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Rev.ノブナカ  作者: わたぼうし
【2章】幻の獣王国
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【28話】残された言葉と残した言葉

ノブナガの手によって倒されたフルークは、天を仰ぐように倒れ… 消え去った。あとにはザスサールだけが残されていた。


ザスサールは後ろ手に縛られ、戦士たちに武器を突きつけられていた。

ザスサールの胸からは血が溢れ、顔は大火傷を負ったように爛れており、元の顔も判らないような状態だった。


ヤールガはノブナガをチラッと見て

「ノブナガ殿…」

と、今回の勝利者であるノブナガに生殺与奪を預ける。


「うむ。 ミツヒデ!」


「はっ ここに」

ミツヒデはノブナガの横で膝を着き頭を下げていた。


「やれ」

ノブナガが短く命令すると、ミツヒデは刀を抜いて、ゆっくりとフルークに近づいて行った。


「待って!」

その時、ティアの叫びがミツヒデの足を止めた。


「何事じゃ?」

ノブナガはティアを睨むように見ると、ミツヒデに待機するように合図を出していた。



「ねぇ、ノブナガ。 ザスサールを助ける事はできないかな?」

ティアは少し俯きながら、上目遣いでノブナガを見ていた。

その時、遠巻きに見ていたカーテら半獣人たちがノブナガの前に走ってきて全員が土下座し、カーテが叫ぶようにノブナガに懇願してきた。


「ノブナガ… いや、ノブナガさま! 手前勝手な願いだと分かっていますが、なんとかザスサールを助けてください! お願いです! ザスサールを助けてやって下さい! お願いします!!」

カーテは額を地面に擦り付けて、ザスサールの命を助けて欲しいと願い出ていた。カーテの背後では、他の半獣人たちが同じように頭を下げている。


「ノブナガ…」

ティアはノブナガの顔色を伺うように、答えを待っていた。


「ふむ…」

ノブナガは少しだけ間を空けると、言葉を続ける。


「お主らは、ザスサールに生き恥を晒せ… と申しておるのか?」

ノブナガはチラリとカーテを見ると、カーテは更に頭を下げて答える。


「ノブナガさま。 確かにザスサールは戦いに敗れました。ですが、それはあのフルークに操られていたからなのです。 本当のザスサールは戦いを嫌い、惚れた女と町を逃げ出すようなヤツなんです。 ですから、今回の戦いもザスサールが望んだ事ではなく…」

必死でザスサールを弁護しようするカーテを、ノブナガは手を前に出して止めた。


「カーテよ。 どのような理由があろうともザスサールはワシに刃を向けたのじゃ。 これはワシとザスサールと(いくさ)じゃ。 そして、この(いくさ)で勝ったのは…ワシじゃ」


「そ… そこをなんとか…」

カーテにはザスサールを弁護できる言葉が出なかった。 これは『戦い(たたかい)』で、ザスサールは『負けた』のだ。残された言葉は、ただの『命乞い』でしかないのだ。カーテはそれを十分理解していた。

カーテは言葉が出ず、拳を握り締めるしか出来なかった。



「ふむ…」

ノブナガは、ドカっと座るとアゴに手を当てながらカーテたち半獣人たちの顔を見渡していた。

ただひたすらに頭を下げ続けるカーテたちに、ノブナガは声をかけた。


「…お主らはどうしてザスサールの為に、そこまでするのじゃ? お主らはコヤツに操られ、戦わされ、死人も出ておるじゃろう。 なぜじゃ?」

ノブナガの問いに、半獣人たちはしばらく沈黙していたが、カーテが口を開いた。


「オレたちは確かにザスサールに操られていた。でも、それ以上に助けられていたんだ。 オレたちはみんな町で生きていけない半端者だ。 そんなオレたちに生きる場所と、目的を与えてくれたのがザスサールだったんだ。 オレたちはザスサールが… いや、ザスサールとカニアが居たから、今まで生きてくる事ができたんだ…」

カーテは涙を零しながら話していた。


「カニア…?」


「あぁ、ザスサールの恋人だった。 獣人解放軍のリーダー、ノグロイに殺されたんだ…」


「なるほど… それでザスサールのやつは、悪魔… いや、フルークに目をつけられたのか」

ノブナガの頭の中で、全ての点が繋がった。


「頼む! ノブナガ! ザスサールを助けてくれ! オレたちに出来る事ならなんでもする! お願いだ… ザスサールの命を、助けてくれ…」

カーテが何度も地面に叩きつけるように頭を下げて、ザスサールの『命乞い』を続けていた。

その時、ザスサールが掠れた声を出した。


「その声は… カーテか?」


「ザスサール! 気がついたのか!?」

カーテはバッとザスサールの方に振り向く。


「あぁ… はぁ… ノブナガ。 オレは満足だ。 こんな… いい仲間達と過ごせたんだから… はぁ… それに… カニアの仇は取った。 はぁ… もう十分だ…」

ザスサールは息も絶え絶えに言葉を紡ぐ。


「ザスサール… オレたちにはお前が必要なんだ。 なぁ、頼むよ。 オレたちを置いていかないでくれ」

カーテが涙声で訴えていると


「カーテ… みんなを頼む… オレはカニアの所に… はぁ… いや、ダメか… オレは殺し過ぎた… ふぅ… カニアの所にも逝けそうもないな…」

ザスサールは自嘲して、言葉を続ける。


「ノブナガ… コイツらを… 頼まれてくれないか? オレの… 最後の頼みだ」



「アネッサ!! 参れ!」

これまで黙って見ていたノブナガがアネッサを呼ぶ。


「あ、あんたねぇ。 もう少し年上を敬いなさい?」

アネッサはブツブツ文句を言いながらやって来た。


「アネッサ、コヤツの傷は治せるか?」


「は? 無視? …まぁ、いいわ。 見せてみなさい」

アネッサはノブナガに文句を言っても無駄だと悟り、ザスサールの傷を見る。


「……ムリね。 コイツの体の中はもう人間じゃないわ。 『悪魔の本』に侵食され過ぎてて、もう治らないわね」

アネッサはふるふると頭を横に振っていた。


「そ… そんな…」

カーテは唇を噛み、涙を堪えている。


「そうか。ならば…」

ノブナガはスックと立ち上がり、空中を睨むと


「ロア!! ロアよ! 出て参れ!!」

突然、この世界の神『ロア・マナフ』に出てこいと叫びだした。

ティアやアネッサ、ヤールガをはじめ、騎士や戦士たち、獣人たちは驚いてノブナガを見ていた。


すると、空間がグニャリと歪み人影が現れる。

人影はだんだんと色を持ち、髪を肩辺りで切り揃え、ゴスロリ調の黒いワンピースを着た少女が現れた。

その目は宝石のように赤く輝いており、額に3つ目の目があった。


「ノブナガさぁん、ボクはこの世の神なんだって言ってるでしょ? そんな気安く呼ばないでよぉ」

そこには、この世の神『ロア・マナフ』が気怠そうに立っていた。

突然、ノブナガに呼ばれ目の前に現れた『神』ロア・マナフ。

混乱するティア達と、当たり前にロアと話をするノブナガ。


ノブナガの思惑に、気怠そうな『神』ロア・マナフは…?



次回 ロア・マナフ降臨


ぜひご覧ください。

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