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Rev.ノブナカ  作者: わたぼうし
【2章】幻の獣王国
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【23話】剛剣 龍牙斬

「ティア!! 今から本気でお主を斬る! 真正面からの斬撃じゃ! 死ぬ気で避けろ!」


ノブナガが放った龍牙斬とは、飛ぶ斬撃だった。

まるでノブナガから龍が放たれたような錯覚を覚えるその斬撃は容赦なくティアに襲いかかり、その牙はティアを噛み殺すには十分過ぎるほどの破壊力を秘めていた。


「っ!!!」

ティアはその圧倒的な力に短剣での防御は無意味だと悟り、全力で回避を試みた… が、龍の牙はティアの右腕を噛みちぎった。


「ゔぁぁぁあぁああああああ!」

空高く舞い上がったティアの右腕は、クルクルと回りながら弧を描いて落ちてくる。

ティアは叫びながら右肩から吹き出す血を止めようと、左手で押さえるが吹き出す血の勢いが強く押さえきれない。


「ティアさん!!!」

アネッサはオオカミゾンビを全力で走らせ、あっという間にティアの隣に着くと治癒魔法で止血を試みる。


「はぁ、はぁ、はぁ さっきの絶対領域もおかしかったが、龍牙斬の威力もデタラメな程に強くなっておる…」

ノブナガは肩で息をしながら、あまりにも威力が増した自分の斬撃に驚いていた。


「ティアさん! ティアさん!! がんばって!もう少しだから! わたしが必ず助けるから! ティアさん、諦めないで!」

なかなか血が止まらず、ティアの顔色が青白くなっていく。アネッサはティアを抱きしめながら必死で治癒魔法をかけ続けている。


ノブナガは斬り飛ばしたティアの右腕を拾い、アネッサの下へやってくると


「ティア、よく躱した」

それだけ言ってアネッサに右腕を渡し、ティアの首から紫色の結晶を引きちぎった。


アネッサは渡された右腕を傷口に当て、さらに治癒魔法をかける。治癒魔法による癒しの光がティアの右肩を温かく包み込み、やがて右腕は何事も無かったかのようにソコに付いていた。

右腕も治りティアの顔色はだんだんと血色を取り戻し、呼吸も穏やかになってきた。


「何度見ても、アネッサの治癒魔法はスゴいもんじゃな…」

ノブナガは手をアゴに当てながら、自分が斬り飛ばしたティアの右肩を繁々と見ていた。


「ふぅ… もう大丈夫。 って、ノブナガ! あんたやり過ぎよ! もしティアさんが避けきれなかったら即死よ!? 流石のわたしも死んでしまったら治癒出来ないんだからね!」


「いや、すまん。ワシもあんな事になるなんて思いもしなかったのじゃ」

ノブナガの感覚では先程の龍牙斬の威力は、ノブナガが使ってきた龍牙斬の5倍くらい強くなっていた。


「あんたね… 自分の技の威力くらい把握しておきなさいよ!」

アネッサはまだ起きないティアを膝枕し、頭を撫でながらノブナガに文句を言い続けていた。


「ノブナガさま、戻りました」

その時、ミツヒデがノブナガの下に帰ってきた。


「ミツヒデか。 首尾はどうじゃ?」


「はっ。 獣人、ヒト、それに半獣人たちも戦を止めております。 この戦場(いくさば)にもう戦える者はおりませぬ」

ミツヒデはノブナガの横で膝を着き、頭を下げて報告していた。


辺りを見ると、獣人もヒトも戦いを止めており、半獣人たちはその場に座り込んで自分の身体を抱きしめている者や、顔を塞いで泣いている者、気を失い倒れている者などばかりで、全員が戦意を喪失していた。


「大義であった。 あとは、アヤツだけか」

ノブナガは納刀し丘の上を睨むように見る。

そこにはザスサールがひとり立っており、ワナワナと震えながらノブナガを睨んでいた。


「ところでミツヒデ。 カーテ等、半獣人たちもティアと同じ結晶を付けていたのか?」


「はい、全員が同じモノを首から下げておりましたので、全てこちらに集めて参りました」

ミツヒデは半獣人たちから集めた紫色の結晶が付いたネックレスをノブナガに見せる。


「なるほど、やはりこやつらも操られていた… と、言うことか」


「左様でごさいます。こやつら、この首飾りを外した途端に正気を取り戻したようで、その場で泣き崩れる者や、呆然と自分の手を見たりしておりました」


「ふむ。 その元凶があそこにいるザスサール…」

ノブナガは丘の上のザスサールをチラっと見てから、ミツヒデが持ってきた紫色の結晶に手を伸ばした。


その時、紫色の結晶は急に色を無くし崩れてしまった。


「なんじゃ!?」

慌ててティアから引きちぎった結晶を見ると、同じように色を無くし崩れている。


「これは!?」

ミツヒデが持ってきたネックレスは、結晶が無くなりチェーンだけになっている。

その時、丘の上で光が反射するのが目に入った。

ノブナガとミツヒデが丘の上にいるザスサールを見ると、ザスサールは両手で何かを持ち頭上に掲げていた。

その何かが太陽の光を反射していたのだ。


「う… うん… あれ? 巫女さま?」

アネッサの膝枕で寝ていたティアが目を覚ました。


「ティアさん! わたしが分かる? 大丈夫? どこか痛い所はない?」

アネッサは立て続けに質問すると


「え? あ、はい。大丈夫です。 あたし…?」


「ティア、ワシじゃ。 ノブナガじゃ。分かるか?」

ノブナガもティアを見ながら声をかけた。


「は? 何言ってるの? ノブナガでしょ?分かるに決まって………」

ティアはそこまて言って、手で口を抑える。


「どうしたのじゃ?」

心配そうにみんながティアを見ていると


「あたし… ノブナガと戦ってた… 獣人の人を、町のヒトを……… 殺した……」

ティアはカタカタと小さく震え、自分の両肩を抱き締める。


「大丈夫。 ティアさんは悪くないわ」

アネッサは震えるティアを優しく抱きしめ囁く。


「あ… あ…たし… なんて事を…」

ポロポロと大粒の涙を流し、アネッサの胸の中で声を殺して泣くティア。


「大丈夫よ…」

そんなティアを聖母のような目でアネッサは見つめながら、ティアを抱きしめていた。



「ティア、後悔は後にするのじゃ。 どうやらザスサールのやつ、本気になったようじゃ」

ノブナガはザスサールを睨みながら抜刀していた。

ティアを無事助けることに成功したノブナガ。

ザスサールは自問しながら、ある答えを見つけるが…

その答えは実現しなかった。


次回 哀れな男


ぜひご覧ください

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