同等なんですよ!』
『うるせぇ特殊性癖野郎!』
『僕は性癖偏差値で言うと64くらいですよ!』
『十分特殊じゃボケ!』
『特殊で何が悪いんだぁぁぁぁ!!』
その後も俺等は喧嘩しながらも、成長を続けた…
『俺さ、この仕事のおかげで、自分というものを見つけられた気がする』
『自分、ですか?』
『あぁ…みんなが喜んでくれることをやるのが、きっと俺らの使命なんだよ、みんなが喜ぶと、自分もうれしい、それが…自分なんだなって』
『よくわかんないけど、これが自分だって言うなら、多分将来犯罪者になりますよ会長』
全ては順調だった、はずだったんだ、
なのになぜこうなった、
俺と青山の
【真間高女子全集作成計画】
が完璧に狂い出したのは、きっとあれからだ──
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