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Rev.ノブナカ  作者: わたぼうし
【1章】呪われた者達
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【9話】メルギドの町

焼き魚をお腹いっぱい食べたノブナガ達は焚き火を囲んで談笑していた。


「ティアよ、お主は初めて魚を食べたのか?」

ノブナガは、ティアが泣きながら「美味しい… 美味しい…」と焼き魚を食べるので、まさかとは思いながらも聞いていた。


「はい、生まれて初めて魚を食べました。こんなに美味しいなんて知りませんでした…」

ティアは食べ終わった魚を見て、幸せそうな顔をしていた。


「なぜじゃ? 川にはこんなにも魚がおるというのに…」


「あたし達、獣人はヒト様と同じ物を食べてはいけないのです。 ですから、カエルや野ネズミ、バッタ等を捕まえて食べているのです」

ティアは寂しそうな顔で笑っていた。


「なぜじゃ? なぜヒトと同じ物を食ってはダメなのじゃ? ん?そういえば、お主は常に我らより川下に行くの。 それも何かあるのか?」


「え? はぁ、あたし達、獣人はヒト様よりも下に居なければなりません。 川の近くなら川下、風が吹けば風下へ。 食べる物も、ヒト様が食べない物を食べなければいけないのです。 って、ご存知ないのですか?」

ティアは不思議そうにノブナガの顔を見る。


「知らん。 と、言うよりなんだそれは。誰が決めたのじゃ。 聞いているだけて腹立たしい」

ノブナガはイライラしながら、ティアの話を聞いていた。


「ふふふ、変わったヒト様も居るもんですね…」

ティアが笑っていると


「ティア。 ワシは『ヒト様』ではない。『ノブナガ』じゃ。何度言えばわかる。 ワシをその辺の奴らと一緒にするでない!」

ノブナガがキッとティアを睨むと


「も… 申し訳ありません… しかし、なんとお呼びすれば…」

ティアは正座し、額を地面に擦り付けていた。


「ティア! それもやめろ! ワシの事はノブナガと呼べ。そして、そいつはミツヒデと呼ぶのじゃ。 ワシはお主と仲良くしたいのじゃ。 …そんな悲しい事をするな」

ノブナガは寂しそうな顔をしながら、ティアの頭を上げさせていた。


「ティア殿、どうかノブナガさまのお気持ちをお察しください。 そして、もしよろしければ我らを友とお呼びください」

ミツヒデはニコッとティアに笑いかける。


「よ… よろしいのでしょうか? あたしは獣人なのに…」


「かまわぬ。 ヒトだろうが、獣人だろうが同じ民であろう。それにワシはこの町の人間より、お主の方が好きじゃ」


「左様でごさいますな。 わたしもどうもこの町のヒトには好感が持てませぬ…」

ミツヒデもウンウンと頷く。


「あ… ありがとうございます… あたし、そんな事言われたことありませんでしたので、なんとお返事してよいのか…」

ティアが困っていると


「ティア、ワシらは友じゃ。 だから、ワシの事はノブナガ、こいつはミツヒデと呼べばいい」

ノブナガはニコッと笑うと、ティアの横に座り


「ほれ、これで(かみ)だの、(しも)だの関係ない。 我らは()()じゃ」

ティアの頭をくしゃくしゃと撫でていた。


ティアは一瞬、驚いた顔をして

「あ… ありがとう… ノブナガ、ミツヒデ」

小さな声でそう言うと、俯き泣いていた。


「ほんに、ティアはよく泣くヤツじゃの」

「左様でごさいますなぁ」

ノブナガとミツヒデはティアを挟むように座り、肩を抱いて笑っていた。



ノブナガは、しばらくしてティアが落ち着いたをの見計らうと

「ティア、この町や国の事を教えてくれ。 最初に言ったが、ワシらはこの国を知らんのだ」


「はい、この町はヒト様の町で『メルギドの町』と言います。 ここに来るまでにご覧になったと思いますが、この町は街道を通るヒト様達の宿場町で、たくさんのヒト様が生活しております」

ティアは話しをしながら、ソワソワしていた。


「宿場町か… なるほど、だからこんなにも賑やかな町なのか… ところで、ティア。どうした?さっきからソワソワしておるようじゃが?」


「も… 申し訳ありません。ここはヒト様の町ですので… ちょっと…」

ティアが申し訳なさそうにしていると


「ノブナガさま、ティア殿は獣人です。先程の話しで分かりますように、我らとこの様に話しているとティア殿が非難を受けてしまいます。 どこか場所を変えた方がよろしいのでは?」


「そうか、それは気が付かず悪い事をした。すまぬ」

ノブナガがティアに頭を下げると


「そ! そ…そんな!! 頭を上げて下さい! ノブナガは悪くありません!」

ティアが慌ててノブナガの頭を上げさせようとしていた。


「そうじゃ!ティア。 よかったらお主の住む村へ案内してくれんか? 先程獲れた魚もたくさん余っておる。 この魚をお主の薪代として持っていこう。 そしてお主の村の者にも魚を食わせてやろうではないか!」

ノブナガはポンと手を叩き、立ち上がるとさっそく魚を集め始めた。


「おぉ、それは名案でごさいますな! 先程、ティア殿も村のみんなにも食べさせてやりたいと申しておりましたしな!」

ミツヒデも魚を集め、近くにあった大きめの葉にくるみ始めた。


「え? え?? あたしの村に… ですか?」

ティアがオロオロしていると、


「ほれ、早く準備せんか! 日が暮れてしまうではないか!」

ノブナガは移動する準備を始め、ミツヒデは魚をまとめて抱えていた。


「ティア殿、ノブナガさまは言い出したら聞きませんよ。 諦めて村に案内してください」

ミツヒデは笑いながらティアを急かせる。


「あ… はい…」

ティアは少し困った顔をしながら、ノブナガ達をティアの村に案内することにした。

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