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悪意と正義と美しさ

女性が自分の身体に見合わない大きさの欲望をねじ込まれ泣き叫ぶ姿を見て、雑魚ゴブリン達はゲギャーゲギャーと歓声を上げ自らも快楽を貪り始める。


「ドウダ?見てワカルダロ?この嬉しそうな姿。泣いて喜んでいるではナイカ。あぁ、ソレニシテモなんという快楽ヨ。オマエノ穴もタノシミダ!!!」


言いながら女性を上下に動かすホブゴブリン・ザ・スウィンドラー。


「やめてーーー!!!もうやめて!!!」


エリスは目に涙を浮かべ悲痛に顔を歪めながら愚直に結界に向かって攻撃を繰り返す。


その姿を見てもゴブリンシャーマンに動揺が全く見られない事から、ダメージの蓄積で壊れるタイプの結界では無さそうだと俺は判断し次の可能性を探す。


・・・もしかしたら俺ももう冷静では無いのかもしれない。


なんとか結界を壊してこいつらを殺したいという衝動に頭を支配されている。


人間の女性の尊厳を奪い、何の罪も感じない様子は完全に人間の敵で許す余地は全くない。


何よりもエリスにあんな表情をさせてしまうこいつらを許す事は俺にはできない。


こいつらを皆殺しにして外に出ていったやつらも殺しこの群れを根絶やしにする。


その為に結界を破る可能性を探すべく部屋の中を見渡す。


「アァァ・・良いぞ良いぞソノ顔、ソノ身体、ソノ動き。実にツヨソウナ子孫をウミソウだ。」


結界を破るきっかけを探さなければいけないのに、思わず声の主を見てしまう。


ホブゴブリン・ザ・スウィンドラーは目の前の女性を上下に動かしながらも、エリスを高揚した目で見ている。


「ゲギャギャ!」


「ギャ!」


そしてふいにこちらには理解できない言葉で、ゴブリンシャーマンに何かを伝える。


偽りの王から何かしらの指示を受けたゴブリンシャーマンは片手で持っていた杖を両手で持ち直し聞き取れない言葉で詠唱を始める。


まずい!どんな魔法が来るかはわからないが、こちらにとって都合が悪い事が起きるのは確かだ。


こちらの神経を逆撫でしてくる偽りの王を意識の外においやり、自身の全神経を結界を破る方法を探す事に集中させる。


エリスによる壮絶な斬撃の連続でも、結界が破れる様子は無い。


やはり結界を破るにはダメージ蓄積ではない別の方法があるということか。


であれば次の可能性としては魔力の源となる仕掛け、魔法陣かあるいは魔器かがこの部屋に設置されているはずだと推測をする。


レベル8程度のゴブリンシャーマンに、ここまで強固な結界を張ることはできないだろうというのは俺のゲーマーとしての勘だ。


ゲームの知識がこの世界に当てはまるかはわからないが、今までの事例から見るに可能性は高い。


強固な結界はこの部屋限定であり、必ず何かしらの仕掛けがあると信じ部屋内の隅々まで視線を送る。


「ゲギャー!!!」


俺の思考を遮るように上がる声の主を見ると、こちらが仕掛けを見つけるよりも早くゴブリンシャーマンは詠唱を終え、杖を大きく頭上に掲げる。


杖の先から黒い靄が湧きだしそれは鳥の形を作り出す。


そしてカラスのような黒い鳥がエリスに向かって飛んでいく。


「気をつけろエリス!」


しかし、黒い鳥はそのままエリスの頭上を通りすぎ、さらには俺をも通りすぎて部屋の外に出ていった。


「エリス大丈夫か?」


「うん。大丈夫!なんともない。ナツヒ君も大丈夫?」


「あぁ俺もなんともない。」


どうやら攻撃魔法では無かったようだ。


・・・となると部屋の外に出ていったところを見るに、援軍を呼びに行った可能性が高い。


先ほどのゴブリン語でのやりとりは、エリスを見て興奮を抑えきれない偽りの王がエリス捕獲の為、自らの軍勢を呼び戻すようシャーマンに指示をしたということだろう。


一刻も早く仕掛けを見つけ結界を破らねば。


部屋内に視線を巡らしているその時、視界の隅にきらっと光るものが移り込んだ。


光の元はステージ状にせり上がった石段のやや手前の地面に埋まっていた。


それは黒光りする水晶のようなもの。


よく見ると反対側にも同じく光るものが見える。


この黒い水晶が強固な結界を生む仕掛けに間違いないだろう。


「エリス!その黒い水晶を壊してくれ!」


俺がエリスに指示を送るがそれをかき消すように大音声が木霊する。


声の主は立ち上がり自らも腰を動かし、恍惚としながらも邪悪な笑みでエリスに向け叫ぶホブゴブリン・ザ・スウィンドラーだった。


「あぁぁ!良いゾ!オンナーー!快楽に打ち震える瞬間ヲミルガイイ!!」


「ああああああああいやああぁぁああ!!!!」


次の瞬間ぶるるっと大きく偽りの王が震え、数秒の後に泣き叫ぶ女性の蜜壺から白く濁った欲望が溢れ出す。


そして女性の中に納まりきらず溢れ出る白濁液を、一滴も無駄にはしないと言わんばかりに、雑魚ゴブリン達が壺を持ち上げその中に入れていく。


ステージにあった壺の中身はホブゴブリン・ザ・スウィンドラーの体液だったのか。


手下たちはその体液を自らの手や陰部に塗りたくった上で女性の中に入り込み、少しでも繁殖の可能性を高めていたというところだろう。


反吐がでる自分の考察に軽くめまいを覚えるが、落ち着きながらも沸き立つ怒りを内包する声色が俺を現実に引き戻す。


「君は・・もう謝っても許さないから。・・・ストレングス・ブースト。」


エリスが自身に身体強化の魔法をかけている。


駄目だ、それでも結界は壊せない。もはや俺の声も届かないだろう。


――俺が2つの黒水晶を壊さねば。


「ゴぅフ?果ててシモウタか。情けないオンナダ。」


偽の王の溢れんばかりの悪意と欲望を受け止めた女性は、意識を失ってしまったのかこと切れてしまったのかはわからないがぴくりとも動かない。


その様子を見て興ざめしたかのように己の欲望をぶつけた女性を無造作に地面に放り投げるホブゴブリン・ザ・スウィンドラー。


女性のあまりの扱いに怒りを覚え今すぐに斬りかかりたい衝動に駆られるが、ひとつめの黒水晶に疾走し刀を突き立てる。


ぴしっと音をたてあっけなく割れる黒水晶。


結界も一瞬ではあるが明滅し、何かしらの影響を与えられた事が伺える。


「キサマーーー!!!コシャクナマネヲ!」


ゴブリンシャーマンが初めて取り乱した。


どうやら俺の思惑は大当たりを引いたらしい。


「ゲギャゲゲギャギャ」


短い詠唱後、杖の先から火の玉を俺に向かって飛ばしてくる。


直撃したら少なからずダメージは受けるだろうが、俺のパラメータの中でも最も高い素早さを生かし直撃を避ける。


続けて詠唱を繰り返し、俺を仕留めようと火の玉を放つゴブリンシャーマン。


ひとつひとつ避けるのは他愛無いが、やはりそれなりに知能があるのかもう1つの黒水晶から遠ざけるようなコースで火の玉を放ってくる。


これではいたずらに時間が過ぎてしまう。援軍が戻ってくる前にこいつらを片付けておかないとさすがに形勢が悪くなるので時間はかけられない。


やはりエリスに黒水晶の破壊を頼むしかないと視線をやったが先ほどまでエリスがいた場所に彼女はいなかった。


――次の瞬間後方から全力で疾走してくるエリスの姿が目に入った。


疾走の勢いそのままにエリスは大きく跳躍し大きく身体を反りながら大剣を振りかぶる。


「やああぁぁぁぁぁぁ!!!クレセントスラーーッシュ!!!!」


結界を破壊せんと入学試験の時にも見せた自身のアーツを繰り出すエリス。


しかし当然の如く、渾身の一撃も不可視の壁に阻まれる。


そう、駄目なんだ。黒水晶を壊さなければ結界を破る事はできないんだ。と焦燥を募らせたが今までとは違う光景が俺の目に映し出される。


今までは結界に弾かれていたが大剣を打ち込んでいる体勢を崩さないままのエリス。しかも今回は弾かれるどころか結界が激しく明滅を繰り返す。


「はあぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!!!!!!」


エリスは尚も力を込め、全体重を乗せて結界を打ち破らんとする。


結界の明滅に青白く照らされるその表情は、敵を討ち破り弱き者を必ず助け出すという揺るぎない決意に満ちていて美しかった。


――なんて眩しいのだろう。勝てる勝てない、成功するしないの理屈ではなくただ純粋に、弱き者を助ける為に悪へと立ち向かい行動する勇気。


危うさや脆さも持ち合わせているその純粋さに手を差し伸べ、彼女の作らんとする世界が幸せに満ちたものにしたいと俺はこの時強く思った。


エリスの想いを乗せた一撃を受け、結界が悲鳴を上げるようにじじじっという電気めいた音がそのボリュームを上げる。


そして一度結界の全貌を浮かび上がらせるように強く輝いたかと思うと、収束する光の中からエリスが現れ、大剣を振り切り地面に着地するその姿が俺の目に入る。


――エリスがついに結界を打ち破った。


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