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Rev.ノブナカ  作者: わたぼうし
【2章】幻の獣王国
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【43話】理想と現実

キシュリは頭を垂れて涙を流し、ミツヒデとティアは役目を与えられてやる気に満ちていた。


そんな中、ひとり取り残された人物がいた。

アネッサだ。


アネッサは、少しだけキョロキョロするとノブナガに近づく。


「あのー… ノブナガさん? わたしは?」

アネッサの声にノブナガが反応し、『居たのか』とでも言いたそうな目でアネッサを見る。


「ちょっと!! なによ!その目は!」

アネッサがムキーと怒り出すと、ノブナガは「ぷーっ」と吹き出して大笑いする。


「あははは、アネッサ。冗談じゃ。 お主を揶揄うと本当に面白い反応するのぉ」

ノブナガは膝を叩きながら爆笑していた。


「ちょっ! ノブナガ!」

アネッサはノブナガがあまりにも爆笑するので、毒気を抜かれて「もうっ!」と頬を膨らませて、苦笑いを浮かべるしか出来なかった。


「アネッサ、お主はワシと王都へ行く。 メルギドの方はミツヒデに任せておけばよかろう。 数日後、ヤールガ団長ら騎士団は王都へ帰還するそうだ。 ワシらはそれについて王都に向かうとしよう」


「王都へ?」

アネッサは不思議そうにノブナガを見ていた。

それは当然だろう。さっきまでメルギドで国を興すと言っていたのに、ノブナガは王都に向かうと言うのだから。


「あぁ。 これから事を構えることになるだろう相手じゃ。 一度、自分の目で見ておきたいのじゃ」


「う… ん。 それは分かる。分かるけど、どうしてわたし? わたしはティアさんと一緒に居たいんだけど?」

元々アネッサはティアに付いて来ただけなのだ。

そもそもリッチとは、あるモノ(それが人なのか、魔法なのか、はたまた場所なのかは個人によるが…)に強く執着する。

アネッサは一人息子のリヌの為にリッチになった経緯がある。

そのリヌが居なくなってしまったアネッサが次に選んだのが月女族であり、自分の娘として愛する(執着する)ようになったのだ。


ハーゼ村に月女族(娘たち)を置いて来たのは、村にはナープールとポテカという下僕がいるからだ。

下僕を村に残す事で、月女族(娘たち)がケガをしても助ける事ができる。ナープールもポテカもアネッサの恐ろしさを知っているので、何よりも優先して月女族を助けるだろう。

それを理解していたから、アネッサは一番ケガをし易く、治療が遅くなる可能性があるティアについて来たのだ。


「うむ。 ワシはこの国の知識が足りん。じゃから、この国をよく知る者が必要じゃ。 今、分かっているのはこの国ではヒト以外の人間では自由に行動する事すらできんということじゃ。 なれば、この中で知識があり、自由に動ける者と言うと…… アネッサ、お主しかおらんのじゃ」

ノブナガは(屍でも、見た目がヒトなら問題あるまい…)と考えるが声には出さない。


「うー……ん。  まぁ、たしかにそうだけど…」

ティアと離れるのがイヤそうなアネッサを見て、ミツヒデが微笑みながら声をかける。


「アネッサ殿。 ティア殿はわたしが付いていますので、ご安心ください。 アネッサ殿も、ルートハイム家の事を調べるには王都へ行ったほうが良いとおっしゃっていたじゃありませんか。 わたしたちはハーゼ村で準備をしておきますので、アネッサ殿はご自分の家の事にケリをつけて心置きなくハーゼ村へ帰って来たらどうですか?」

ミツヒデの言葉にアネッサは、ぶつぶつと独り言を言いながら考え、


「そうね。 いろいろ気にしながらハーゼ村に帰ってもモヤモヤするだけだし… わかったわ。わたしはノブナガと王都に行ってくる」

アネッサはそう言うと、ティアを抱きしめる。


「ティアさん、ごめんなさい。 少しだけ行ってくるね」



「はい、巫女さま。 あたしは月女族のみんなとハーゼ村で巫女さまを待ってますね」

ティアはニコっと笑って、アネッサを抱きしめていた。


「うむ。ならば、後の事はミツヒデに任せる」


「はっ」

ミツヒデが膝をついて頭を下げていると、ティアが声を上げる。


「あ… あのさ、ノブナガ」


「なんじゃ?」


「あたしたち月女族は素直にノブナガに従うけど、メルギドのヒト達はどうなんだろ? そりゃ、あの事件の後からあたし達は仲良くなったけど、それは隣人として仲が良くなっただけだと思うの。 でも、今回は国を興す… つまり、王国と戦争するって事よね? そんな事、ソレメル町長や町のヒト達が認めるかな?」

ティアは不安そうにノブナガを見る。

それは当然の疑問だろう。 町のヒト達は、獣人と違い何不自由なく生きてきたのだ。(全く何も問題なく…とはいかないが、生きるには問題は無かっただろう)


それが、ある日突然、王国にとっては反逆者となるわけなのだから…

普通は平穏に、争いなく生きていたいと思うものだ。


「ふむ。 それについては多少努力が必要じゃろうな。 まずはソレメルを説得し、続いて町のヒトじゃ。 じゃがな、まるっきり勝ち目が無いわけではない。 ソレメルは言っていた。 ヒトと獣人は手を取り合って生きていくべきなのじゃと」

ソレメル町長はあの事件の後、確かにそう言っていた。

もともと、アクロチェア王国の国王が『ヒト至上主義』を唱える前はヒトも獣人も協力して生きていた歴史がある。

月女族もそうだ。 ティアのご先祖さまはかなりの力を持っておりメルギドの町を守る仕事をしていたくらいなのだ。

その頃のヒトと獣人の関係は良好だったと言えるだろう。

しかし、ヒトとは上(この場合は国王)が変わり、住む環境が変わると悪にも善にも容易く変わる。

それが『ヒト』という動物なのだから、仕方ないと言えば仕方のないことなのかもしれない。


だが、ヒトとは歴史を重んじる傾向もあるのは確かだ。

ソレメル町長は歴史を正しく知っており、ヒトと獣人の関係が良好だった頃の方が理想的だと考えているようだった。


ならば、ソレメル町長にとってノブナガの考え方は受け入れ易いものであろう。


そして、現在、メルギドの町ではヒトと獣人である月女族が協力して暮らしている。


それに、そもそもメルギドで月女族が虐げられていたキッカケは国王の『ヒト至上主義』に加え、アネッサに取り憑いていたフルークの『呪い』もあったからだ。

その『呪い』が解けた今なら、ソレメル町長だけでなく、メルギドの町の人々も『ヒト至上主義』が間違っていると声に出さなくても考えている者が多い…

と、ノブナガは考えていた。


「あとは、大義名分じゃな」

ノブナガは手をアゴにあて、ふむ… と考えていた。

現実を再確認したノブナガ。

あとは『大義名分』だが…

ノブナガが出した結論とは


次回 大義名分


ぜひご覧ください。

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