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Rev.ノブナカ  作者: わたぼうし
【2章】幻の獣王国
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【4話】カーテの算段

(なんだこいつらは? 人身売買組織の末端構成員なら元締めがいるだろう? 元締めにあの女を渡さないと金にはならんはずなのに、目的地がどこか分からんだと? 本気で言っているのか?)

カーテは混乱していた。

いくら女子供しかいないとはいえ、人身売買するような極悪人だ。絶対に何か隠しているだろう。

それに必ず元締めと接触するはず…


(とは言えだ。オレひとりで組織と争うなんてできない。 しかし、コイツらをこのまま放置してティアとかいう獣人が売られるのは許せない… どうするか…?)

カーテは表情には出さないように注意しながら考えていた。


「とりあえず、もう夕方だしこの辺で夜営をするか。街道とはいえ、夜の移動は危険だしな」

カーテの提案にノブナガ達は賛成し、簡単に自己紹介したノブナガ達は街道から少し外れた場所で夜営の準備を始めることにした。


「そういえば、お主。どうやってあの大蜘蛛を倒したのじゃ? それにあの光と大きな音はいったいなんじゃ?」

ノブナガは焚き火の準備をしながら、手際良く準備を進めるのカーテに声をかけた。


「あぁ、大蜘蛛は倒してない、追い払っただけだぜ。 大蜘蛛は目が悪い分、音や振動に敏感だ。だから、あの時はオレ特性の光玉を投げたんだ。光玉は大きな音と強い光を出すように作っててな、その音に驚いた黒大蜘蛛は逃げ出したんだぜ」

カーテは腰の袋から野球のボールくらいの大きさの黒い球取り出し、ノブナガに見せながら説明してくれた。


「ほぉ、それが光玉か…」


「オレは商売するためにひとりで旅をする事が多いから、野盗やモンスターに襲われる事もある。 相手の数が少なければぶっ飛ばしてやるんだが、さすがに大人数でこられるとヤベェ。 そんな時はこの光玉を投げて、相手が怯んでいる隙に逃げる。 いくら儲かっても命がないと使えないからな」

わははは と、笑いながらカーテは光玉を腰の袋にしまう。



日が暮れはじめ辺りが薄暗くなってきた頃、ティアは乾燥させたソテの実のパンと、干し肉で作ったスープをノブナガ達に手渡していた。

「簡単なモノしかないけど、今日の晩ごはんだよ。 さぁ、カーテさんもどうぞ」


ティアからパンとスープを受け取りながら、カーテは楽しそうにしているティアの顔を見ていた。


「…? 何かついてる?」


「あ、いや。 オレの分まで作ってくれてありがとう」

カーテは慌てて目を逸らし、スープに口をつける。


「おぉ! 美味い!」


「ふふ、よかった」

ティアは微笑みながら、近くの石に座り食事を始めた。


「ん?ティア、このスープの水はどこから汲んで来たのじゃ?」

ノブナガは、近くに川などはなく水を汲みに行った様子もなかったのに、たっぷりの水を使った料理が出てきた事を不思議に感じていた。


「あ、それは巫女さまが出してくれたのよ」

ティアがそう言いながらアネッサを見ると


「感謝しなさい。 水はわたしがいくらでも出してあげるわ」

アネッサは、ふふんと得意気にノブナガ達を見ていた。


「アネッサ… お主、そんな事もできるのか」


「もちろんよ。…って、言いたいけど、実はこの杖のおかげよ。この杖はルートハイム家に代々伝わる、命の杖なの。わたしのお爺さまより前は、いろんな町に行って人々のために祈りを捧げていたのよ。 その時に使ってた杖で、飲み水を出したり、体や服をキレイにしたりできる魔法の杖なの」

アネッサは持っていた白い杖を大切そうに撫でながら話していた。


「そんな便利な杖があるのか… この世界には、本当に驚かされるのぅ」


「左様でございますね。ティア殿の火の魔法や、アネッサ殿の傷を治す魔法… 驚かされてばかりでごさいます」

ミツヒデも興味深くアネッサの杖を見ていた。



「んん?ちょっと待て。 アネッサさんはルートハイム家を見に行きたいじゃなかったのか? 今の話しだと、あんたがルートハイム家ということにならないか?」

黙って聞いていたカーテが、アネッサに質問すると


「わたしはアネッサ ルートハイムよ。 わたしが見たいルートハイム家は()()ルートハイム家よ。 わたしは()()ルートハイム家しか知らないの」


「意味が分からないのだが……」

混乱するカーテにアネッサは言葉を足した。


「つまり、わたしは3()0()0()()()()ルートハイム家の者なの。 わたしはずっと引きこもってたから、()()ルートハイム家がどうなっているのか知らない。 だから、わたしは()()ルートハイム家を見てみたくなった。 ただそれだけよ」


「300年前? え?」


「ああ、もう。だから、わたしはリッチなの。不死者よ。 わかった?」

アネッサがめんどくさそうに言いながら、手をヒラヒラして『もう質問しないで』と目で訴えていた。


カーテは、ふと思い出した。自分はメルギドから街道を走ってきてコイツらが黒大蜘蛛に捕まっているところに遭遇した。

そして、どうやらオレと同じ東へ向かっているようだった。街道は一本道だ。と、いうことはコイツらもメルギドから来たかもしれない?

「そう言えば、お前たちはどこから来たんだ? まさか… メルギド?」


「そうじゃが? ワシらはメルギドの近くにあるハーゼ村という所から来た」

ノブナガは楽しそうにソテの実のパンをスープに浸しながら、カーテを見る事もなく応える。


「ハーゼ村… まさか… 月女族… の?」


「あ、はい。あたしはハーゼ村の月女族 族長の娘 ティア。 ティア・ウル・ステラリアです」

ティアが小さく手を挙げて答えると、カーテは驚き過ぎて声も出さずに口をパクパクさせている。


「どうかしましたか?」

ティアが首を傾げてカーテを見ると


「あんたらが… 『メルギドの英雄』だったのか」


「え… 英雄って… そんな…」


「オレは今朝までメルギドに居たんだ。そこで聞いた。この前メルギドはあのギゴール盗賊団に襲われたと。ギゴール盗賊団と言えば、商人達の中では絶対に遭遇してはいけない盗賊団だって有名だ。 もし、運悪く遭遇したら全てを捨ててでも逃げろ。そうしないと命はない、と言われているくらいだ」

カーテはお湯が入ったカップを握り締めながら話していた。


「あの盗賊団は、そんなやつらじゃったのか…」


「そんな盗賊団に襲われたメルギドを救った英雄は美しい女達と、自らを魔王と名乗る子供の姿をした死神が2人。そして、突然、町に現れたルートハイムを名乗るリッチだったと。 その美しい女達は火の魔法を使い、死神はたった2人でギゴール盗賊団のほとんどを殺してしまった…  まさか、お前たちなのか?」

カーテが恐る恐るノブナガを見ていると


「まぁ多少、大袈裟になっている感はありますが… それはノブナガさまと、ティア殿、アネッサ殿で間違いありませんな」

ミツヒデは真顔で答えていた。


「な… なんだと? お前たちは人身売買組織の末端構成員じゃなかったのか!?」



「はぁ?? なんでわたし達が人身売買組織の人間なのよ?」

アネッサが不機嫌そうにカーテを見ていると


「獣人を連れた()()なんて、人身売買しようとするヤツらくらいしかいないし… 獣人を『友』なんて呼ぶようなヒトなんて見た事も聞いた事もなかったから、てっきりティアさんを騙して売り飛ばそうとしているヤツらだと思ってた…」


「わたしがティアさんを売り飛ばす? ふざけないで! どうしてわたしが愛する娘を売り飛ばすような事するのよ! ありえないわ!」

アネッサはティアを抱きしめながらカーテを睨みつけていた。


「あ… 愛するって…」

ティアは頬を赤く染めて俯いていた。


「ワシらが人身売買組織か… はっはっはっはっ お主、なかなか面白いヤツじゃな」

ノブナガは吹き出すと、膝をパンっと叩きながら笑っていた。


「ちょっと! 笑い事じゃないでしょ?」


「まぁまぁ、カーテ殿の誤解は解けたようですし… いいじゃないですか」

ミツヒデもニコニコと笑っていた。


「ミツヒデまで? ほんとあんた達ってワケわかなんないヤツらよね」

はぁ とため息を吐きながらアネッサはティアを撫で続けていた。

カーテが語るアクロチェア王国とは…


次回  アクロチェア王国の闇


ぜひご覧ください

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