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狂乱に抗うものたち

ポポロを助けるためにレベル11の素早さをフルに使い全力で駆けだす。


しかし俺が辿り着くよりも早く、燃え盛るような色をした髪の獣人青年が、ザ・ホープリッパーに殴りかかる。


「てんめえぇぇぇぇ!!!!」


「グ・・ギ・・。」


渾身の右ストレートが顔面にクリーンヒットするが、エビルクロウのように一撃で倒すという訳にはいかない。


「ギシャアアァァ!!」


「ぐあっ!!」


爪による反撃を喰らい、腕を十字に交差しガードをするものの腕を切り裂かれ大きく吹っ飛ばされる。


そのまま、追撃をせんとすべく獣人の青年に飛び掛かるザ・ホープリッパー。


爪を体から引き抜かれた事により、どさっとその場に崩れ落ちるポポロ。


「ポポロ―!!!大丈夫か!!!」


俺は急いでインベントリから薬草を出し、ポポロに使う。


「ポポロ!薬草だ!」


「う・・。がふっ!ナツヒ君、あ・・・ありがとう。」


良かった!まだ息はある。


後は薬草が効いてくれれば、一命はとりとめるはずだ。


俺は気休めかもしれないが、薬草を何個もインベントリからとりだしポポロのそばに置く。


「ポポロ!絶対死ぬんじゃないぞ!俺が必ず守るから回復に専念するんだ!」


俺はポポロに声をかけ、立ち上がりザ・ホープリッパーを見据える。


もはや学園側に俺の実力がばれるかどうかなんてどうでもいい。


――ポポロを死なせなくない。


レベル11の力を持って倒しにいきたいところだが、どんな動きをしてくるかわからない以上ポポロを守るためには傍にいるのが上策だ。


こちらに向かってくるようなら、アーツを使って殺す。


飛び道具が飛んできたら、体を盾にしてでもポポロを守る。


俺はどのような展開になってもポポロにこれ以上のダメージがないように身構える。


ザ・ホープリッパーはエビルクロウとは比べものにならない速度と威力で、その爪を振るっているが、黒髪エルフの青年が手にした細剣で剣戟を結び他の生徒への被害を防いでいる。


「ちっ・・・!!」


爪を振るう度に細剣とぶつかり、細剣が甲高い悲鳴を上げている。火花が散る様は細剣の寿命が刻一刻と迫る事を知らせている。


劣勢を助けるべく周りの生徒が魔法で援護射撃を加えるが、大したダメージを与えられていない。


それどころかターゲットをうつし、魔法を撃った生徒に向け自慢の脚力で跳躍し切り裂かんとする。


「きゃああああ!!!!」


「させっかよ!!!」


獣人の青年が飛び蹴りを横っ面に叩き込む。凄まじい速度の助走から繰り出された飛び蹴りは、確かな威力を持ってザ・ホープリッパーの攻撃を阻害する事に成功した。


ザ・ホープリッパーは大きく吹き飛び壁に激突する。


衝撃でぱらぱらと石の壁が欠け落ちる中、壁にもたれかかるザ・ホープリッパー。


「お寝んねするのはまだ早いんじゃねーーーか!!」


追撃をくわえる獣人の青年。それに続き何人かの生徒も手にした獲物で攻撃を加える。


HPゲージもわずかではあるが確実に削る事ができている。


にわかに希望を持った次の瞬間


「シャアアアアアーー!!!」


ザ・ホープリッパーは竜巻のように回転しながら爪を振り回した。


吹き飛ばされる生徒たち。何人かは盛大に血しぶきを上げている。


地面に倒れ伏す生徒がいる中、獣人の青年はくるっと空中で体勢を立て直し着地すると、地面を蹴り再びホープリッパ―に肉迫する。


「へっ!やるじゃねえか!だがこいつはどうかな?」


獣人の青年の右拳が炎に包まれる。


狂暴な笑みを浮かべる獣人の青年の隣を、黒髪エルフの青年が後方から高速で駆け追いつき並走する。


黒髪エルフの青年は細剣を突きの予備動作の体勢で構えながら疾走する。


その細剣の切っ先には光が収束されている。


更には、後列の高い位置から大きく跳躍し、ザ・ホープリッパーの頭上めがけ攻撃を加えようとする人影。


「君には容赦しないよーーーーーー!!!!!」


――エリスだった。


桜色のツインテールを後ろにたなびかせ大剣を右後方に大きく引いている。


その表情を俺の位置から見る事はできないが、声色からは義憤の感情が伺い知れる。


俺は3人の姿を見て、改めて“冒険者”という生き様に胸を打たれる。


“死”というものが限りなく近くにあるこの状況でも臆することなく、敵に立ち向かっていく勇気。


己の我を通すために敵を絶対に討ち倒そうとする闘争心。


ラノベやゲームなどを通し憧れていたはずだが、こうして壮絶なまでの覚悟と行動を見せつけられ、俺のように慎重なだけでは英雄(いただき)には辿り着けないと言われているような感覚を覚える。


「ブレイズファング!!」


「シル・ピアース!!」


「クレセントスラッシュ!!」


次の瞬間3人の攻撃が同時に着弾し、凄まじい轟音が講堂内を包み込む。


「やったか?」


誰かが口にする。


・・・!それは言ってはいけない言葉。


俺の嫌な予感は現実になり、ザ・ホープリッパーが土煙の中から姿を現す。


「ギシャアアァァ!!!!!!!!」


――そして、怒りの咆哮を上げた。


その体は熱を帯びたように赤く変色しほのかに発光している。


攻撃を加えた3人も本能的に危険を感じたのだろう後ろに大きく飛びのく。


ザ・ホープリッパーは、3人の追撃をせずに脚はその場で地に根を張るように踏みなおし、赤熱した両手の爪を大きく広げ手を後ろに引き絞る。


・・・!飛び道具か!?ポポロを守るべく刀を構える。


「――皆さん下がって下さい。」


月光のように輝く銀髪をきらめかせながら1人の女生徒が生徒たちの前へ躍り出る。


「――夜天に浮かぶ数多の星よ。安穏たる憩いを妨げんとする悪逆の徒から御民を守り給え・・」


星のきらめきを音にしたような声で詠唱を始める銀髪の女生徒。


だが間に合うのか?ザ・ホープリッパーの両腕は限界まで後ろに引き絞られ、すぐにでも生徒たちの命を奪わんとする攻撃が放たれようとしている。


「ジャッッッシャーーーーー!!!!!」


後ろに引き絞られた両腕を前で交差し、深紅の斬撃が飛ぶ。


「――我、月の巫女が命ず!泰平なる星空(エストレーヤヴェール)!!」


同時に女生徒が詠唱を終え魔法を発動させる。


即死級のダメージである事を本能的に感じさせるザ・ホープリッパーの斬撃は、女生徒が発動させた満点の星空を思い浮かばせる結界によって阻まれた。


「うおおーーー!!!!女神様・・・!!!」


「すげぇ・・・。」


「綺麗・・・。」


未だ死地である事に変わりは無いが、銀髪の女生徒が作り出した星空の結界内にいる生徒たちは思いがけず訪れた安寧の時に惚けている。


星空の結界の中には自称光の勇者であるクロード=アルヴェイユもちゃっかりと入っており、その表情は何故か自信に満ち溢れている。


「ギシェアーーー!!!!!」


渾身の一撃を阻まれたザ・ホープリッパーはさらに怒り、狂ったように両の爪をでたらめに振り回し、深紅の斬撃を乱射する。


一発の重みは力を貯めて放った初撃に比べれば軽そうだが数が多い。


銀髪の女生徒が作り出した星空の結界へと向かっていた斬撃はその全てがバリアに阻まれている。


エリスたちにも斬撃が殺到する。大剣や細剣で防いではいるが、少なからず被弾している。


斬撃はこちらにも唸りをあげて飛んでくる。俺は刀で斬撃を防ぎポポロへの被弾を阻む。何発か掠ったりするものもあったが大したダメージでは無かった。


しかし、ザ・ホープリッパーが作り出す斬撃の嵐はやむ気配が無い。


このまま続けば、エリスたちの被弾も増えてしまう。俺と違いそれなりにダメージは蓄積されてしまうはずだ。


それに銀髪の女生徒のMPも無限に続くわけではないだろう。


あの星空バリアが無くなった瞬間に大量の死者が出てしまうのは想像に難くない。


このままだとザ・ホープリッパーの斬撃乱舞がいつまで続くかと、エリスたちのHPと銀髪の女生徒のMPが尽きるのが早いかの耐久戦になってしまう。


俺なら被弾しながらでもザ・ホープリッパーを殺す事はできるが、この場を離れてしまってはポポロに斬撃が当たってしまう可能性がある。


くそっ!このままじゃジリ貧だ。どうすれば・・・。


「月の巫女よ!大義である!!!弱き者らを頼んだ!誰1人として死なすではないぞ!!」


俺が徐々にだが確実に近づく破滅の時を回避するべく頭の中で火花を散らしていると、クロードが声高に叫んだ。


お読み頂きありがとうございます!


もしも面白いと思ってもらえたら


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この2つを行ってくれると、執筆の励みになります!


頑張って面白い作品を書くので応援よろしくお願いします!


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