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Rev.ノブナカ  作者: わたぼうし
【2章】幻の獣王国
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【29話】ロア・マナフ降臨

「ボクはこの世の神なんだって理解してる? 今までも何人かご招待した事あるけど、ノブナガさんくらいだよ? こんなに強引に呼び出したりするのは…」

ロアはぶちぶち文句を言いながら、まだ気怠そうにしている。


「まぁ? 強引なのもキライじゃないけどさ?」

ロアはチラッとノブナガの顔を見ながら、頬を膨らませていた。


「ロ… ロ… ロア・マナフ… さま?」

ティアやアネッサ、騎士たちは突然現れた『神:ロア・マナフ』に慄き、混乱していた。

が、すぐに騎士たちは膝を着き頭を垂れる。

それを見て、ティアやアネッサ、獣人たちも膝を着き頭を垂れ、ロアに平伏していた。

なかには祈りを捧げる者も現れ、その場は騒然とし始めていた。



「見て! これが普通なんだよ?」


「お主が神だろうが、人外だろうがワシには関係ない。 それより、お主はこの男を治せるのか?」

ノブナガはロアの言葉を一切聞かずに、話しを進める。


「もう!  ん? この男を? 」

ロアはチラッとザスサールを見ると、意外そうな顔でノブナガを見ていた。


「そうじゃ」

ノブナガは無愛想に答えると


「んー、前にも言ったけど、ボクはこの世の神なんだ。 だから全てのものに平等でなければならない。 ボクがこの男を助けると、生まれるはずだったモノが生まれなくなる。 だから、ゴメン。ムリだよ」

ロアは「ゴメン」と言いながら、全く悪びれることも無くザスサールを助ける事を拒否する。


「うむ。 ならば仕方ない」

ノブナガが無表情で答えると


「ノフナガさん、この男を助けたかったの?」

ロアは不思議そうに、首を傾げながら聞いてきた。


「いや、そうではない。 この男の運命を試してみただけじゃ。 結果、この男はここで死ぬ運命だっただけの事」

ノブナガの表情からは、なにも感じ取ることが出来なかった。


「ふーん…」

ロアが興味もなさそうに男を見ていると、ザスサールが掠れた声で話しかけてきた。


「ロア・マナフさま。 …わたしは、十分生きました… ふぅ… ここで死ぬ事も… 分かっています。 はぁ… 願わくば… カニアの下に… いえ、なんでもありません… ロア・マナフさまの… お声を聞けて幸せでした」

ザスサールはそう言うと、息を引き取った。


「「ザ… ザスサール!!」」

カーテらは叫び、ザスサールに駆け寄る。

冷たくなっていくザスサールを半獣人たちは囲み、泣きながら最後を看取っていた。


ザスサールと半獣人達の最後の別れを、ティアや騎士たちは優しく見守っていると、ロアがザスサールに近づき手をかざした。



すると、ザスサールから淡い光が溢れ、体が少し透けてケガも無い若い頃のザスサールになる。


「え? これは?」

若いザスサールは自分の体を見て戸惑っていると、


「ザスサールさぁん、特別だよ?」

ロアがそう言うと、ザスサールの前に淡い光が集まりました。

光はだんだん人の形になり、色が付いてくる。

しばらくすると、それは頭にたれ耳がついて、ゴールデンレトリバーのようなふわふわの尻尾が生えた女になった。


「…カニア? カニア!!」

カーテら半獣人たちは、たれ耳の女をカニアと呼び驚いていた。


「ふふ、みんな久しぶり」

カニアはカーテたちにニコっと笑い、小さく手を振って挨拶するとザスサールの方に向いた。


「ザスサール… 無茶ばかりして…」

カニアは少し悲しそうに笑う。


「…すまん」

ザスサールは俯いていた。


「でも、ありがと。 わたしの為に、あなたは生きてくれたのね。 本当はもっと生きていて欲しかったけど… これからは、わたしと一緒に過ごしましょう」

カニアが笑い、ザスサールの手を取る。


「え? でも、オレは…」

ザスサールが戸惑っていると、ロアが口を挟んだ。


「ザスサールさぁん。 だからぁ、『特別』だよ?」

ニコっと笑うロア。


「あ… あ、ありがとう… ありがとうございます!!ロア・マナフさま! 本当に、ありがとう…」

ザスサールはロアの足元で泣き崩れてしまった。

そんなザスサールをカニアは優しく撫で続けた。


「次、生まれてきても2人仲良く過ごすんだよ」

ロアはザスサールとカニアを見て、微笑んでいた。


「「ロア・マナフさま、ありがとうございました」」

ザスサールとカニアが深くお辞儀していると、2人の体が光の粒になって消えていってしまった。


「よかった…」

カーテはボソっと呟き、いつまでもザスサール達を見送っていた。



「あ… あ、あ… あの… ロアさま?」

ティアは恐る恐る声をかける。


「ん? 君は… ティア・ウル・ステラリアさんだね? なに?」


「え? あ… あたしの名前… ご存知なのですか?」

まさか神さまが自分の名前を知っているなんて思いもしなかったティアは、驚きと感動で体を震わせていた。


「もちろんだよ。 ボクは神さまなんだからね。この世界で生きているモノは全て把握しているよ」

ロアがドヤ顔で答えていると、周りに集まっている騎士や獣人たちから響めきが出てくる。


「あははは ウソだよ。そんな訳ないじゃない。ボクはそこまでヒマじゃないさ。 ノブナガさんの隣でウロチョロしてたから覚えただけだよ」

ロアは無意識に人をバカにするタイプだった。


「う… うろちょろ…」

ティアが感動の絶頂から、一気に叩き落とされて凹んでいると、アネッサがノブナガの横にやってきていた。


「あ… あんた! なんでロア・マナフさまと普通に話してるのよ!? て、いうか、あんた何者?」

アネッサはロアに聞こえないように小声でノブナガを責め立てる。


「む? ワシはノブナガじゃ。 お主らが言うところのヒト種族じゃ」

ノブナガが無愛想に答えていると


「ちっがうわよ! そんな事じゃなくて! どうしてあんたがロアさまを呼び出したりしてるのよ!? 巫女のわたしですら初めてお顔を見たっていうのに! どうして、あんたがロアさまと普通に話しているのか?って聞いてるの!」

アネッサは、つい大声でノブナガを問い詰めていると、ロアが「まぁまぁ」と気軽に話しかけてきた。


「そうだね、みんなビックリしたよね? まぁ、ボクが言うのもなんだけど… ほら、ボクってカワイイし?」

ロアが照れながら話していると、


「ロア、お主は珍妙な格好をした人外じゃぞ。大丈夫か?」

ノブナガは、可哀想な子を見るような目でロアを見ていた。


「ちょっ!! ノブナガさん? こんなカワイイ子、他にいないよ?」


「ほぅ? お主… 大丈夫か?」


「むきーーー!」

ロアは顔を真っ赤にして地団駄を踏む。

周りにいるティアやアネッサ、ヤールガなどはハラハラしながら2人のやりとりを見ていた。


「ふぅ、まぁ、いいわ。 とりあえず、みんな集まって!」

ロアは気を落ち着かせて、全員を近くに集める。


「みんな、そこに座って」

ロアの指示に従い、ティア達はその場に座っていた。

ノブナガとミツヒデは、座る事なくロアが何を始めるのか黙って見ていた。


「もう、ノブナガさん達は…」

ロアは軽くため息を吐いてから、周りに座らせたティア達をクルリと見ると、額の赤い目を輝かせ全員を赤い光の世界に誘う。


「え? なに?」

ティア達が戸惑っていると、そのまま気を失ってしまった。


「お主、何をしたのじゃ?」

その場で立っているのは、ロアとノブナガ、ミツヒデの3人だけだった。


「みんなの記憶からボクの姿を消したんだよ。 このままだと、後々めんどくさいでしょ?」

ロアは、ふんっと鼻から息を吐く。


「ふむ… そうなのか?」

ノブナガが興味も無さそうにしていると


「そうなの! めんどくさいの!」

ロアは頬を膨らませて、ノブナガを睨んでいた。


「まぁ、そう怒るな」

ははははと、笑うノブナガにロアは『やれやれ…』と軽く頭を振り


「そうだ。ノブナガさん、ボクの分身体を置いていくよ。 用事があればボクの分身体に言ってくれる? こんな場所に呼ばれたら、みんなの記憶を毎回消さなきゃいけなくなるからね」

ロアはそう言うと、手のひらに文鳥ほどのサイズの黒い小鳥を出した。

黒い小鳥はロアと同じように目が3つあり、宝石のように赤く輝いていた。


「その小鳥はボクの分身体だよ。 名前は… そうだね、マナフから取って『マナ』としよう」

小鳥の『マナ』はパタパタと飛び、ノブナガの肩にとまる。


「それじゃ、ボクは帰るよ? 今度からはマナに声をかけてね」


「ふむ、わかった」

ノブナガの返事を聞いたロアは、「それじゃ、バイバイ」と笑いながら手を振って、来た時と同じように空間を歪ませて消えてしまった。


「マナ……か。 やはり、あやつは悪趣味じゃな…」

ノブナガは黒い小鳥『マナ』を見ながら呟いていた。

ロアに眠らされたティアが目を覚ますと、ノブナガとミツヒデは死者を弔っていた。

そしてアネッサも目覚め…



次回 弔い


ぜひご覧下さい。

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