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仕事へのモチベーション、なし!

 彼女と盛り上がった翌日は、運悪く出社日だった。有給申請もしてなくて、渋々出社してみると、俺はいつにもまして強烈な眠気に襲われていた。今日は午後一から大事な見積会議がある。そこには最近口うるさく口出しをする役員まで出席してきて、あれは駄目だ、これは駄目だと駄目だしを行われることになっていることになっている。いや、なっているのかよ。


 というわけで、その大事な見積会議までに資料を一通り纏めなければならないのだが……果たしてこの資料、本来は俺が作る資料なのだろうか? そんな疑問は拭えなかった。役員にまで見せる都合上、午前中の内にこれを纏めなければならないし、ああ本当、嫌になる。


「先輩、なんだか目の下に隈ありますよ」


 パソコンに向かいああでもない、こうでもないと作業していると、後輩の七峰が隣から俺の顔を覗いてきた。


「ああ、昨日はちょっと寝れなくてな」


 彼女とよろしくやっていたとは言えなかった。異性相手に言うと、セクハラになるとかなんとか。本当、世知辛い世の中だ。特に最近は、どんなくだらない資料でも承認を取れだなんだと、口うるさいことに加えて、下っ端を縛り付けることで管理したと思っている上司が多くて嫌になる。


 これ、純度百パーセント、本気の愚痴だわ。


「へえ、何をしていたんですか?」


「ちょいと色々あってな。そんなこと聞いてどうするんだよ」


「先輩のことだから、どうせまた仕事したくないーとかなんとか言って枕を濡らしていたのかな、と思って。慰めてあげようと思ったんです」


「そりゃあありがとう。ただ間に合ってるから大丈夫だ」


 何せ、俺には彼女がいるからな。それも金持ちの! 相変わらず、邪な感情で語ってしまった……。


「ふーん」


 興味なさげに、七峰は言った。


「まあいいや。先輩、加工区から部品のデータ上がってきたんですけど、これ大丈夫ですかね?」


「大丈夫大丈夫。流せ流せー」


「……先輩、そんなに言うんじゃ先輩の判子押してくださいよ」


「そんなことしたら、どやされるのはお前だぞ?」


「先輩も一緒に、ですけどね」


「俺はどうでもいい。どうせもうすぐ会社辞めるしな」


 俺はパソコンに向かったまま、笑った。


「……先輩、先輩の同期より下の後輩から、先輩なんて言われているか知っています?」


「天才?」


「違います。自惚れないでください。オオカミ少年ですよ」


「つまり?」


「先輩、どうやら一年目からずっと辞めたいと周囲に漏らしていたそうで」


「そうだな。いやあ、中々踏ん切りがつかなくて」


「先輩が会社辞める、というのは、最早冗談と周囲から受け止められています。故に、オオカミ少年です」


「なるほどねー」


 まあ確かに。辞めたくはあっても中々踏ん切りがつかず、気付けば四十人近くいた同期が半分くらいになったというのに、俺はまだこうしてこの会社の制服に袖を通している。

 周囲から見れば、俺が辞めたいと愚痴をこぼすのは最早冗談と思ってもなんら不思議ではない。


 だけど、今回ばかりはな……。


「先輩、さっき管理の人から電話来てましたよ」


「なんだって?」


「そろそろ試作をやるモデルの部品の進捗状況を聞きたいそうです」


「ふーん。じゃあ、自分で確認しろって言っとくわ。部品の日程管理は俺の仕事じゃないし」


 そういって、画面を操作してメールを書いて、俺は送信した。


「うわっ、先輩本当に送ったんですか?」


 メールの宛先には七峰も入っていたらしい。少しだけ呆れた声が返ってきた。


「何か問題でも?」


「だって……この人、凄い口うるさいじゃないですか。あとで大目玉食らいますよ」


「だったら、その時には会社を辞めるよ」


 だって、会社を辞めても彼女の専業主夫になれば万事解決するし。


「先輩、なんだか開き直り始めましたね」


「そう? じゃあ七峰、俺のフォローを借りずに、一人で上司説得してこいよ」


「えー? 助けてくださいよー」


 嫌そうに喚く七峰を見て、俺は笑った。

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