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Rev.ノブナカ  作者: わたぼうし
【1章】呪われた者達
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【30話】誇り

「母さま! メルギドの町が襲われてる!」

ティアは長い耳をピクピクさせながら叫んでいた。


「ティア殿!! それは、誠でござるか!?」

ミツヒデが呼応するように叫びティアを見ていた。


「ござ? あ、うん! 風に乗って子供の泣き声や、悲鳴が聞こえる。 早く助けに行かないと!」

一瞬、『?』となったティアが答えると


「お主、助けに行くのか?」

ノブナガは腕を組んでティアを睨むように見ていた。


「当たり前でしょ! 行くよ! メルギドの町が襲われているんだよ? 町の人が… 子供達が、殺されてるかもしれないんだよ!?」

ティアは必死の形相でノブナガを睨み返していた。


「ふむ。 では、聞くが… お主達が呪われていたとはいえ、あの町の者達はお主達を虐げ、つい先日もこの村の者達を殺しにきた。 それでも、あの町の者を助ける… と、言うのか?」

ノブナガは腕を組んだまま、ティアを睨み続ける。


「わかってる。でも! それは『助けない理由』にはならない! あたしは助けを求めている人が居るなら助ける! それ以外に選択肢なんてない!」

ティアは体全体で強い意志を表して叫んだ。


「お主、手に入れたチカラを試したいのではないのか?」

ノブナガは冷たい目でティアを見ると


「ノブナガさま!! それは聞き捨てなりません! ティアは! この子はそんなチカラが無くても、例え殺されると分かっていても助けに走る。 そんな子です!!」

イルージュが物凄い剣幕で怒りを表し、ノブナガを睨みつけた。


「母さま…」

こんなに怒りを表した母を見た事がないティアは、目を丸くして驚き固まってしまっていた。


「あい、すまん。ワシが悪かった。 だが、よく分かった。ワシらも助太刀致そう」

ノブナガはすぐに頭を下げて謝ると、イルージュとティアを見て不敵な笑みを浮かべていた。


「わたしも行くわよ。 町が襲われてるのでしょ? 怪我人はわたしに任せなさい」

アネッサは、ふんっと鼻から息を吐いてノブナガの横に立った。


「母さま!」

ティアはイルージュに向き、指示を待つ。

イルージュはいつの間にか背後に集まっている村人達の中から、ティアと同年代の者8人を集め


「ティア、それとあなた達はメルギドの町へ行きなさい。 わたしとキーノ達は村の警備! 子供達はいつでも逃げられるように準備!」

イルージュは若者グループをメルギドの町へ救出へ向かわせ、村が襲われる事態を想定しイルージュやキーノなど年寄りグループを村の警備に充てた。

そして月女族の将来を担う子供達には、逃げる準備を指示した。

するとチカム、キカム、ヒカムの三姉妹がイルージュの前に並び


「族長! わたし達もメルギドに行かせてください! わたし達も戦う! ヒトを守る為に戦わせてください!」

チカム達は真剣な目で訴えてきた。


「チカム… 今、あの町に行くという事は、もしかしたら死ぬかもしれないのです。月女族の将来を担うあなた達を行かせるわけには…」

イルージュは膝をつき、子供達と目線を合わせて説得しようとしたが


「族長、わたし達も『月女族』です。 誰かを守るために戦う誇り高き『月女族』なのです! 今、逃げたらわたし達は、ずっと逃げ続けなければならなくなります! お願いです! わたし達にも誰かを守らせてください!」

チカム達は強く訴えてきた。


「母さま、チカム達を許してあげてください。 彼女達も誇り高い『月女族』なのです」

ティアはチカム達の横に立ち、イルージュに頭を下げる。


「しかし…」

イルージュが困惑していると


「それじゃチカムちゃん達には、怪我人をわたしの所へ運んで来てもらいましょう。 チカムちゃん、出来ますか?」

アネッサはそう言いながらチカムの頭をポンっと叩く。


「出来るよ! わたし達は怪我人を巫女さまの所に連れて行けばいいんだね!」

チカムはアネッサの顔を見上げて笑っていた。


「わかりました。 ではチカム、あなたが子供達のリーダーとしてみんなを纏めてなさい。 決して無理をしてはいけませんよ」

イルージュは不安そうな顔をしてはいたが、チカム達のメルギド行きを了承した。


「はい!」

チカムは大きな声で返事をし、子供達をまとめ始めた。


「ティア、子供達をよろしくお願いしますね」


「はい、母さま。 必ず全員、無事に帰ってきます」

ティアは母と約束すると、若者グループと子供グループ、ノブナガとミツヒデ、アネッサを集めメルギドへ走りだした。


ティア達の走るスピードはものすごく速く、あっという間に米粒ほどに小さくなってしまった。


「な… なんという速さじゃ」

ノブナガとミツヒデ、アネッサは村の入口で、ポカンとして佇んでいた。


ノブナガとミツヒデが走り出そうとした時、

「ちょっと待って」

アネッサはノブナガ達を引き留めると、両手を前に出して呪文を唱えた。

すると土が盛り上がり、そこから3体のオオカミのゾンビが現れた。オオカミ達は馬ほどの大きさで、体は半分腐っておりところどころ骨が見えていた。


「うお! な… なんじゃ?」

ノブナガ達が驚いていると


「これに乗って行くわよ! 早く乗りなさい」

アネッサはヒラリとオオカミゾンビに跨り、ノブナガ達に早く乗るように促す。


アネッサは、ノブナガとミツヒデがオオカミゾンビに跨るのを確認すると

「はっ!」

と、声を出してオオカミゾンビを走らせる。ノブナガとミツヒデもそれを見て、同じように走り出した。


「ノブナガさん、これがゾンビよ! わたしとは全然違うでしょ?」

アネッサは、まだノブナガの『生ける屍』発言を根に持ち、チクチクと文句を言う。


「なるほど、ゾンビとは動物の屍の事か…」

ノブナガが間違った解釈をすると


「ちっがうわよ! ゾンビは知性もなく、ただ食欲に従って動き回るか、命令に従うしかできない死体よ! リッチは知性も理性もある不死者なの! わかった?」


「わ… わかった、わかった。 お主はリッチなんじゃな」


「ホントに分かってるのかしら?」

アネッサはブチブチ言いながらオオカミゾンビを走らせていた。


「やはり、女は怖いの…」


「左様でごさますな…」

ノブナガとミツヒデは、アネッサに『生ける屍』は禁句だと心に刻んでいた。


オオカミゾンビの走るスピードは速く、暫くするとティア達に追いつく事ができた。


「ノブナガ、遅い!」

ティアが叫ぶ。


「無茶言うな。 お主らが速すぎるのじゃ」

ノブナガが反論していると、メルギドの町が見えて来た。メルギドの町ではあちこちで火の手があがり、人々の悲鳴も聞こえていた。


「ほら!メルギドの町が見えてきたよ! 巫女さま! 町の中央に教会があります。 怪我人はそこに集まっているはずです。チカム達にも、教会に怪我人を運ぶように指示していますので、巫女さまは教会へ行ってください」

ティアがアネッサに説明する。


「わかりました。わたしはこのまま教会へ向かいます。 みなさん、ご無事で!」

アネッサはさらにスピードを上げて町へ走り出した。


「ノブナガ、ミツヒデ! あっちで悲鳴が聞こえる!あたし達はあっちに行こう!」

ティアは町の西側を指差していた。


「あい、わかった。 ゆくぞ!ミツヒデ!」

ノブナガ達は町の西側へ向かってスピードを上げた。

メルギド自警団は熾烈な戦いを強いられていた。メルギドのヒトを助けるべく現れたティア達は、ノブナガとミツヒデの圧倒的な強さを目の当たりにする。


次回 第六天魔王 ノブナガ


ぜひご覧ください

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