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アイダシャフト  作者: 文士M
第1章『陽炎稲妻水の月 夢幻の蝶とは俺のこと』
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1-2 なぞなぞクラブの部室を探し中


 で、その翌日の木曜日。


 洲屋高校では全ての授業が終わって放課後。

 俺は例のマントをあのヘンテコ仮面に返すため、文化系クラブの部室が集まる旧校舎へと繰り出していた。


 ……がしかし、問題発生。俺は新校舎と旧校舎の間の渡り廊下で一人立ち止まる。


「そういえば、アイツが何のクラブやってるか、俺知らないんだよな」


 ナゾナ・ゾロアスターを名乗る仮面の女生徒。奴は一体何クラブの宣伝をしていたのだろう。仮面で正体を隠しているという設定は知ってるが、それ以上の情報がない。

 唯一の手掛かりは、この手に抱えた漆黒のマントだけだが、刺繍でクラブ名など書いていないだろうか。

 そう思ってマントを広げた。するとヒラリ、もう一つの重要な手掛かりがマントの中から滑り落ちる。


「あ。紙飛行機」


 この前拾ったやつだ。すっかり忘れていたが、このマントにくるんでいたらしい。俺は紙飛行機を拾い上げると、何気なくその折り目を開いて、飛行機を元の紙に戻してみた。

 するとそこには。


『なぞなぞクラブ! 世紀の良問! 未だ正解者ゼロ! 解ける者は今すぐ我の仲間に!』


 と、見出しに書いてあった。

 なるほど、こやつの所属はなぞなぞクラブであったか。それで名前がナゾナ・ゾロアスターなのね。「なぞなぞ」とかけているわけ。

 この勧誘チラシには世紀の良問のなぞなぞだけではなく、下の方に小さく部室の場所も書いてある。それによればー。


『部室の場所:旧校舎 出没時間:昼休み・放課後』


「な、なんだと」


 部室の場所がおおざっぱすぎる。しかも出没時間って、せめて活動時間と書かんか!

 ……いや、でもそういえばナゾナ・ゾロアスターは勧誘会の時に風紀委員会に追われていたし、このクラブ自体が非合法組織なのかも。だから、部室の場所をおおっぴらに書けないとか。

 俺も校則グレーの闇アルバイターとして風紀委員会には追われる身、文句を言える筋合いではないな。


 ま、いいや。ちょうど暇つぶしのなぞなぞもあるし、これ解きながら部室を探すとしよう。

 してその未だ正解者なき世紀の良問とはいかに。俺はチラシの中のなぞなぞに目を落とした。


問題:次の暗号の中の〇に当てはまる文字を推測し、その文字を並び替えて、ある言葉を完成させよ。

暗号:『金曜の後ろ→チェックボックスによくつけます→二回繰り返すと耳になる→寝起きとかに言う→〇→この一文字を付けると複数人を意味できるぞ→〇→日曜の前。』

ヒント:暗号の言葉を言い換えると、ある規則的な順番になるよ。


 えーなになに、〇に当てはまる文字を並び替えて、ある言葉を完成させよ? 暗号は言い換えると、規則的な順番になる?

 ふむ、ふむ、なるほど。じゃあ暗号の言葉を言い換えていけばいいわけか。それで法則性を見出せと。


 とりあえず順番に言葉の言い換えを考えてみる。


 『金曜の後ろ』は、土曜、かな?

 『チェックボックスによくつけます』ってなんだよ、レ点チェック的な?

 『二回繰り返すと耳になる』は、えーっと、ミを二回繰り返して耳ですー、みたいな? 

 『寝起きとかに言う』は、俺はファ~って言うかな。

 『この一文字を付けると複数人を意味出来るぞ』って、どゆこと。『達』とか『団』ってこと?

 で最後の『日曜の前。』は、これも土曜じゃね?


 うーん、解らん。法則性などさっぱり見えてこん。やっぱ正解者ゼロというだけあって難しいな。

 俺はしばらく考えたものの、なぞなぞ的思考に進展はなかった。

 俺はなぞなぞを考えるのは一旦やめて、部室探しを優先することにした。


 マントとなぞなぞ用紙を片手に旧校舎を練り歩く。旧校舎には文化系クラブの部室や委員会室などが集まっている。一つの教室の中に複数団体がブース分けして使用しているパターンなどあるので、見落としは出来ない。


 で、ジロジロと教室を見回しながら廊下を歩いていると、不意に女生徒の会話が耳に入ってきた。


「あ、丹波さん。どこ行くんですか? 執行部だるいんで来てくださいよ」


 げ。丹波さんいるのか。丹波さんって俺とは微妙な関係の知り合い。気付かれたくないので忍び足。壁一つ挟んで聞こえてくる丹波さんとその後輩と思しき人の会話。


「無理。アタシ今から補習請負の講習会」

「え講習会? スピード違反やったんすか? 煽り運転すか?」

「ちげえのよ、交通違反の講習会じゃないのよ。補習請負な。補習請け負うための講習会な」

「解ってますよ。でも丹波さんの補習受けたい人とかいないっしょ。丹波さんが先生役やりだしたら、それはもうAVじゃないですか」

「おま殺す。なんで私が先生役なったらAVやねん!」

「あははははっ! ぢょっと! ほらコレ! 女子が女子にヘッドロックし始めたらAVなんですって!」

「うるせえ! エロ教師丹波の需要は十分あるわ!」

「自分で認めてるじゃないですか! じゃあヘッドロックしたままでもいいんで、このまま一緒に執行部で仕事しましょうよ。私らと一緒に二重行政無駄ライフを送りましょうよ。ねーねー、一緒にやりましょうよー丹波さぁん。生徒会の奴らにこき使われるのヤなんですよー」

「でえい、巻き付いてくるな。私は風紀委員じゃあい! 執行部の仕事はそっちに任せるんじゃあい!」

「丹波さんは執行部局長じゃないですかぁ。風紀委員会に魂売ったんすかぁ」

「はいはいはいまあまあまあ。今年は会長南原だし、その辺なんとかなるから。不貞腐れずに仕事してろって。講習終わったらまた来るから」

「はーい」


 ふーん。仲良さげ。優しい丹波先輩と丹波先輩が大好きな後輩って感じ。俺と丹波さんは微妙な距離感なのであの輪には絡めない。


 ちなみに丹波さんが言う補習請負とは、生徒が先生に代わって補習をする制度のこと。我が洲屋高校では生徒会や委員会の活動がかなり盛んで、こういう学生自治的な制度がたくさんある。ただ制度が発展している分、組織間での対立が深く、二重行政の実態がしばしばあるとかないとか。


 俺の友人に上田や田口というのがいて、そいつらは生徒会だったりナンタラ研究会だったりするので、こういう学校裏事情的な話をよく俺に話してくれる。ただ、放課後で金を稼ぐ我らや校則違反アルバイターズには縁のない話なので、俺はあまり興味が湧かない。


「……ん? 我ら校則違反アルバイターズ? 我ラ、か」


 そこで気が付いた。

 さっきのなぞなぞ。


 『この一文字を付けると複数人を意味出来るぞ』の、この一文字は『ラ』だ。『我』に『ら』を付けると複数人を意味できる。


「ということは」


 ぴっかーん。俺は閃いた。

 解けた、正解者ゼロの良問を解いてしまった。まさか解けるとは思っていなかったので嬉しかった。

 くっくっく、早くナゾナ・ゾロアスターに会いたい。そして我こそ史上初の正解者なりと言ってやりたい。

 さあ、なぞなぞは解けた! あとはゾロアスターのいる部室を見つけるだけだ!

 

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