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Rev.ノブナカ  作者: わたぼうし
【2章】幻の獣王国
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【11話】ティアとティア

時間は少し戻り、ティアがザスサールに膝を着いていた頃。



「敵襲!!」

ザスサールの叫びに反応して、ティアやカーテなど半獣人達は弾けるように走り出した。


ティアの耳には斥候であろうヒトが走って逃げる音も、「一旦、引くぞ!」と叫ぶ声もハッキリと聞こえていた。


(ザスサールさまに害成す者… 逃さない!)

ティアは確実に斥候を追い詰めていく。


その時、聞き覚えのある女の声が話しかけてきた。

(なぜ、ザスサールの為に走るの?)


その声は直接頭の中に語りかけてくるようだった。


「何を言っている! 逆に聞くが、ザスサールさまの役に立つ以外にすべき事があるのか!?」

ティアは怒りを込めて叫んでいた。

並走する半獣人達が驚いてティアを見るが、それ以上の反応は無く斥候を追いかけて走り続けていた。


(なぜ、ザスサールの役に立ちたいの?)

頭の中に語りかけてくる女の声は、自分の声によく似ていた。


「うるさい!」

ティアは頭を振って語りかけてくる声をかき消すと、斥候のヒトを捕らえるべくスピードを上げる。


すると森の木々の間から動物やゴブリンなどのゾンビやスケルトンが現れ、女や子供の半獣人達に纏わりついてきた。


「チッ 鬱陶しい」

ティアは大きくジャンプしてゾンビ達を飛び越していく。半獣人達が捕まっているがティアは目もくれずに斥候を追いかける。


(あいつらが捕まろうが、ゾンビになろうがあたしに関係ない。あたしはザスサールさまの役に立てればいい…)


ティアにとってザスサール以外は不要なのだ。


ゾンビを飛び越すと、またゾンビ達が現れる。しかも、さっきより数が多い。


「ゾンビ如きが、あたしを止められると思ってるの?」

ティアは腰の短剣を装備すると、手当たり次第にゾンビやスケルトンを破壊し、ファイヤーボールを撃ち込んでは道を作っていく。


ティアが作った道を半獣人の男達が利用し、ゾンビの壁を越えてくる。

ティアは若干イラッとしたが、今は斥候を捕らえる事が優先だと自分に言い聞かせて走り続けた。



(見つけた…)

しばらく走ると斥候の3人を目視で確認した。

ティアが更にスピードを上げて追いかけると、斥候の女が立ち止まりこちらに向かって呪文を唱え出した。


(ヤバイ!)

ティアは急ブレーキをかけ、女の呪文に対応するために身構える。すると、木々の間から数えきれない程のゾンビ達が現れた。


「いったい、どれだけゾンビ出すのよ!」

ティアは思わず叫びファイヤーボールを撃ち込む。しかし、森を埋め尽くす程のゾンビ達や、空から襲いかかるカラスのゾンビ達にファイヤーボールでは埒があかなかった。

そうこうしているうちに、ゾンビ達はティアや半獣人達に次から次へと覆い被さってくる。

不思議な事にゾンビ達は噛み付く事も引っ掻くこともせず、ただ覆い被さってくるだけだった。



攻撃されないとはいえ無数のゾンビやスケルトンだ。腐臭や腐った肉の感触、目の前に広がる頭蓋骨や腐った顔… 精神的なダメージはかなり大きかった。


「ひぃぃぃ」

どんなに強いティアでも、こんな声が漏れてしまうのは仕方ない事だろう。


ゾンビ達に覆い被されたティアと半獣人の男達は身動きが取れず、精神的ダメージと闘っていた。

しばらくすると、ゾンビ達は()()()()()()()()()()()ように土に還っていった。


「逃げられたか…」

ティア達の身体に纏わりついていたゾンビ達の肉も土に変わり、手で払う事が出来た。ただ、鼻の奥に残る腐臭だけは消す事ができなかった。


「……くさい」

ティアは身体のニオイを嗅いで凹むが、この事をザスサールに報告しなければ!と思い出し集落へ戻っていった。




ザスサールは、まだ集落の泉の前にいた。

ティア達は集落に帰ってくるとザスサールの前で膝を着き頭を下げる。


「ザスサールさま、申し訳ありません。逃げられてしまいました」

ティアは悔しそうに報告する。

半獣人の男達や女子供は、まるでティアが自分たちのリーダーであると言わんばかりに、ティアの後ろで膝を着いて頭を下げ待機していた。


「なんだと!! 貴様!それでも月女族か!」

ザスサールはティアを蹴り飛ばして怒りを表していた。


「も… 申し訳ありません!!」

ティアはすぐに起き上がり切れた口から流れる血を拭くこともせず、額を地面に擦り付けてお詫びする。


(なぜそんな事をするの? ノブナガが悲しむよ)

また、あの声が頭の中で語りかけてくる。


「ノブナガ…?」

ティアは聞き覚えのある名前にピクリと反応するが何も思い出せず、ただザスサールの怒りを鎮める事だけを考えていた。



ティアが少しだけ顔を上げ上目遣いでザスサールを見ると、ザスサールはイライラしながら左右に歩き何かを考えているようだった。

しばらく歩いていたが、考えがまとまったのか突然立ち止まり、未だに頭を下げているティア達に向かって大きな声で指示を出した。


「これから作戦を実行に移す! 予定は早まってしまったが、ヒトにこの場所がバレた以上しかたない! きさまら! 戦闘準備だ!」


「「ははぁ!!」」

ティア達は装備を整えるため、集落の奥にある武器庫へ移動し装備を整える。


半獣人達は革鎧や鉄の胸当てなどを装備し、おもいおもいの武器を手に取る。

ティアは初めから装備は整っていたので、全員が装備を整えているのを腕を組んで監視していた。


「ティアさま」

半獣人の監視をしているティアの横で、頭にターバンを巻いた美丈夫が膝を着いて頭を下げていた。


「カーテか」

ティアはカーテをチラッとだけ見て、また監視を続ける。


「はっ。 ザスサールさまより、ティアさまとオレの2人は先行して獣人達の戦況を報告しろとのご命令です」


「わかった」

ティアは組んだ腕を解き、半獣人達に大きな声で指示を出す。


「お前達! あたしらは先に行く! 早急に戦闘準備を終わらせてザスサールさまのお役に立つのだ!」


「「了解しました!」」

半獣人達はティアに敬礼で応えると、大急ぎで準備を進めていた。


「カーテ、行くぞ」


「はっ」

ティアとカーテは集落を抜け、チトナプの町を目指して走り出した。

チトナプへ向かうティアとカーテ。

途中、ティアは作戦について説明を受けた。しかし、その作戦には隠された『真の目的』があった。



次回  ザスサールの作戦


ぜひご覧ください。

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