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Rev.ノブナカ  作者: わたぼうし
【1章】呪われた者達
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【6話】ウサギ

「ミツヒデ… ワシらは騙されたのか?」

ノブナガとミツヒデは街道をロアが指差した方向へ歩いていた。

街道沿いで目が覚めた時は、太陽が登って少し時間が経ったくらいだった。

それが今は太陽が頭の上を通り過ぎて、かなり時間が経過していたのだ。


「おやか… んん。 ノブナガさま。とりあえずもう少し歩いてみましょう。 ここまで来て引き返すわけにもいきますまい…」


「確かにそうなのじゃが… せめて景色が変われば気分も変わるというのに… ずーーーーーーっと草原じゃ。 前を見ても、横を見ても、後ろを見ても草しかない! ワシはもう草は飽きたっ!」

ノブナガが、はぁと溜め息をついて項垂れると


「ノブナガさま、今暫くの辛抱でございますよ」

ミツヒデは苦笑いを浮かべていた。


「それにしてもミツヒデ。 お主、いつになったら慣れるのじゃ? ワシを呼ぶ度に、おやか…んん と言っておるの。ワシはヤカンか?」


ミツヒデは慌てて膝をつき、頭を下げると

「め… 滅相もこざらん! つい、クセでお館様と言いそうになってしまうのです…」

と、申し訳なさそうに説明する。


「はははは 冗談じゃ。 あまりに退屈じゃからからかっただけじゃ」

ノブナガは楽しそうに笑い、ミツヒデの手を引いて立たせると


「ノブナガさま… お戯れを…」

ミツヒデは苦笑いしながらノブナガを見ていた。


「さぁ、もう少し歩くか。  はぁ、煙草が飲みたいのぉ」

ブツブツ言いながらノブナガが歩き出し、ミツヒデが後を追うように歩き出した。



それからしばらく歩き続けると、遠くに畑や家が見えてきた。

「ノブナカさま、どうやら町に着いたようでございます」

ミツヒデは嬉しそうに指差して、疲れた顔から活気が溢れて出してきていた。


「おお! やっと着いたか!」

ワシらは自然と歩くスピードが上がり、あっという間に町の入り口に着いた。


そこは街道と交差するように川が流れており、川に沿うように家が広がっていた。その家を囲むように畑が広がっており、数人の人が畑仕事をしているようだった。


「とりあえず町の中へ行ってみるか」

街道をもう少し進むと町が広がっており、街道沿いに飲食店や物売りや宿屋が並び、たくさんの人が歩いて、呼び込みの声が響く活気溢れる町だった。

街道から少し外れると町の人達の住居が並び、路地裏では子供達が元気に走り回っている。


「ミツヒデよ。 なんと活気ある町じゃ。民もみな笑顔で幸せそうじゃ」

ノブナガはキョロキョロしながら街道を歩く。


「左様でございますな。まるで安土の町を思い出しますな」

ミツヒデもキョロキョロしながら楽しそうに歩いていた。


「おお! 美味そうな匂いがする!」

ノブナカが匂いに釣られて歩いていくと、露天が並んでおり肉を串に刺して焼いたり、パンがならんでいたり、魚が所狭しと並べられ威勢の良い声が響いていた。


「おお… 美味そうじゃのぉ」

フラフラと露天に近づいて行きそうなノブナガの手をミツヒデが引き止めると


「ノブナガさま、我らは銭を持っていません…」

ミツヒデは、フルフルと頭を振り溜め息をつく。


「そ… そうじゃった… くぅ、目の前にこんなにも美味そうな物が並んでおるのに…」

ワシは溢れそうなヨダレを堪えながら露天を睨みつけていた。


「申し訳ござらん… ノブナガさまにひもじい思いをさせるとは…」


「致し方あるまい。 ワシらは文無しなんじゃから…」

ノブナガが苦笑いしながら、ミツヒデの肩をボンボンと叩いていると



「邪魔だ! どけっ!」

と怒声と共に、カランカランカランと乾いた音が響き

「きゃっ  も… 申し訳ありません!!」

と女の声がした。



「ん? ミツヒデ、行くぞ」

ノブナガが音がした方へ行くと、恰幅のいい男が薪売りの女を蹴り飛ばし、通りの向こうへ歩いて行ってしまうところだった。

周りにはたくさんの人が歩いているが、だれも女を助けようともせず、まるで汚い物でも見るような目を向けていた。


ワシは慌てて女の下に駆け寄り、散らばった薪を拾い集めて手渡しながら「大丈夫か?」と声をかける。


「あ、ありがとうございます… すいません。大丈夫です…」

女がこちらを向いた。

女は17〜18歳くらいの若い女でさっきまで頭に被っていた布が蹴られた衝撃で外れており、その頭には白いウサギの耳が生えていた。


「お… お主… それは…?」

ワシがそのウサギの耳に目を奪われていると、女は頭の布が無いことに気がつき


「も… 申し訳ございません!! この様なモノを…!  ヒト様のお目を汚し、申し訳ございません!!」

女は大声で謝り、布を持つと逃げるように走って行ってしまった。

辺りには女が残した薪がいくつか散らばったままだった。


「な… なんじゃ?」

「なんでしょうか?」

ワシらかお互いに顔を見合わせていると


「あー、やだやだ。汚いモノを見ちまったよ…」

「はぁ、臭いったらありゃしない…」

などと文句を言いながら人が通り過ぎていった。


「なるほど… どの世界も弱者は虐げられているのだな…」

「左様でございますな。 あまり気のいいものではこざいませんな…」


ワシは散らばった薪を集めると、小脇に抱えて歩き出した。


「ノブナカさま、それをどうするおつもりてすか?」


「ん? あぁ、コレはおそらくあの女が売っていた物だろう。 女を見つけて返してやらねば、あの女も困るだろうと思ってな…」


ミツヒデは優しい顔で微笑むと

「左様ですな。 あっちへ走っていきましたので、とりあえずあっちへ行きましょう」


「そ、そうじゃな。 それにしても腹が減ったのぉ。 向こうに川が流れておったな。川の水で腹を満たすとするか」

ノブナガは早口でしゃべると、少し赤くなってソッポを向いてしまった。


「左様ですな。 ノブナガさま、その薪は私めが持ちます」


「それじゃ半分づつ持つこととするか」

ノブナガとミツヒデは薪を半分づつ持ち、女が走って行った方向にある川へ歩き始めた。

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