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Rev.ノブナカ  作者: わたぼうし
【1章】呪われた者達
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【34話】チカム救出

少し時間は戻り、太陽を背にノブナガが叫んでいた頃、ティアは町の中心から少し西に入った所にいた。


「みんな、ここからは2人1組で行動するよ。 盗賊団はおそらく散らばって略奪を繰り返していると思う。だから、相手が1人か2人なら攻撃。3人以上なら応援を呼ぶこと。いい?」

ティアは若者グループ8人を集めてツーマンセルで組分けすると、そう説明した。


「ティアさまはお一人なのですか?」

村人の1人が心配そうにティアを見る。


「パル、わたしは大丈夫よ。 全体を見ながら指揮をするわ。この町の中でなら、お互いに声が聞こえるでしょ? 何かあれば連絡を取り合って行動するのよ」

ティア達、月女族の特徴であるウサギ耳は、かなりの広範囲の音を拾う事ができる。この町の中でなら、叫べばお互いに会話ができる程だ。


「わかりました。ティアさま、無茶はしないでくださいね」

パルは心配そうにティアを見ていると


「ふふ、大丈夫よ。あたしはみんなを守る為にここに居るんだから。それに、母さまとも約束したからね。みんなと無事に帰るって」

ティアはニコっと笑うと、パルの肩をポンポンと叩く。


「はい、約束ですからね」

パルはティアの手を取り見つめると、そっと手を離してパートナーの横に並ぶ。


「それじゃ、みんな! 行動開始!」

ティアの号令でパル達、若者グループは四方に散って行った。


「……みんな、無茶はしないでね」

ティアは仲間達の背中を見送ると、ぽそりとつぶやき教会がある町の中心部に目を向けていた。

チカム達、子供グループは怪我人を探してアネッサの下に連れて行く事が今回の使命だ。

ティアは子供達の様子を伺うには、アネッサの下に行くのが確実だと考たのだ。


パル達を見送ったティアは教会に向かって走りだした。すでに町の中心部近くにいるティアは、ほんの10分程度で教会に着いた。


教会にはたくさんの怪我人が集まっており、治癒術師達が必死に治療を施していた。

ティアは近くにチカム達がいないか、キョロキョロと見回していたが見つける事はできなかった。


(チカム達… 大丈夫かしら?)

ティアが教会を遠巻きに見ていると、東の方からヒカムとキカムが2人で女性を支えてながら歩いてやって来るのが見えた。


「ヒカム!キカム!」

ティアはヒカム達のもとに走りよると


「ティア姉さま! チカ姉が! チカ姉がぁ!」

キカムはヒカムに女性を任せて、ティアの胸に泣きながら飛び込んで来た。


「キカム? チカムがどうしたの?」

ティアはキカムの態度に、強烈な不安感を抱きながら話しを聞き出そうとすると


「ティア姉さま! お姉ちゃんが男達と戦ってる!わたし達を逃す為に… お姉ちゃんが! お姉ちゃんがぁ!!」

ヒカムは涙を流しながら、それでも女性は支えたままティアに助けを求めた。


「ヒカム、キカム。 チカムは任せなさい。あなた達は、ヒト様を早く教会へお連れして!」

ティアはヒカムとキカムの頭に手を置いて指示し


「ヒト様、あたしはティア。この子達がヒト様を教会へお連れ致しますので、ご安心ください」

と、女性に挨拶をした。


「ティアさん、ありがとう。早くあの女の子を助けてあげて。あの子は向こうに居るはずよ」

女性はチカムが戦っている方向を指差し、チカムを助けて欲しいと懇願していた。


「はい、ありがとうございます」

女性が指差した方向をティアが睨むように見た時だった。



「イヤ! 離して! 助けて ティア姉さま!」

チカムの叫びがティアとヒカム、キカムの耳に届いた。


「チカム!!!」

ティアは声のする方向に弾けるように飛び出し、あっという間に姿が見えなくてなってしまった。


ヒカムとキカムは身体が震え、女性を支えるのが精一杯となっていた。

ヒト種族である女性にはチカムの声は聞こえず、ティア達の突然の動きに驚くだけだった。

すると教会からヒカム達に気が付いた治癒術師がやってきた。


「ヒカムさま、怪我人を連れて来て頂きありがとうございます。 ところでチカムさまは、別ですか?」

治癒術師は常に3人で行動していたはずのチカムが、見当たらない事を不思議に思いヒカムに声をかけた。ヒカムは先程、男達に襲われた事、チカムの叫び声が聞こえた事、そしてティアが助けに行った事を説明した。


「た!大変な事に! すぐにルートハイムさまへ報告しなければ! ヒカムさまとキカムさまは教会の中にいて下さい。 チカムさまはわたし達が助けに行きます!」

治癒術師は女性を、他の治癒術師に預けるとヒカム達を連れてアネッサのもとに走り状況を説明した。


「チカムちゃんが!?」

治療をしていたアネッサの雰囲気が急に変わり、辺りに冷たい空気が流れ出す。


「え? 寒い?」

周りの怪我人や、治療を終えたヒト達は急な冷気に混乱していると


「ポテカ! ナープール!」

アネッサが叫ぶと、ポテカとナープールがダッシュでやって来た。


「わたしは少し用事が出来た。 少しの間、ここは2人に任せるわ。いいわね?」

アネッサが少し低い声で2人に指示すると


「はい!! お任せください!」

ポテカとナープールは直立不動で返事をしていた。


「さぁ、ヒカムちゃん。チカムちゃんがいる場所を教えて」

アネッサは優しく微笑みながら、ヒカムに場所を聞くと教会から出て行ってしまった。


「巫女さま… あんなに怖かったっけ?」

ヒカムとキカムはアネッサの優しく微笑みながも、恐ろしい目に震えながらアネッサを見送っていた。


アネッサは教会から出た所でオオカミゾンビを呼び出し、ヒカムから聞いた場所を目指して走り出していた。その頃、手の空いた治癒術師と、アネッサに治療してもらった町の男達が集まり、チカム救出のため武器を片手に走り出そうとしていた。

アネッサが後悔しながらオオカミゾンビを走らせている頃、ティアと盗賊団との戦いが始まる。しかし、戦いの経験がないティアは苦戦を強いられていた。


次回 月女族 vs 盗賊団


ぜひご覧ください

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