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Rev.ノブナカ  作者: わたぼうし
【2章】幻の獣王国
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【14話】タレコミ

町の入口付近は土煙が立ち込め、町のヒト達がパニックに陥っていた。

右に左に走り回りながら「自警団をよべ!!」と叫んでいる者、すでに町を捨てて逃げ出そうとしている者、どうしていいか分からず泣いている者もいた。


「この町にも自警団はいるのじゃろ?」

ノブナガ達は少し離れた場所から、町の人々の様子を伺っていた。


「ええ、もちろん居るはずよ。そろそろ来る頃じゃないかしら?」

アネッサは腕を組んで、ノブナガの隣に立っていた。


すると、町の奥から武装した男たちが駆けつけてくる。その数は約50人。獣人解放軍の1/10だった。


「なるほど。 あれじゃ、民達は逃げ出そうとするな」

ノブナガとミツヒデは、どう見ても勝ち目のない自警団を哀れみ目で見ていた。


「じゃが、逃げずに来た。天晴れじゃ」

「左様でございますね。 あの者達こそ、サムライでごさる」

ノブナガとミツヒデが自警団に感心していると、


「あれ? なんで?」

アネッサは自警団の後ろを見て驚きの声をあげる。

自警団の後ろから、馬に乗った騎士団が現れたのだ。騎士団の数は20。 さらに騎士団に追従するようにソードやバトルアックスを装備した戦士たち、その後ろにはローブを被り杖を持った魔法使いたちがいる。

総勢200人ほどの王国軍が現れた。


「な! なんじゃ!?」


「あれは、王国の騎士団? と、言うより軍隊よね…」

アネッサが目を丸くしている頃、さっきまでパニックに陥っていた町の人々は歓喜の声をあげていた。


「アクロチェア王国、万歳!!」

「騎士団さまー!! 不埒者を成敗してください!」



「アレはなんじゃ?」

ノブナガが歓喜する町の男を捕まえ話を聞くと


「あれは王国の騎士団だよ。 辺境の地を守ってくれるオレ達のヒーローさ」


「いや、なぜそんな騎士団がここに居るのじゃ?」

辺境の地を守る騎士団がウヨウヨいるなら話しは別だが、普通、いろんな場所に移動して民を守るものだろう。それが、このタイミングでここに居る。

まるで()()()()()()()()()()、ここに騎士団が… しかも、万全の体制でいるのだ。


(いくらなんでも、都合が良過ぎる…)

ノブナガでなくても、誰もがそう思うだろう。


「あぁ、実はタレコミがあったんだ」

ノブナガの後ろから、腰に短剣を携えた男が声をかけてきた。男は町の警備をしているらしく、騒ぎが起きた時、自警団へ連絡するのが主な仕事らしい。

男曰く、「オレが町を巡回しているから、自警団は有事に備えて英気を養う事ができるのさ」だ、そうだ。



「タレコミじゃと?」


「あぁ、そうだ。実はかなり前に町を出入りしている商人達から、獣人達が大量の武器を集めている。近いうちに行動を起こすかもしれない… とタレコミがあったんだ。 町長は自警団と相談し、王国へ応援要請をしていたのさ」

警備の男は、さも自分の手柄かのように自慢気に話していた。


(商人か… なるほど、獣人解放軍とやらが武器を集めるなら商人を介して手に入れるしかなかろうし、商人達もお互いに情報をやり取りしているはず… この男の言う事も合点がいくのぉ)

ノブナガは腕を組み、騎士団を見ながら考えていた。


「ところでお主、その商人とはいったいどのようなヤツか知っておるか?」

ノブナガは考えていた。この王国にも商人は沢山いるだろう。

だが、最近出会った商人が余りにも特徴的であり、最悪な別れ方をしたばかりだった。どうしても、商人と聞くと()()()を思い出してしまう。


「さぁ? 町を出入りする商人なんて多過ぎてわからないさ。ただ、聞いた話じゃ、その商人は日に焼けたかなりの色男らしいぞ」

男はポンっと手を叩きながら、思い出したように話していた。


「もしかして、その商人は頭に布を巻いていなかったか?」


「ん? よく知ってるな。そいつは、いつも頭にターバンを巻いていてな。そいつが言うには、それがトレードマークらしいぞ」


「…そうか」

ノブナガは複雑な気持ちで騎士団を見ていた。


「そんな事より、坊主。ここは危ない。離れた場所へ行こう」

警備の男がノブナガの手を引くと


「ワシは坊主ではない! ノブナガじゃ!」

ノブナガは手を振り解き、男を睨んでいた。


「あ! す! すいません! この子、子供扱いがキライで…」

慌ててアネッサが横から頭を下げると、


「お母さんも危ないから、ここから離れて!」


「お… お母さん!? わたしはコイツらのお母さんじゃない! ただの旅の仲間よ!」

アネッサは、()()お母さんと呼ばれ怒っていた。


「な… なんなんだ? この親子… じゃないのか? とにかく、危ないから離れて!」

警備の男は若干混乱しながら、ノブナガ達をこの場所から離れさせようとするが


「ワシはここで見ておる。お主らは離れておれ」

ノブナガは移動する事を拒否していた。


「な! お前、ここは危ないと言っているだろう!」


「構わん。 お主は離れておれ。ワシはここでこの戦を見る」

ノブナガが頑としてこの場所を離れようとしないでいると


「勝手にしろ。死んでも知らんからな」

警備の男はそう言って町の奥へ歩いて行ってしまった。


(しかしカーテよ。お主は何を考えておる? 人と獣人の架け橋になる商人に成りたかったのではないのか? 獣人に武器を売り、ヒトへ密告し、ティアを攫う。 いったい何がしたいのじゃ?)

騎士団を睨むように見ているノブナガの横には、ミツヒデと少し機嫌の悪そうなアネッサが立っていた。



自警団の後ろにいた騎士団は隊列を組んだまま町の中を進み、町の入り口にいた自警団を通り越し、先頭に騎士団、その少し後ろに戦士団と自警団。一番後ろに魔法使い達が並ぶという隊列を整えていた。


騎士団の中央にいる、少し豪華な鎧を纏った騎士が馬に乗ったまま少し前に出て叫んだ。


「わたしはアクロチェア王国 辺境防衛騎士団 団長ヤールガ・イナルック! お前たちを討ち滅ぼす王国の剣だ!! 獣人解放軍!今すぐ撤退しろ! そうすればノグロイの命だけで許してやろう!」


騎士団と獣人解放軍が町の入口で睨み合っていた。

ザスサールの策略で獣人解放軍の前に現れたのは、辺境防衛騎士団だった。

ノグロイは困惑しながらも戦う事を決意する。


次回  激突


ぜひご覧ください。

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