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Rev.ノブナカ  作者: わたぼうし
【2章】幻の獣王国
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【3話】商人 カーテ・バリナの正義

(コイツは獣人の女を売る為に連れているのか? その割には女の身なりが整っている… しかも武器まで持たせている。 売るためなら武器を持たせるハズがないが…)

ティアは黒大蜘蛛の糸を編み込んだアンダーに、ビキニタイプの革鎧を装備し、腰には短剣を携えていた。


(ん? あの女とノブナガは同じアンダーを装備しているのか? ヒトが獣人にそんな事をするか?)


商人であるカーテは、これまでたくさんのヒトを見てきた。

金を持っているヤツ、野心の塊のようなヤツ。口先でお人好しを騙そうとするヤツ…

カーテから見れば、ヒトとは商人も盗賊もみんな同じなのだ。ただ、金を奪う方法が商売か暴力かの違いしかなかった。

そんなヒトに共通する事は、獣人を()()としか見ていない事だ。

男の獣人なら奴隷として、女の獣人なら娼婦として売れば大儲けできる。

それが()()という動物なのだ。

だが、ノブナガは獣人を『友』と呼ぶ。こんなヤツを見るのは初めてだった。


カーテはノブナガとティアを交互に見ながら考えていた。


「カーテよ、お主らの常識ではヒトと獣人が友となるのは理解出来んかもしれん。 じゃが、ワシとティアは紛れもなく友なのじゃ」

ノブナガは転がっているティアに手を差し伸べ、引き起こすと「大丈夫か?」と声をかけていた。


「うぅ… まだぐわんぐわんするぅぅ…」

ティアはふらふらしているが、なんとか自力で立てるまで回復していた。


「女… ティアというのか? お前はノブナガの友なのか?」

カーテはティアに直接聞くと


「うぅ… そうです… ノブナガはわたしの恩人であり、友なのです… う… 気持ち悪い…」

吐きそうなティアをアネッサが抱きとめ、ティアの背中をさすりながらカーテに声をかける。


「カーテさん、不思議だとは思うけどティアが言う事は本当よ。 ノブナガはこの子の友で間違いないわ」


(そういえば、ノブナガが黒大蜘蛛の巣に捕まっていた時、巣から離れた場所にひとりでいた。 逃げようと思えば逃げられる状況だったはずだ。だが、この女はノブナガを必死で助けようとしていた…)


「本当に… ヒトと獣人が友になれるのか…」

カーテは驚きと、まだ信じられないという顔でノブナガ達を見ていた。


「あぁ、ワシらは友じゃ。カーテよ、そんな当たり前な事が、そんなに不思議なのか? ワシにはそれが理解できん」

ノブナガは、ふんっと鼻から息を吐きカーテを見ていた。


アネッサは… ティアを介抱している。

もうひとりのガキは黙ったままノブナガの横でオレを見ている。

ノブナガは、なぜか偉そうに腕を組んでオレを見ている…


カーテはノブナガ達を見ながら思案していた。

アネッサ… どうみてもノブナガや、もうひとりのガキの母親や姉には見えないな。

ノフナガと、あのガキも兄弟には見えない。

ティアとかいう獣人の女はあの3人を信頼しきっているようだが…


(あぁ、なるほど。 コイツは口先でお人好しを騙すタイプか。 コイツらは獣人売買組織の末端構成員だな…)

全てを理解したカーテ(思い込みなのだが…)は、正義の商人魂がメラメラと燃え上がりはじめた。

カーテの商売に対する正義とは、『商売とは相手が欲しがっている()()を、より高く売ることである。ヒトや獣人は()()ではなく、()()()()でなければならない。人身(獣人)売買なんて商人の風上にも置けない極悪人である』だった。

人身売買組織員(極悪人)を目の前にしたカーテは怒りが込み上げてきた。


しかし、カーテも経験を積んできた商人。思っている事をそう簡単には表情に出さない。相手の懐に入り込み、どうやって金を奪うか算段を始めていた。


「お前たち女子供だけだが、どこへ行くのだ?」

カーテは営業スマイルになると、あたかもノブナガ達を心配しているかのように振る舞う。


「む、ワシは子供では…」

ノブナガがムッとするが、すかさずアネッサが横から入り


「とりあえず、ルートハイム家ね。あなた、どこに行けばルートハイム家に会えるか知ってる?」

アネッサがカーテに質問していると


「む! そんなものよりアクロチェア王国騎士団じゃ! 騎士団とはどのような者達か、この目で見ておきたいのじゃ」


「そ! そんなものって何よ!騎士団なんてどこも同じでしょ? まずはルートハイム家よ!」

アネッサとノブナガが言い合いを始めると


「まぁまぁ、どちらも王都アクロザホルンに行けば見る事ができるさ」

カーテは苦笑いを浮かべながら2人を仲裁すると、


「オレはアクロザホルンまでは行かないが、手前の町チトナプまで行く予定だ。 一緒に行くかい?」


「おお! それは誠か! 実はとりあえずこの街道を歩いていただけで、どこに行けばよいのか分からなかったのじゃ」

ノブナガの爆弾発言が飛び出した。


「ええ!? あんた、目的地分からずに歩いていたの!?」

アネッサは目を丸くして叫んだ。


「左様でごさいますね。わたし達はこの国を知りませんので、とりあえず街道を歩けば町があるだろうって思っておりました」

ミツヒデは真顔で答える。


「お…お前ら… 大丈夫か?」

さすがにカーテも言葉を失っていた。

ノブナガ達から金を奪う算段を始めたカーテ。

しかし思わぬ事態に、カーテの算段は狂ってしまう。


次回 カーテの算段


ぜひご覧ください

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