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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

旦那様が浮気をしているので、妻は悩んでいます。

作者: みちぇ子

なんか、思い浮かんだものをバーって書いたので、サラサラサラーっと読んでいただけたらと思います。


誤字修正と一部加筆しました。

 最近、とっても悩んでいることが一つあります。


 (わたくし)の旦那様であるギルベルト・ファンドール子爵が浮気をしていることです。何故知ったかって?


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 時は少し遡ります。


 ここ最近、夜のお勤めが疎かになっておりました。私としましてはこれっぽちも気にしておりませんでしたが、口うるさい・・・私達夫婦想いの義母がさっさと孫の顔が見たいと屋敷にまで押し掛けて来だしたのです。その時に、あ、最近ヤッてねーわ、と気がついたのですが、元々旦那様が求めて来れば、こちらとしては拒否もいたしません。

 新婚時代には…と言ってもまだ結婚してから1年経ってないんですが、それこそ盛りのついた犬の様に求めてこられた方が、急にパッタリと声をかけてきません。もう、2ヶ月程経ちますでしょうか。


 その頃から、旦那様の態度がどこかよそよそしいのです。私が目を見て話そうとすれば、すぐ逸します。かと思えば高価な贈り物が増えていくのです。私は要らないとハッキリ伝えているのですが、明らかにご機嫌を取ろうとしているのが透けて見えております。


 完全に怪しいですわよね?


 少し話は変わるのですが、先週アイーダ・マッケン侯爵令嬢様主催のお茶会に招待されました。

 アイーダ様と知り合ったのは、まだ私がしがない男爵令嬢の時ですわ。元々下町の商家だった私の父がそこそこ遣り手でございました。手堅い商業戦略と貴族向け商品を売り出したことによって国王陛下の目に留まり、男爵位を賜ったのです。そこで、社交界では時代を先取りし、ご令嬢の憧れの的であったアイーダ様からお声がかかり、こうやって招待されるのです。ご本人曰く、私は大親友だそうですが、私には大親友はおろか友人などおりません。

 

 本日のお茶会に集められたメンバーは、由緒正しいお家柄の暇を持て余した、「平民のくせに金で爵位を買った成金が」といつも遠回しに私を罵ってらっしゃるご令嬢方でした。

 あ、別に腹が立ったりしてはおりませんわよ。

 大きい声では言えませんが、正直、参加者の方々、ましてやマッケン侯爵家すら凌ぐ資産を有しておりますので、小鳥がピーチクパーチク囀った所で、痛くも痒くもございません。まぁ、そのピーチクパーチクの中にも時たま有意義なお話が含まれていることがございますので、そのために参加していると言っても過言ではございません。


 お茶会も終盤に差し掛かった頃、アイーダ様が私の側に寄ってきて耳打ちされたのです。


 

「私、先日ギルベルト様がロクシー・バリントン子爵令嬢とご一緒にいらっしゃるのを見てしまったの。」




 ・・・だから?・・・あ、あーハイハイ、あんたの旦那浮気してるわよって事でごさいますね。ハイハイ、貴族語はめんどくさいです。どうやらアイーダ様は、私にその事を今回のお茶会で伝えたかったのでしょう。しかも、ご丁寧に私のお向かいでは、ロクシー様ご本人が美味しそうにマカロンを頬張っていらっしゃいます。サラサラの燃えるような赤毛にツヤツヤの白い肌。ややタレ目気味な目元に、愛らしい唇。夜会では殿方にとても人気のご令嬢でごさいます。アイーダ様主催のお茶会には初参加の様でごさいました。

 前回のお茶会の時には貴族語使って娼婦と皆様罵ってらっしゃったのに・・・きっと、私とブッキングさせて様子を伺っていらっしゃるのでしょう。まぁ、別段気にすることも無いので、改めてご挨拶をさせていただきました。

 普段、うちの商会でお買い物して頂いてるようで、コスメシリーズの大ファンだとおっしゃっていました。丁寧にお礼申し上げました。


 自宅に戻ってから、仕方がないので旦那様の身辺調査をすることにしました。貴族に愛人が一人や二人、ありきたりなお話です。私も特に気にしておりません。愛人に子ができたら?普通に跡取り候補として育てます。優秀なものが跡を継げば良いのです。領民の生活は領主の手腕に掛かっているのです。妾腹の子だとか、由緒正しき血筋がとか、知ったこっちゃありません。自分たちの生活が潤えば、上のスキャンダルなどどうでも良いものなのです。

 しかし、旦那様のスキャンダルによって、何かしらのトラブルが起こっては困るのも事実。私のお抱えの影を使って調べ上げました。旦那様の事。ロクシー様の事。バリントン子爵の事。最近のうちの事業から取引相手の事。・・・等々


 どうやら旦那様が浮気をしているのは事実のようでした。相手は赤毛の女性。貴族が利用する宿屋(要は個人情報しっかり守るラブホでございます)を結構な頻度でご利用のようでした。


 しかし、ロクシー様には婚約者様がいらっしゃっいます。相手は格上のグーテンバーク公爵様でございます。彼女が陰口を叩かれるのは、妬みからでございます。しがない子爵のどこが良いのやら。私は悩みました。それに、わざわざ私に見せつけるようにロクシー様を招待したアイーダ様も気になります。調査の範囲を広げてみましょう。


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 後日、報告書に目を通しました。これは困った。


 どうやら旦那様の浮気相手は、ロクシー様ではございませんでした。

 

 旦那様のご相手は、アイーダ・マッケン侯爵令嬢だったのです。


 旦那様は、爵位的に上の方と不倫なさっていたのです。アイーダ様はまだ18歳になられたばかり。これからどこかの殿方と婚約、ゆくゆくは結婚を控えてらっしゃるのに、貞操を重要視する貴族社会からしたら、完全に傷物です。しかし、私性格が元々よろしくないので、ちょっと興味をそそられます。あの方達どうするんでしょうか。取り敢えず、とばっちりはゴメンですので、色々と証拠は抑えとく事にしました。


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 さらに数日後、追加の報告書が届きました。これは困った。


 どうやら旦那様は、私の為に浮気しているそうなのです。最初、全く意味がわかりませんでした。どゆこと?


 報告書には、不良債権と返済の領収書の写しが添付されていました。

 最近、やたら贈り物を寄越してくるのでおかしいとは思っておりましたが、羽振りがよかった理由は謝礼のようです。何の謝礼かと言うと、不倫の謝礼です。

 最初、お?ヒモにでもなったか?と思っていたのですが、旦那様は私の与り知らぬ所で事業に失敗していたのです。それもかなりの大損。誰がこんなもんに投資するねん、と思うような物に全財産に近いお金を投資しておりました。大方騙されたのでしょう。元々箱入りの世間に疎い旦那様。ハチミツの用に甘やかし、都合の悪い人間は排除し続けてきた義母の努力の結果がコレでございます。私にちゃんと相談していれば、こんなことには決してしなかったのに…単純の代名詞の様な旦那様は、人をすぐ信じてしまうのです。何度痛い目にあっても、根本的な部分は中々変わることはありません。


借金→ママ活→お小遣い→返済


 まぁ、こんな所でしょう。


 おそらく、どこぞの誰かに相談でもし、妻の私には宝石でも与えておけば気が付かないだろうと吹き込まれたのでしょう。旦那様はちょろいので、きっと扱いやすかったことでしょう。宝石類の購入明細の金額が明らかなぼったくりだったので、販売店は絶対に潰します。


 因みに、担保にはこの邸宅、並びに領地も含まれていた様で、このまま一家諸共路頭に迷うか離散していた事でしょう。しかし、私が驚いたのは、追記されている条件でした。


 ※利子として、ソフィーヌ・ファンドール子爵夫人と夫人有する権利全てを譲渡すること。



 これ、人身売買書です。


 は?ナニコレ?利子が私って何?全く意味がわかりませんでした。てか、こんな金額、私のポケットマネーで全額払い切れますし!私が憤慨していると、報告書を持ってきてくれた影がそこ重要じゃないってツッコんでくれます。


 どうやら旦那様は、この条件で返済を迫られ、アイーダ様扮する赤毛の女性と浮名を流すか、どちらかを選ばされたようでした。あまりのしょうもない茶番に、さすがの私もビックリです。

 投資話の裏で動いていたのはマッケン侯爵です。そこに、しがない子爵をだまくらかし借金をさせ、アイーダ様扮する貴族のご令嬢で珍しい赤毛の美女…大方、ロクシー様のつもりでしょう。浮名を流すことで何かしらの恩恵を受けようとしているのだと思いました。


 まぁ、ロクシー様の婚約者であられるグーテンバーク公爵様でしょうね。結婚間近に、ロクシー様の不貞が発覚すれば婚約破棄は間違いございません。しかも、グーテンバーク家は先々代の元に第三王女様が降嫁され、公爵家の中では一番王家に近いのです。そんな所に嫁ぐと言うことは、王族の仲間入りと同義でございます。


 しかし、何故、旦那様だったのでしょう。子爵家はもちろん、領地も特にコレと言ってなにかあるわけではございません。私の実家、並びに私個人に関してはそこそこの資産はございます。しかし、表立って公表はしておりませんし、銀行での資産管理は絶対に外部に漏れることはありません。もし、情報漏洩しようものなら、たかが銀行の一つや二つ、潰すのは簡単でごさいます。なので、世間ではちょっと儲かってる、成金男爵は最近寄付しまくってんなーぐらいの認知度の筈でございます。これも調べなければなりません。あー、めんどくさ。


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 次の日、早速報告書が手元にとどきました。原因は国王陛下でございました。

 どうやら王妃様が、私が版権を持っている出版物を大層好んでらっしゃるそうで、それが貴族令嬢の間で流行りだし、民衆に広まっているようでございました。結果、男爵令嬢時代に私が偽名で立ち上げた出版会社の株価が爆発的に高騰してしまいました。王妃様を溺愛されている国王陛下は、設立者である私を探そうとしてしまったそうでごさいます。その捜索に当たったのが、流行最先端の娘を持つマッケン侯爵だったのです。

 マッケン侯爵は私にたどり着いたのでしょう。そして、お金の匂いを嗅ぎつけ、人を利子呼ばわりしたのでございます。マッケン侯爵夫人は5年前に流行り病で亡くなっておられますので、私を後妻にでも入れようとしたのかもしれません。あの人、いつ見ても鼻毛出てるのよねー。


 粗方のからくりは見えましたので、父にもこれまでの報告書と手紙を添えて届けてもらいました。


 さて、どうしたものか・・・。


 まずは、相手の気持ちになって物事を考えてみます。婚約破棄させるにはどうするのが一番効果的でしょうか?

 そう言えば、国王陛下主催の舞踏会が来週ございます。十中八九そこで何か仕掛けてくることでしょう。あまり柄ではありませんが、このままでは更にめんどくさいことになるでしょうから、先手必勝でごさいます。


 ちょっと楽しくなってきましたわ。


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「ロクシー様はファンドール子爵と不倫なさっていますわ!これが証拠でございます。この方達は、お二人がいかがわしい宿から出てこられる所を目撃されてますのよ!」




 アイーダ様が、グーテンバーク公爵様にエスコートされているロクシー様の前でピーチクパーチク囀っております。一方、うちの旦那様は汗タラタラ流していて、これでは真実ですと言っているようなものでございます。大衆の前で名指しされる予定ではなかったのでしょう。顔が真っ青でございますよ、旦那様。


 グーテンバーク公爵様は顔を顰め、マッケン侯爵と並んで興奮気味に囀っているご令嬢を訝しんでおります。そりゃそうですわ。格下の家が、軽く挨拶を交わして直ぐ、自分の婚約者の不貞を宣言しているんですもの。しかし、アイーダ様の演技は見るに絶えません。学芸会の出し物でももう少しマシな演技が見れますことよ。おっと、危うく笑いが溢れてしまうところでしたわ。ここは我慢、我慢!


 アイーダ様がご用意した証拠は、最近貴族の間で流行りだした写真に、目撃証人に・・・あら、逢引される時に使っていた馬車の御者ですね。

 写真の中の後ろ姿の女性はロクシー様に見えなくはないですが、白黒なので決定打には欠けますわね。目撃証人は、アイーダ様の取り巻きのご令嬢方でごさいますわね。皆さん、赤毛の女性だと口を揃えておっしゃっておりますわ。確かに元々赤毛は珍しく、写真の中の様なサラサラストレートに加えてて貴族となると、誰もがロクシー様だと口を揃えておっしゃるでしょう。そして、御者は、自分が乗せた客を問われ、ロクシー様と旦那様を指差しておりますわ。

 ロクシー様はとても困ってらっしゃるご様子です。それはそうですわ、しがない子爵との身に覚えも無い浮気を告げられてもさっぱりですわよね。


 エスコートされる為に添えた自分の指先から、ゆっくりと旦那様の腕…肩…最後に青白い顔と、観察するかの様に見つめます。それはそれは、ひたすら見つめます。旦那様の汗が止まりません。まだ見つめます。無言で。分かっていてこちらを向こうとしない旦那様をジーッと見つめます。この場を切り抜けるのに必死なのでしょうが、誰も助けてはくれませんよ。圧力かけるために、無言で見つめ続けます。


 あ、観念しましたわ。


 今にも泣き出しそうな旦那様は私に身の潔白を精一杯話します。最近、夜な夜な女性と密会していただとか、しかし体の関係は一切ないとか、事業に失敗して借金抱えたとか、必死でごさいます。全て知っておりますが、私に黙っていた罰です。私は大女優ばりに演技してみせました。アイーダ様よりはマシですわ。

 取り敢えず、信じられない!、なんで黙っていたのよ!、およよよよ・・の裏切られた妻のお涙頂戴劇でございます。私が、本当にロクシー様と浮気していたのかと問い詰めれば、ハッキリとは言わないものの、視線はアイーダ様を見ています。

 すると、焦ったアイーダ様は如何に自分が子爵と不倫なんてするもんですかの理由を並び立てまくってきました。それ以上言ってはいけませんよ。旦那様は繊細なので、もう泣いてしまっているではありませんか。横でマッケン侯爵が例の書類に入っているであろう封書をチラチラ旦那様に見せてきます。旦那様は苦虫を噛み潰したような顔をなさって黙り込んでしまわれました。

 

 そして、マッケン侯爵はグーテンバーク公爵に、この様な女性との婚約は考え直された方がよろしいかととおっしゃって、私達夫婦の所へとやってきました。そして、私を介抱なさるフリをし、意味深な目配せをして旦那様と私を別室へと誘導してこられたのです。


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 控室には、マッケン侯爵様とアイーダ様、旦那様と私の4人しかおりません。

 そこで、侯爵様は借金の借用書を私に見せてきたのです。利子の記載もきっちりございました。




「子爵が抱えた負債を、私が立替えたのだが、このままでは担保として屋敷も領地も君すらも差し出すことになるだろう。君まで苦しむ必要はない。私は、以前から君に淡い恋心を抱いていてね。君さえ良ければ私の妻になってくれないだろうか。」




 マッケン侯爵に求婚されました。後ろのアイーダ様は驚愕の表情でごさいます。きっと、手篭めにしてしまえばいいとでも思っておられたのでしょう。しかし、侯爵様が欲しいのは私の名義の権利やら財産でございます。愛人に遺産の相続権利はございませんので、私が侯爵様へ財産を差し出す理由はございません。妻として娶るしか無いのです。

 旦那様は自分が不甲斐ないのでしょう。拳をきつく握りしめて下を向いておられます。私はしばし考えます。そして、侯爵様に向かって、求婚を受け入れたのでごさいます。


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 善は急げ!貴族の婚姻は国王陛下の許可が必要でごさいます。勿論、離婚に関してもです。

 私は空気が読めません。そう、空気が読めない女でございます。偶々書類が用意されていても気にいたしません。さささーっとサインもして、証人として廊下を歩いていたメイドを捕まえサインしてもらいます。

 本日も右の鼻孔から鼻毛を覗かせる侯爵様の手を握り、そのまま空気の読めない私は陛下の御前にて子爵との離婚許可を求め、侯爵との結婚許可を求めました。私の気迫に慄きながらも、国の国庫の行く末を握る我が家門のご機嫌伺いする陛下はすんなり許可をくださり、晴れて私は侯爵夫人になったのです。書類は、陛下の隣で立っておられる宰相様にお渡ししました。さて、取り敢えず喜びを表す為に、マッケン侯爵様のお胸に飛び込んでおきます。しっかり抱きとめていただきました。私の視界の隅の元旦那様は絶望をお顔に貼り付けておられました。まぁ、不憫ですこと。

 あら、侯爵様、左からも鼻毛が出ておりますわよ。


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 舞踏会から一週間が経ちました。私、新婚ですが初夜は月のもがきた事になっているので未だに床入りしておりません。新しい旦那様はアイーダ様とグーテンバーク公爵様の婚約に漕ぎ着くために奔走しております。アイーダ様も、なんとしてもロクシー様を失墜させるべく根も葉もない噂話を携えて夜会を渡り歩いております。ですので、只今私は自由の身でごさいます。ここへ来てからは書類仕事ばかりしておりましたが、やっと一段落終えることが出来ました。


 さて、これで準備万端でごさいます。この書類の束を持って、ちょっくら国王陛下に会いに行ってこようかなーっと。


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 さて、只今、国王陛下の御前でごさいます。ついでにグーテンバーク公爵様にゴマすりしていた旦那様と我が義娘を見つけましたので連れてまいりました。公爵様ごとでごさいます。もうちょっとで役者も全て揃うでしょうが、まず私が一週間かけて完成させました書類達を見ていただきます。陛下が見終わると、隣の宰相様にお渡しし、目を通されます。宰相様は普段ポーカーフェイスなのですが、今年一番驚かれたのではないでしょうか?お目々が落っこちてしまいそうな程見開かれております。

 旦那様はわけが分からず、何か言いたそうなお顔をされていますが、許可なく口を開くことは出来ません。

 そこに丁度、元旦那様とロクシー様がいらっしゃいました。お二方とも気まずそうで、公爵様はいい顔されておりません。


 そして、私は発言の許可をいただきます。あ、OKですか?ありがとうございます。




「今回、ロクシー様と元旦那様のファンドール子爵の不倫騒動は、私の新しい旦那様マッケン侯爵の策略でごさいます。あ、ちょっと旦那様おだまりになって。


 ラブホに出入りしていたのは、ファンドール子爵とアイーダ様でごさいます。時たま侍女を伴って、写真の偽装と目撃者を量産しおりました。御者は買収しております。報告書の三枚目でごさいますね。その際に支払われた明細は四枚目でごさいます。あ、その袋の中にはアイーダ様のお部屋で見つけた赤毛のウイッグが入っております。ちょっと、お行儀悪いわよ、クソ女なんて、淑女がそんな言葉遣いメッ!


 あと、ファンドール子爵は旦那様の詐欺行為で、全財産巻き上げられております。概要は五枚目ですわ。その際の借用書や返済の領収書などの細々したものは六枚目~十枚目にございます。ちなみに、借用書の利子とは私の事でごさいます。これは、我が国の人身売買撤廃の法に触れる物ですので、今までの判例に習えば斬首ですわね。ちゃんと旦那様のサインもございますわ。

 いえ、偽装は出来ませんことよ。隣国から取り寄せた高価な特殊インク、お使いになってるの旦那様ぐらいですわ。


 えーと、あとは昨日裏帳簿見つけましたので、帳簿の控えを提出させていただきますわね。それから、アイーダ様の裏口入学と、伴って賄賂で買収された方々のリストに、えーっと、隣国と内通していた証拠のお手紙と、あと旦那様の予備のカツラも合わせて提出しときました。髪の毛まで偽るだなんて、なんて悪いお方なんでしょう。すっかり騙されましたわ。

 

 まだまだ、ホコリは出てくるんですけども、取り急ぎ旦那様の悪事の数々、内部告発させていただきますので、爵位のお取り潰しはご容赦くださいませ。まぁ、なんて寛大な・・・ありがとうごさいます。今後は、娘共々強く生きていこうと思います。まさか、一週間で未亡人になってしまうなんて。


 ですが、私も頑張りましたのよ、旦那様。きっと、心残りで死ぬに死にきれないでしょ?娘アイーダの嫁ぎ先、私が代わりに見つけておきましたの。まぁ、アイーダ、そんなにはしゃいで、母さんも嬉しいわ。

 え?あー、辺境伯でございます。いえ、西方ではございません。北方の辺境伯のジャイルーダ様です。はい、先月還暦を迎えられたとか。それはそれは二つ返事でOK頂きました。八番目の奥様と離婚されたばかりでお寂しいようです。きっとアイーダが辺境伯の心を温めることでしょう。こら、棺桶に片足ツッコんでるジジィだなんて、失礼ね。まだまだ現役らしいわよ。早く孫が見たいわー。


 旦那様、後のことは任してください。もう、旦那様名義の物は私の名義に変更しておりますの。旦那様がご迷惑かけた方々にはちゃんと誠意を持って慰謝料付けて謝罪しておきますわ。」



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 それから一ヶ月、娘は嫁に行き、旦那様は裁判で有罪判決を頂き斬首の刑で帰らぬ人となってしまいました。あー、私未亡人だわー。あー、誰か私の心を温めてくれないかしら~。

 勿論、爵位のお取り潰しはなくなりました。ここまで、スムーズに事が運んだのは全て国王陛下のはからいでごさいます。決して、王妃様の愛読書の連載打ち切りだとか、出版会社畳みますとか言ったせいでは無いと思いますわ。陛下による国庫の心配と王妃様からの圧力…慈悲深いお心と王妃様への愛情の賜物だと信じております。


 元旦那様は、今私の目の前で土下座しております。結局、子爵の屋敷も領地も私の物になりましたので、彼は爵位も無いただの平民でごさいます。今は、罪滅ぼしで私の元で雑用でもいいから働かせてくれと乗り込んで来たのでごさいます。かなりの迷惑行為なんですけれども、私が許さない限り、梃子でも動かないでしょう。


 大きいため息を一つ付き、紅茶に口をつけた時、ちょっとした疑問があったのを思い出したので聞いてみることにいたしました。


 何故、元旦那様であるギルベルトの浮気をアイーダ様が仄めかしたのか。ちょっと様子はおかしかったけど、アレが無ければ別段気にすることも無く、証拠も揃ってない状態では私は動くタイミングが遅れ後手にまわり、マッケン侯爵の方が有利に事を運べたでしょう。


 聞いてみました。




「ソフィーヌ、君は普段から私に興味がなかったろ?君に何も相談しなかったのは、私の心の弱さだ。君に嫌われたくなかった。良い所を見せようと思って、まんまと口車にノッて投資してしまったんだ。結果、この様だったけれど。

 好きでもない女性とホテルに入る事は苦痛だった。君を裏切っていると思うと心が張り裂けそうだった。でも、事業に失敗した私は自暴自棄に陥っていたんだ。少しでも君の気が引きたかった。もしかしたら、嫉妬してくれるんじゃないかと。怒鳴られても蔑まれても良かった。少しでも君の感情を揺さぶり、君の心が少しでも私に傾いてくれればと…だから、アイーダ嬢に頼み込んだんだ。良い顔はしなかったが、それとなく君に伝えてくれると約束してくれたんだ。しかし、君は平常通りだった。」




 あら、泣き出してしまったわ。これには流石にびっくりしました。そんな事思っていただなんて、思いも寄りませんでしたわ。ちょっと想定外だったので、少し考えることにしました。


 あらららら、私が無言だったからでしょうか、もう私は消えるよとか言い出しましたわ。今にも死んでしまいそうな顔で。仕方がないので、もっと後にと思っていた紙を一枚、引き出しから取り出して元旦那様に渡します。




「ねぇ、ギルベルト、私、今未亡人なんですの。愛しの娘も嫁いでしまって、この家には私だけですのよ。寂しいと思いません?どなたか、私の身も心も温めてくれる方ご存じない?」


 

 あら、そんなに号泣しなくてもよろしいのではなくて?あー、ほら、そんなにきつく握りしめたら破れてしまうではありませんか。今、予備無いんですから、しわくちゃにしないでちょうだい。ほら、雑用でもなんでもしてくれるんでしょ?その紙にさっさとサインして陛下に持っていってくださる?旦那様♡

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