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Rev.ノブナカ  作者: わたぼうし
【1章】呪われた者達
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【5話】ノブナガとミツヒデ

ふと目が覚めると、ワシは街道沿いにある木に寄りかかって座っていた。

ワシは本能寺で着ていた着流しで、腰に刀と脇差を携えていた。足元はいつの間にかワラジを履いており、あまりにも普段通りであった為、ここが異世界である事が信じられない程であった。


ワシの横には光秀が仁王立ちしており、ワシと同じように着流しを着てワラジを履き、腰に刀と脇差を携えていた。ただ、器用な事に光秀は眠っていた。

(こやつ、こんな特技があったのか…)

と、感心しながら見ていると、急にフラフラして倒れてまった。


「ばはぁ! はぁはぁ… あ… あれ?」

倒れた衝撃で光秀は目を覚ましたが、状況を理解できていないようだった。


「光秀、お主、立ったまま眠る事ができるのだな。知らなかったぞ」

くくくっと笑いながら呆けている光秀の手を引き、立たせると


「お… お館様。 ここがイセカイなる場所でございますか?」

やっと正気を取り戻した光秀は、キョロキョロと辺りを見ていた。


「うむ、そのようだ。 しかし… イセカイという場所は、日の本とあまり変わらぬものだな…」


辺りは草原が広がっており、遠くに山や森が見えていた。

街道沿いには所々に木が立っており、街道を行き来する人達の休憩場所になっているようだった。

ただ、今は人通りがなく、大空を飛ぶ鳥が遠くに見えているだけだった。


「やぁ、目が覚めたかい?」

突然、目の前にロア・マナフが現れ、いつものようにヘラヘラしていた。


「ロアか。 ここはイセカイ… で合っているのか?」


「そうだよ。ようこそ、ボクの世界へ」


「そうか… ワシと光秀は無事、イセカイに着いたのだな…」


「もちろんだよ。 ボクが連れて来たんだからね。間違いなんて起きないさ。 そうそう、信長さんと光秀さんはボクが招待したのだからプレゼントを用意したんだ」

ロアはニコニコしながら、ワシと光秀の手を取った。


「ぷれ… なんだって?」


「ん? あぁ、プレゼント。贈り物って意味だよ」


「贈り物…?」

「お館様、献上品という事でしょうか?」

ワシと光秀がお互いの顔を見合わせていると


「まぁ、まぁ。 いいから受け取って」

ロアがワシ達の手をキュっと握ると、信長と光秀の身体がみるみると若返り、体の奥から活力が漲ってきた。


「おぉぉ! これは!?」


「せっかくボクの世界に来たのだから、長生きしてもらわないとね。 あと、今のままだと直ぐに死んじゃうかもしれないから基礎ステータスを上げておいたよ」

ロアは手を離すと、ドヤ顔で説明してくれた。


「キソステ… ん? なんだって?」


「もう! 基礎ステータスだよ。 体力とかチカラを強化してあげたってことだよ。 わかりやすく言うと、なかなか死なない体にしてあげたって事だよ」


「お… おぅ…?  それはかたじけない」


「もうっ いいよ。この街道を向こうに行けば町があるから、とりあえずはそこを目指してみれば? その後は好きにしてくれればいい」

ロアは町がある方向を指差していた。


「うむ。 とりあえずは町に行ってみるか」


「信長さん、光秀さん。 ボクの世界を楽しんでね。 君たちが巻き起こす風に期待しているよ」

ロアはニコっと笑い、握手を求めてきた。


「うむ。ワシ達が巻き起こす風は、お主が好むものか嫌うものかは知らん。 だが、期待しておれ。きっと退屈はさせぬ」

ワシはロアの手を取り、不敵な笑みを浮かべる。


「あはは。 さすが信長さん、ボクの目に狂いは無かったようだ。 君たちが巻き起こす風はきっと嵐になるんだろうね」


「ふっ 無論じゃ」


「それじゃ、ボクはボクの居場所に戻らなきゃならない。 いつもそこから見させてもらうよ。 じゃ、ボクの世界を楽しんでね。 バイバイっ」

ロアはそう言うと、フッと消えてしまった。


さっきまでロアの手を握っていた手を見ながら、グーパーをしてみる。

手の肌に艶があり、握った拳にも力が入る。

顔を触ってみると肌に張りがあり、若さを感じた。

光秀を見ると、見た目は12〜13歳くらいの若かりし光秀が立っており、同じように自分の顔を触っていた。


「光秀、お主、若返ったの。 元服の頃くらいか?」


「お館様もお若くなられましたな。 わたしは元服が16でしたので、その頃よりも少し若い感じがします」


「そうか。ワシは12だった。 ちょうどその頃の感覚と似ておる。 しかし体の奥から湧き上がるこのチカラと言うか、活力と言うか… なかなか凄いものがあるのぉ」


「左様でごさいますな。 なんでしょう? こう、こんこんと湧き上がる泉のようでございます」


「うむ。 そうじゃ、光秀よ。この世界ではワシらは家も何もない。ただの信長と光秀じゃ。 これから二人でこの世界を駆けて行かねばならぬ。 この際じゃ、ワシらは『主従』ではなく『旅の仲間』とせんか?」

ワシは家だの、身分だのという煩わしい事が嫌いだった。あの頃のように何も気にせず、楽しくやっていきたかったのだ。

しかし光秀はフルフルと頭を振り、


「お館様はいづれ、この世界でもたくさんの人が付き従うようになるでしょう。 わたしが『仲間』として振る舞うと、来る時(きたるとき)の主従関係に歪が産まれるやもしれません。わたしはこれからもお館様の一番の家臣として頂ければ、それだけで満足でございます」


「はぁ、光秀。お前は相変わらず面白味のないヤツじゃのぉ。 まぁ、よい。ならばこれからノブナガと呼べ。家も無いのだ。『お館様』はおかしいだろう? ワシも『ミツヒデ』と呼ぶ事にする」


「そ… そんな恐れ多い…」


「喧しい! ワシが呼べと言っているのだ!」


「…承知いたしました。 ですが、せめてノブナガさまとお呼びさせて頂きます」

光秀は片膝をつき、頭を下げていた。


「うーむ。 仕方ないの。それでよい」

この世界ではワシと光秀しかいない。そんなくだらない事でギクシャクしても面白くない…

ワシはしぶしぶ了承する事とした。



「そうと決まれば、さっそく町へ行くぞ!」


「はっ おやか… んん。 ノブナガさま!」

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