2-10 北林さんという女性、元カレ二人経験三人
そして結構時間が経った。もう俺も限界だった。
「はぁ、はぁ、も、もう勘弁してください。参りました、時舛降参です。舐めた口利かないんで、ほんと、これ以上は、時間もアレですし、時間もアレですし」
疲れ果てている俺に、さらっと北林さんが答えてくれる。
「え? まだ来て十五分よ?」
うっそーん。体感時間が捻じ曲がっているー。
「うん、でもさすがに遊びすぎたし、そろそろ始めよっか。あ、さっきの全部忘れてね? 私のパンツ見たでしょ?」
北林さんはぴょんと跳ねてテーブルから降りた。
「忘れないとコロスー。草野君と小滝君も全部忘れることー」
丹波さんは何食わぬ顔で言って離れていった。
「草野君。チェックありがとうございます。これで体育会系のクラブは完成ですね」
で泉さんは草野先輩のもと。
「ひょいひょい。他になんかあるかー? なければもうパソコンに行きたいのだがー」
「すみません、最後に今日の日誌に一筆書いてもらえますか? 新風紀委員が来て、自己紹介を兼ねたレクリエーションを十五分間楽しんだと。誠実な草野君だからこそ、貴方のサインで一筆欲しいんです」
「ひょーい、任せろー」
平然と改ざんが行われている! 草野先輩の返事は絶対に誠実な人間のソレではない!
「あ。時舛、本当に忘れてね? 女子帝国故、たまに発散したい時あるから」
俺はぶんぶんと首を縦に振って北林女帝への忠誠を示した。見れば泉さんや丹波さんは自分の作業に戻っていて、俺のことなど眼中になかった。
……うう、これが女子帝国に特有の空気感。「さ、仕事しよ」の一言で今までの遊びがなかったことになる圧倒的切り替わり。
俺は気の弱いイケメン故、幼少の頃から数々の強い女子グループの圧政を経験したことがある。なので女子帝国でのルールというものを痛いほどよく知っている。後輩男子に胸の谷間とパンツを見せつけてくれたあの先輩女子三人の考えが、手に取るように解る。
間違っても、イケメン男子が来てラッキー貴方だから見せてもいいのよ、とは思っていない。さっきのあれは女子帝国への入国資格を問う一次試験みたいなもので、多分この国を訪れる男子には全員やってる。
女子達は見ているのだ。俺達が女子の国の一番下っ端にされて遊ばれた時の反応を。俺達が女子のルールに従うかどうかを。
もちろん遊びの内容は相手のレベルに合わせて、喋れない男子なら喋れないなりに、オタク男子ならオタクなりの遊び方で、ソイツを下っ端扱いし、美味しい思いをさせてやる。下っ端扱いを嫌がって尖り過ぎた反応をしたり、美味しさを勘違いして下ネタ返しなんかしたら不合格。テメーらにそういうのは求めてません、入国拒否、明日から来なくていいです。
女子グループが自分から下ネタをしてくる時って、男子は素直に照れ堕ちて従順な姿勢を示すのが正解。女子の下ネタって下ネタすること自体を愉しんでるだけだから、男子流のゲスさを競う下ネタは要らないんだ。
で、無事に一次試験を突破した男子諸君は二次試験に進む。次は遊びから仕事へと切り替わる能力を見る。イジって美味しい思いをさせた後、いつまでもそれを引きずっているような奴は、どうせ仕事が出来ないし周りにも迷惑をかける。そんな奴は女子の国には要らない。美味しい遊びのことは綺麗さっぱり忘れたフリをして、切り替われる男子だけがこの試験を通過できるのだ。
して、学校一のイケメンと噂のこの男はどうなのだろうか。切り替われる男なのだろうか。そんな目で、丹波さんや泉さんは俺を見てる。俺が横を向いている間にこっそりと、金属探知機みたいに入念に、女子にしか聞こえない探知機がピッピーと音を鳴らすのを待っている。ピッピー、ピッピー、二回以上鳴ったら本人のいない所で井戸端会議、大審議会。
女子が幅を利かせてるグループって、自然とこういうことをやってる。学校でも職場でも、大袈裟ではなく本当に、誰が言うまでもなくやる。だってウザい人をグループに入れると後々面倒なんだもの。そういうのが一人いるだけでイライラすることが増えるし、遊ぶのにも気を使う。グループから抜けてって直接言うわけにはいかないから、そもそもグループに入れる前に入念にチェックした方がいいってわけ。
入国審査は三次試験と四次試験と続く。度重なる女子ルールを目の当たりにしてもなお、心を閉ざさず愛想笑いを続けられる男だけに入国許可が与えられる。入国者には、置物男子、真面目男子、イジられ男子、雑用男子、可愛がられ男子、一発ギャグ男子などなどそれぞれの性格に見合った職業を与えられて、女子達に奉仕できるのだ。小滝君と草野先輩は、可愛がられ男子とイジられ雑用男子って感じ。
……はあ、長い道のりダナー。学校コミュニティーもここまで来ると、息するだけで疲れるわ。風紀委員会の女子は男子に対して胸見せパンツ見せOKだし。俺達はひたすらソレに合わせて愛想笑いしてないといけないし、それでいて女子が「さ仕事しよ」と言った瞬間に切り替わないといけないし。
嫌だー、女子帝国の下っ端になりたくないー。後藤ー、俺を迎えに来てくれー。俺はお前のバラエティーが大好きだー。胸見せつけられて照れ落ちるなんて全然面白くないだろー。後藤のニュアンス抜群のチンコネタの方が俺は好きだー。
と心では叫びつつも、俺はちゃっかりと北林さんの指示に二つ返事で従っていた。
ここに座れ。ハイ座ります。
今から説明するから聞け。ハイ聞きます。
メモ取れ。ハイ取ります。
「じゃ事務的なこと説明するからよく聞いてねー」
そんな感じで北林さんとのマンツーマンでの説明が始まった。
説明の内容は、委員会の活動日について、欠席連絡の仕方、備品のパソコンの使い方、コーヒーメーカーの使い方、掃除当番の回し方、戸締りの方法、などなど。
さっき俺の教室で委員決めをやっていた時にも思ったけど、北林さんはとても話すのが上手い。言い淀んで言葉に迷う瞬間がないし、語尾を曖昧に濁すこともない。そのまま文章化しても意味の通るほど整理された言葉使いで、しかも重要なポイントは自然と耳に残るように強調して話せる。
北林さん、この人相当出来る。
やっぱり一番好きで間違いないかも。俺、こういう喋るの上手い人大好き。俺は支給されたバインダーメモにペンを走らせながら、隙を伺っては北林さんの顔を盗み見ていた。
外国人の血が入ってるかなって思うほど堀が深い。眉カッコイイ。背高い。ポニーテール。見れば見るほど好みのタイプ。
「はい時舛君。自由参加の活動日、委員長の私がいなければ、誰が戸締りする?」
いきなり聞かれて目が合った。ドキッとしたけど、秒で取り繕う。メモもきちんと取ってるし、難しい質問ではない。
「えーっと、戸締りの責任者は、その時委員会室の鍵を持っている人です。鍵の受け渡しを行ったら、渡した人と受け取った人が、グループメッセージに報告。常に所有者を明確にしておくこと。また鍵は学校にいる間、肌身離さず持っておくこと」
「正解。じゃあパソコンの持ち出し申請の方法は?」
「パソコンの持ち出しは何があっても不可なので申請はありません。データの持ち出しに関しては、未だルール整備できておらず、とりあえず北林さんか泉さんに相談すること」
「コーヒーメーカーの掃除」
「一週間に一回。コーヒーを飲む人の間で持ち回り」
「可愛い一年が入ってきた。すぐに落とせる。手を出してもいい?」
もちろんこんな説明は受けていない。けれど答えは知っている。
「えーっと。結婚の意思あれば可。それ以外は絶対に不可」
「優秀」
うわーい、優秀って言われたー。なんか嬉しい。
「他なんか質問ある?」
俺は適当に二三個質問した。休憩時間の決まりとか、スマホは触ってもいいのかとか。北林さんはスラスラと答える。休憩時間は特には定められていない、ただ休憩し過ぎは禁止、スマホやり過ぎも禁止。チームでやる時はリーダーの指示に従うこと、あと仕事しろって言った時は集中してやること。
つまり、お喋りタイムは女子次第というわけである。うー、やっぱり女子統治が強い。しばらくは空気読みのイエスマンに徹して、自分からチョケるのは止めておこう。
「あと一個、変なコト聞いていいですか」
俺は頭の片隅にあるアノ件について聞くべく、そう前置いた。
すると北林さんは、ふっと、俺にしか聞こえないような息を吐く。前髪をするっとかき流して、小さく肩をすくめる。
「何? 一個だけなら答えてあげるわよ。貴方とはまだ、出会って一日目だもの」
……か、海外ドラマの言い回しかな? それは完全に彼氏がいるかどうか聞かれる女子のリアクションなんですけど。まあ北林さんが言えば様になるので、さほど変な感じはしない。
とはいえ、さすがの俺も今ここで北林さん主演のトレンディードラマのイケメン後輩君を演じる気はなく、普通に気になっていたことを聞く。
「北林さんって、演劇サークルとかに入ってるんですか?」
これで勘違いが解けて、北林さんは自意識過剰な自分を恥ずかしがるかなと思ったが。
「はぁ……やっぱりソレを聞くのね。いいわ答えてあげる。でも一回しか言わないし、メモを取るのも禁止」
「え、ええ?」
「彼氏は今はいない。元カレは二人、経験は三人。これで満足? それとも一晩だけのセックスが理解できない?」
いや北林師匠、聞いてないっす。師匠過ぎて会話がかみ合ってないっす。俺、愛想笑いしか出来ないっす。
「――って、ん? え? 演劇サークル? 何で? 私の元カレより大事な話?」
「は、はい。確かに北林さんの男女交際歴も気になりますけど、公の場所では聞かない主義なので」
「なんで? この前はナンパしてきたじゃん。昼休みに、なぞなぞクラブで」
「それはそれ、コレはコレでして」
「もう私のこと諦めるの?」
待ってくれ。マジでガンガン来るなこの人。これって聞いた方がいいってことか? 彼氏いるか聞けってこと? 丹波さんといい、風紀委員会の女子肉食過ぎんか。
じゃあとりあえず聞いてみるけど。
「ええーっと。では、北林さんは彼氏いますか?」
「今はいない。元彼は二人いる。経験は三人」
「は、はい」
これを聞いて、俺にどういうリアクションをせよというのだ。ていうか、この前は彼氏いるって言ってなかったか? 何が嘘で何が真実なんだ。
解らん、解らんぞ。俺には北林節が解らない。かなり変な空気なのでもう無理矢理話を戻す。
「じゃなくてですねっ。演劇の話です。北林さんは演劇の経験があるんですかって聞きたいんですっ」
北林さんはニヨニヨーとしながら俺を見ている。
……ひょっとして北林さんアレかな。
完全に俺のことを『私のことが好きな後輩君』として認識しているのか。もう恋愛が始まっていると思っているのか。
まあ、マジで北林さんを狙うとしたら、そういう関係でいることも悪くはないんだけど、いやそれにしても始まるの早くない? もうちょっと助走期間必要じゃない? 今時点での俺と北林さんの絡みって、昨日の昼休みにナンパしたことと、さっきイジられた時に北林さんが一番好みのタイプだって言ったくらいで。あ堤と修羅場った時も、二枚舌外交で北林さんに気がある風の振る舞いをしたか。
北林さん視点からすれば、助走期間は十分にあったのか……? それにしても気が早い気はするが、北林さんは相変わらずのニヨニヨ顔。
「な、なんですか」
「別に~。ふゅふゅ~、いいのかな~? 私、積極的な人が好きだけどな~」
あコレ、完全にそうだな。完全に『私のことが好きな後輩君』として認定されちゃってるな。
ちょいウザいけど、まいっか別に。ルックスが上の上なので許します。今は恥ずかしそうなフリの愛想笑いでやり過ごす。
すると北林さんのニヨニヨ顔はおさまり、後輩弄びたい欲も満足したみたいで、やっと本来の質問に答えてくれる。
「私、演劇サークルみたいなのには属してない。ああゆうのは昔から素で出来るし。強いて言うなら、私って風紀覇道流?」
――風紀覇道流。その言葉で思考が引き戻された。それって宮奈の言ってたのと同じ。気になるので掘り下げようとするが、後ろで帰り支度を整えた男子委員がボソッと呟く。
「北林、人を脅すのだけは天才的に上手いからな。あの才能がなかったら、ただの暴力メンヘラ女で――逃げるでひょひょい!」
相変わらず愉快な語尾を残して、草野先輩はダダッと駆ける。丸い見た目の割に動きは機敏だったが、魔王の瞬発力には敵わなかった。ドアの前で掴まってずるずる引きずられてる。
「小滝ー。セクハラ犯捕まえたー」
「お前がパワハラだろー」
「い、委員長。草野先輩は、悪気はなくって」
「小滝ー。メンヘラってどういう意味か教えてー」
「えええ、ええとええと、な、悩みが多い女性って意味で、ええとええと」
「検索して違ったら、二人ともセクハラでしょっぴく」
「「ひぃぃぃ」」
北林さんは男子委員コンビと仲良さげ。新人の俺には未だ風紀委員会のノリが読めない。唐突に来るあの北林節を俺はどう捉えればいいのだろう。早く男子達と仲良くなって、このコミュニティーで上手くやっていくコツを聞いてみたい。
じゃれる三人を見ていると、後ろから泉さんが話しかけてきた。
「あのくじびきショーは風紀委員会の伝統です。風紀覇道流という名称は近年になって名付けられたものですが、風紀委員会内において、演説技術の継承があることは確かですよ」
見れば泉さんは手に何かの冊子を掲げている。
「このレポートで初めて風紀覇道流という名称が使用されます。少量ですが、洲屋忍者流との比較考察もなされています」
机にぽんとそのレポートを置かれる。
A4用紙十枚ほどの厚さ。左上ホチキス閉じ。表紙のタイトルには明朝体で『風紀覇道流―風紀委員会に受け継がれる演説の技術その精神に関する考察―』と書かれていた。
ふむふむ、確かに風紀覇道流って書かれてる。けど内容は硬そう。中をパラパラするとやっぱり文字で埋まってる。あ、『洲屋忍者流との比較』って項目あった。読みたい。てかこれ書いた人なんで洲屋忍者流知ってんの? 洲屋忍者の技術は口伝継承門外不出だぜ? もっかい表紙に戻る。タイトルの下の著者名を見る。
『著者:一年二組 宮奈藍子』
って宮奈! ナゾナ・ゾロアスター! これお前が書いたんかい! これは読まねば!
俺はしゅばばっとレポートの中身に目を走らせる。すると手元からひゅるっとレポートが消えさる。
泉さんがレポートを手に取ってヒラヒラしている。ああん返してーって手を伸ばしていると、今度は後ろから絡んでくるミサンガ付きの細い腕。
「風紀委員として認められれば、トキマスにも読ませてあげるー」
ぐぬぬぬぬ、丹波さん。胸は簡単に見せる癖にー。
「ついでに北林の元カレの話も聞かせてあげる」
軽口言ってきやがるので硬派に対応する。
「ソッチはいいです。俺、女性の過去には拘らないタイプなので」
実に大嘘であった。多分今夜は俺の中で好きな人にワンナイト歴があったら有りか無しか論争が巻き起こる予定であった。
「本当は?」
丹波さんは聞き返してくる。
女子帝国での振る舞い方。こういう時どうするか。尖り続けるべきか、丸くなるべきか。男としての本能が尖りなさいと言っているが、俺は本能で生きるタイプではない。
「……ちょっと涙でそうなくらい動揺してます」
丸い方が万事うまいこと行くって知ってる。丹波さんは、俺の頭をポンポンと叩いて、自分の席に戻っていく。
くっそーっ! 女子帝国ーー! 男の頭を簡単にポンポンするんじゃねーーー!
結局、俺は宮奈の書いたレポートも北林さんの過去も知れずじまい。
どんな感情も悟られまいと固めた愛想笑いの裏に、さっきの言葉がリフレイン。
――元カレ二人経験三人。これで満足? それとも一晩だけのセックスが理解できない?
はぁ……。俺、結構北林さんのこと好きなんだけどな。
見た目も中身も雰囲気も。くじびきショーやってる時の魔王演技めちゃめちゃ上手かったし。福原とか堤とか調子乗ってる後輩に対して堂々としてて強いし。喋ってみればミステリアスなお姉様感もあるし。ちょっと自意識過剰な所も憎めないし。
でも、彼氏じゃない人と関係を持ったことがあるっていうのは、どうなのかなぁ。
俺は元カレ二人経験三人って女の子はあまり好きじゃない。肉体関係を持つのは恋愛の過程を踏んで、相手の子の将来に責任を持つ覚悟を決めてからじゃないとダメだと思う。一晩だけの関係っていうのは相手との将来を考えていないってことだし、そもそもセックスを軽くがるしく捉えすぎ。断言するね。ワンナイトするような男にいい男はいないと。
――と心の中でワンナイト反対を唱えてみたものの、俺が他人のことを言えたものではなかった。唱えた言葉の全てがブーメランとなって俺にぶっささった。
二年一組紋代時舛。イケメン。チャラ男。高身長。髪型コロコロ変える奴。他クラス他学年に元カノがいて、それをネタにしながらも学校生活を楽しんでる奴。基本誰に対しても優しく明るいパリピ君だが、心の中はゲスゲスであわよくば同級生と3Pとか考えていて、美人な先輩には即効で媚びを売り、とにかく八方美人しまくる奴。
うん、完全に人のこと言えないわ。
変な意味じゃないけど、俺も分類されるなら元カノ二人経験三人ってタイプだと思う。彼女じゃないのに彼女並に仲いい女友達いるし、気持ちが盛り上がってくると間違いも起こすし、間違った方向に進んでいる時は最高に楽しいし。
思い出してみよう。去年の冬、体育館のステージで堤にマッサージをしている時、俺は堤の将来に責任を持つだなんて考えただろうか。はい考えてないです。あのバチバチにエロい身体に触ることしか考えてないです。もっと言うなら池谷との関係なんて本当に酷いです。中学時代は暗黒過ぎて口にするのも憚られます。
北林さんにも俺と同じような男女の経験があったとしても、何らおかしなことはない。
ただ、いざ自分の好みのタイプの女の子のそういう話を聞くと、シュンとなっちゃうよね。これが悲しき中高生男子の心。
いわゆる思春期特有の悩みってやつ。
ま、どうせ深く考えても答えは出てきまい。人がどういう恋愛観を持つべきかなんて、その時々の気分で変わるだろう。悩むこと自体が思春期的で未熟なことなのだ。
考えるのやーめよ。あそうだ、久しぶりに池谷に電話してアイツの硬派な恋愛観を聞いてみようかな。ちょっとは救われた気持ちになるかも。
何にせよ、俺は陳腐な恋愛の歌の主人公にされて悩むほど思春期に興味はなかった。