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Rev.ノブナカ  作者: わたぼうし
【2章】幻の獣王国
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【1話】白いウサギ

「手ぶらで旅に出るのか?」

ホニードに指摘されたノブナガ達は、メルギドで旅支度をしていた。


「ノブナガさま、とりあえずこれくらいでしょうか?」

ミツヒデはバックパックに携帯用食料や、防寒具、ランタンなど冒険者が持っているという品を店で聞きながら準備していた。

イルージュからソテの実のパンを乾燥させ保存できるようにした乾パンを数日分もらっていたので、それもバックパックに詰め込む。


「こんなもんかのぅ?」

そんなに『旅』をした事がないノブナガも、何を準備しておけばいいのか分からなかった。


「そうじゃ、アネッサ。お主は昔、旅をしてハーゼ村に来たのじゃろ? どんな荷物が必要か分かるか?」


「わたしはリッチよ? 荷物なんて要らないわ。まぁ、わたしが持ってきたのはこの杖とローブ。あとは舞う為の衣装くらいよ」

アネッサは茶色のローブを着て、身長程ある白い木の杖を持っているだけだった。


「むぅ、ならティア。お主は… その顔は知らんな…」

ティアは店にある品を手に取ると、「コレはなに?」と片っ端から店主に聞いて困らせている。


「ミツヒデ、とりあえずこれくらいにしとこう。足りないモノは、先々で何とかするしかなかろう…」


「左様でごさいますね…」

ノブナガ達が旅の支度を済ませ会計をしようとすると、「ちゃんとソレメル町長から頂いてますので…」と、店主はニッコリ微笑んでいた。


「ソレメルめ。なかなかいい男じゃ」

ノブナガの中でソレメルの株が急上昇していた。




ご機嫌で歩き出しその道は、ノブナガとミツヒデがこの世界に来た時に歩いた街道だった。メルギドを出てすぐは商人などとすれ違ったりしていたが、昼を過ぎた頃には誰とも会わなくなっていた。


「飽きた」

ノブナガは『への字口』でヒマそうに歩いていた。


「ノブナガさま、()()ですか? この道はわたし達がこの世界に来た時に歩いてきた道を逆戻りしているのですから、ずっと草原なのはご存知でしょ?」

ミツヒデがため息を吐きながらノブナガに小言を言うと


()()()じゃ! ずーーーーーーっと草しかない!前も後ろも横も! 全部じゃ! ぜーーーーんぶ草じゃ! この先も草しかない! ワシはもう草は飽きたのじゃ」


「はぁ、困りましたねぇ」

ミツヒデが困っていると


「ノブナガぁ、ミツヒデも困ってるでしょ? 文句ばっかり言ってないで歩く!」

ティアは軽快な足取りで街道を歩いていた。


「お主は元気じゃなぁ。 そうだ!ティア! この草を燃やせ」


「えぇ!? ムチャ言わないでよ!」


「お主の火の魔法で、にっくき草をやっつけるのじゃ!」


「はぁ? そんなの出来るわけないじゃん!」

ノブナガとティアがギャーギャー騒いでいると、ミツヒデは草陰に白い物体を見つけた。


「ノブナガさま、アレは?」

ミツヒデが白い物体を指差して、ノブナガの興味をひく。


「ん? お!ウサギじゃ! 今晩はウサギ汁にしよう!」

ノブナガは嬉しそうに草原を駆け出した。


「あ! ダメ! ノブナガ!待って!!」

ティアが叫ぶがノブナガの足は止まらず、ウサギ目掛けて飛びかかった。が、ノブナガはウサギの手前で空中に固定されてしまった。


「なんじゃ!?」

ノブナガはジタバタと暴れるが、手足に何かが着いているようで身動きが取れない。


「黒大蜘蛛の巣よ!!」

ティアが叫び、ミツヒデとアネッサが腰を屈めて臨戦体制になる。


「黒大蜘蛛じゃと!?」

ここは草原、立木も何もないただの草原なのだ。()()()と言うくらい大きい蜘蛛なら、巣を張ろうにも張れないというのがノブナガとミツヒデの()()だった。しかし、ここはノブナガ達が生きてきた世界ではない。

黒大蜘蛛は草原に巣を張り、()()()()()をエサにして狩りをする蜘蛛だったのだ。

この世界では()()であるため、()()()()()()()()()()()()()()()()はいない。


「ノブナガ! 動かないで!黒大蜘蛛が来る! じっとして!」

ティアが叫び、ノブナガの動きを止める。


「白いウサギに飛びかかるなんて… ありえない」

アネッサはため息を吐きながら、目を凝らして蜘蛛の巣の糸を確認していた。


「ありえない… のですか?」

ミツヒデが小声で聞くと


「はぁ? 当たり前でしょ?そもそもウサギは()()じゃない。 あんた、そんな事も知らないの?」

アネッサはため息混じりに応えていた。


「緑色…」

ミツヒデが困惑していると


「とにかくノブナガを助けるわよ」

アネッサは、そおっと蜘蛛の糸に触れないように歩き出していた。


ゆっくり… ゆっくりとノブナガに近づくアネッサとミツヒデ。 あと、少しでノブナガに到着しようという時だった。


「黒大蜘蛛よ!!」

蜘蛛の巣から離れた場所で警戒していたティアが叫ぶ。


黒大蜘蛛はノブナガが捕まっている場所から、ちょうど反対側の草原からゆっくりと顔を出して獲物を確認しようと蜘蛛の巣の上を歩き始めていた。

蜘蛛の巣は巨大な黒大蜘蛛を女郎蜘蛛程度に見せるほど大きく、ノブナガと黒大蜘蛛の距離は約30mくらい離れていた。


黒大蜘蛛はその名の通り黒く、丸く大きな目がふたつあり、その腹は直径3mもあろうかというくらい巨大な蜘蛛だった。

黒大蜘蛛は大きな目があるにも関わらず、あまり見えていないようで動かないノブナガを探しているように見えた。


「ノブナガ、ミツヒデ、絶対に動いちゃダメよ。アイツが諦めて草原の中に戻るまで待つのよ」

アネッサは小さな声でノブナガに指示する。


「わ… わかった」

ノブナガも動かないよう、細心の注意を払って返事をしていた。


黒大蜘蛛はゆっくりとノブナガの方は近づいてくるが、どうやらノブナガに気がついているわけではなく、獲物がかかった形跡を頼りに移動しているだけのようだった。


ノブナガの数メートル手前で黒大蜘蛛は止まり、辺りをキョロキョロと確認する素振りを見せると、くるりと回れ右をして黒大蜘蛛が現れた草原の方へ移動を始める。


呼吸する動きすら感知されそうな緊張感の中、ノブナガ達3人は微動だにせず黒大蜘蛛が帰るのを待っていた。


黒大蜘蛛はゆっくりと歩き自分から出てきた草原近くに来ると、もう一度だけ辺りを獲物がいないか名残惜しむように自分の巣を見渡す。


その時、不意に小虫がノブナガの鼻の中に飛び込んで来た。

「ぶはっ! ハックシュン!!」


「バカっ!」

「いや、虫が…」

目を丸くして反応したアネッサとミツヒデ、ティア。それに対し嬉々として反応する黒大蜘蛛。


黒大蜘蛛はノブナガ目掛けて、猛然と襲いかかってきていた。

白いウサギは黒大蜘蛛の罠だった。罠にかかったノブナガを黒大蜘蛛が襲う。


次回  黒大蜘蛛


ぜひ、ご覧ください。

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