超えるべき山と過ぎ去りし夢の日々
ゴブリン達に囚われ、女性としての尊厳を踏みにじられるような凌辱の限りを尽くされた女性達の解放に成功した俺。
陽光に包まれた爽やかなエルレ平原を歩き、イセラを初め女性冒険者とギルド職員から構成された救助隊と共にオルニアへ向かっている。
ゴブリンからブローチを奪還するだけに留まらず、女性達21人を救うという功績もあげ全てが良い形で収束するかに見えたが俺は大きな問題を抱えている。
それは男の性とも言え、健康な成人男性なら不可避とも言える。
そう、具体的に言うと下半身が疼きその存在を大いに主張しようとしているのだ。
もしも今、この場で俺の下半身が隆盛を極めてしまうと、冒険者としてのレベルが高く観察眼に優れていそうなイセラにはすぐに露見してしまうだろう。
――イセラたち【山賊の隠れ家亭】で働く女性店員はその昔、【乙女繚乱】という女山賊団の一員だった。山賊団のモットーは、“女でも強く自由に生きる”というものだ。イセラからその話を聞いている時にこうも言っていた「女を性の対象としか見ない輩には容赦しない」と。――
ゴブリン達から解放された女性達と行動を共にしている今、イセラに下半身事情がバレたとあってはただじゃおかれないだろう。今まで培ってきた信頼も失いせっかく手に入れた彼女たちの従業員寮である【乙女のオアシス】での美女たちとの夢の共同生活も終わりを迎えてしまう可能性が高い。
それに、イセラだけでなく救助隊の面々やジャスリーンを初め被害者たちから向けられる視線も、“ゴブリン達から救ってくれた人”から“人の皮をかぶったゴブリン”まで落ちてしまうかもしれない。
そこまでいかなくとも、女性達が決していい気分にならないだろうという事がわかるくらいの分別は持ち合わせている。
俺をここまで追いつめている要因は大きくわけてふたつある。
ひとつめは視覚から入る情報のせいだ。
今俺のいる暫定パーティは、21人の救出された女性にエリスとイセラ、それとギルドから派遣された5名の救助隊に俺。
つまり28人の女性に男性は俺だけしかいないという数だけでもまさにハーレム状態。
そこにきて、21名の救出された女性は皆が美人で、着る服はヒルダから渡された【山賊の隠れ家亭】の予備の制服である。
その制服は胸部や腰回りを最低限覆う程度の、非常に露出度の高いものとなっている。
21人の美女達が露出度の高い服を着て歩く様は壮観であり、眼福であるのだが刺激が強すぎることもまた事実だ。
また、彼女だけにはバレたらいけないと気を配るイセラも、スーパーモデルのような肢体を惜しげも無く披露するように、露出度の高い黒のボディスーツを着ている。
特に後ろ姿で目を惹くのはハイレグになっている部分から大きくはみ出している形の良い臀部だ。
歩くたびにぶりんぶりんと音が聞こえてくるように、艶めかしく躍動する桃の双丘に自然とフォーカスターゲットしてしまう。
視覚から脳内に入り込む桃色の刺激だけでも、下半身のリミットがブレイクしそうになるところに更に追い打ちをかけているものを俺は抱えている。――いや正確に言うと背負っている。
洞窟を出る際いまだ気を失っているエリスを誰が運ぶのかという時に、ジャスリーンからは「ナツヒさんが運んであげるのがエリスさんはきっと1番喜びますよ。」と微笑まれ、イセラからは「おつかい士さんがクエストに連れ出したんだから、ちゃんと帰りまで送るのが男の責任ってものですよ?」と笑顔の圧を受け、なし崩し的に俺が背負うことになったエリス。
背後から迫るみずみずしさを伴う色気の圧が凄まじい。
首元や耳元にかけてかかるエリスの寝息は、俺の男としての本能を呼び覚ますようにくすぐってくる。
更に【山賊の隠れ家亭】の制服の予備に、エリスの胸のサイズに対応するものは無かったのか、上下から大きくはみ出す形で制服を装着していたエリス。
エリスの崩れない巨大なふたつのプリンは、俺の首から肩を通って肩甲骨にかけてまでの広範囲に、この世のものとは思えない柔らかさを伴って俺の理性を破壊しようとしてくる。
俺が歩をすすめる振動にあわせ、密着しているはずなのにたゆんたゆんという躍動感が伝わり、その凶悪なまでに柔らかく大きな幸せの塊が俺を背後から包み込む。
また、その幸せの発生源であるエリスを支えるは俺の両の手だ。
首から背中だけでなく、手から伝わる攻撃も熾烈を極めるものだった。
これまた、制服のサイズが合わないのか獣の皮でできたショートパンツ型の装備では、エリスの健康的に発達したお尻を包み込むことはできていなかった。
そんな溢れんばかりの桃色の刺激を受け止めるは掌だ。
俺の掌はエリスのお尻なのか太ももなのかはわからないが、指の形に沈み込むように柔らかくも10代の張りを感じさせる何かに吸いついている。
俺の掌は俺の掌に産まれてきたことを今この時ほど喜んでいることはないだろう。
自分でも何を考えているかわからなくなってきた時だった。
「ん・・・。」
とエリスの吐息混じりの声。
起きたのかっ!?
正直とても幸せでこのまま背負っていたいが今では無い。
このままこの状況が続くと俺はリミットブレイクしてしまい、信頼どころか命までも失いかねない。
起きたのなら歩いてくれるとありがたい。
「エリス?起きたのか・・・?」
確かに起きたような雰囲気も感じたが寝ぼけていただけだろうか。反応は無いままだった。
これはもう意識を切り替えるしかない。
俺はエリスから感じる肉感的な刺激から意識を切り離すように、ゴブリンシャーマンが持っていた杖のことや、ブローチの依頼主のこと。これから借金300万をどうやって返すかなど即物的なことだけを考えるようにした。
――結局その後もエリスはオルニア到着まで起きることは無かった。
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【エリス=ヴァレンティア】
馬車の幌より入り込む初夏の訪れを知らせるような、草原を吹く爽やかな風を感じながら草を食む動物や道端に咲く花の名前を私は尋ねる。
父上は優しい目で、私を見つめながらその名前を教えてくれる。
目に映る全てのものが、新鮮できらきらと輝いて見えた。
やがて父上との会話に心満たされた私は、馬車の心地良い揺れに身を任せ眠りに落ちる。
私の宝物のような時間。
――「エリス?起きたのか・・・?」
記憶にある父上の声よりも若く、どこかやんちゃさも感じさせるが優し気な声が耳に響く。
目を覚ますと、夢の記憶と良く似た爽やかな草原だった。
だけれど私の眼に映されたのは馬車の中にいる父上ではなく、爽やかな風にそよぐナツヒ君の髪だった。
・・・そっか。私ゴブリンを倒してそのまま気を失っちゃったのか。
何がどうなって私がおんぶをされて、草原を歩いているかはわからないけどひとつだけわかる事がある。
今のこの時間はとても安心で温かいものだということだ。
――幸せだったあの頃の夢を見てしまう程に。
ナツヒ君には申し訳ないけどこのままもう少しだけ寝かせてもらおう。
私は確かな安心感を抱きしめ、陽の光の温かさを感じながら再び眠りについた。




