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Rev.ノブナカ  作者: わたぼうし
【0章】プロローグ 本能寺の変
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【3話】裏切り者 明智光秀

羽柴秀吉が決意を固めている頃、

「恐れながら、お館様。ひとつよろしいでしょうか?」

明智光秀は神妙な面持ちで口を開いた。


「うむ。申してみよ」


「はっ。 このままお館様が突然居なくなると、これを機に反旗を翻す輩が出るやもしれませぬ」


「ふむ、確かにそうかもしれんな」


「そこで、わたしに妙案が御座います」

明智光秀が不敵な笑みを浮かべ信長を見ると


「妙案とな? 申してみよ」

信長は興味深い顔で明智光秀を見ていた。


「此度の招集は無かった事にし、わたし光秀が謀反を起こした事にするのです。 わたしはお館様の寝込みを襲いお館様を亡き者とする。 それを聞いた秀吉殿が駆けつけ、逆賊 明智光秀を討ち取るのです」


「光秀殿! それでは余りにも光秀殿の名が!!」

羽柴秀吉は叫ぶが、明智光秀は秀吉に向き直ると微笑みフルフルと頭を横に振った。


「秀吉殿。 我らの悲願を成就させる為には、これは必要な事なのです。お館様亡き後、謀反人 明智光秀を討ち取った秀吉殿は世にお館様の後継者として認識され、ひいては泰平の世を作り上げる後押しともなりましょう。 わたしの事よりも、お館様の悲願達成を目指してくだされ」


「み… 光秀殿…」


「秀吉殿。そんな顔をしないでください」

明智光秀は羽柴秀吉の肩に手を置くと、ニコっと微笑んだ。


「サル。 光秀の言う通りじゃ。お主は光秀の策を成し遂げ、日の本に泰平の世をもたらすのじゃ」

信長は真剣な眼差しで羽柴秀吉を見ていた。


羽柴秀吉はうっすらと涙を浮かべ

「光秀殿。 ワシはずっと光秀殿が妬ましかった。いや、羨ましかったのだと思う。 何をするにしてもお館様の下にすぐに駆けつけ、一番近くでお館様のお役に立ち、いつもお館様のお考えをすぐに理解して実行する。 対してワシはバカだから、お館様のお考えを理解するまでに時間がかかり、どうしても出遅れてしまうのだ…」


「秀吉殿…」

明智光秀は優しい目で羽柴秀吉を見ていた。


羽柴秀吉は信長に真っ直ぐ向き直ると

「お館様! ワシは必ずや日の本を泰平の世に導き、更には、光秀殿の策を成し遂げ、100年後、200年後は誰もが明智光秀は謀反人であると信じて疑わない世を作り上げてみせます!」


「うむ。 サルよ、後を頼んだぞ」


「ははぁ! 身命を賭して、必ずや!!」


「うむ。  ロア、準備はよいか?」

信長がロアをチラッと見ると


「ボクはいつでも大丈夫だよ」

ロアはヘラヘラしながら頷いていた。


信長はもう一度、煙管で煙草に火をつけると大きく煙を吸った。信長は煙管の先でチリチリと赫くなる煙草を見ると、肺の中の煙を一気吐き出した。

「向こうでも煙草が飲めるとよいのぉ…」

小さくつぶやくと灰吸いに煙管をコンコンと叩き、灰を落として明智光秀を見た。


「光秀、やれ」


「はっ」

明智光秀は立ち上がり、深く腰を落とすと刀に手をかけた。次の瞬間、数歩離れていた信長の背後に立っており、刀は振り抜かれていた。


「うむ。良い腕じゃ」


「勿体なきお言葉でございます」


信長は今までに見た事がない、穏やかな顔になり

「皆のもの、大義であった」

一言発すると信長の首に赤い線が浮かび、信長の首はまるで信長の膝の上にそっと置いたように落ちてしまった。


明智光秀は武将達に向き直ると、信長の少し後ろに立ち自身の首に刀を当てる。


「秀吉殿、貴方はわたしを羨んでいたとおっしゃるが、わたしは貴方を羨んでいたのですよ…」

明智光秀は語りかけるように話し出した。


「光秀殿が… ワシを?」


「はい、気付いておられたか? お館様は我らを名前で呼ぶが、秀吉殿だけはサルとお呼びになる」


「それは、ワシがサルに似ておるから…」


「いいえ。 お館様は気に入らぬ者や、使えぬ者は容赦なくお切り捨てになられるお方。 本当に気に入らないのであれば、直ぐにでも切り捨てられていたでしょう。 しかし、秀吉殿は農民の出でありながら、その才覚でここまで上り詰めたのです。それはお館様は秀吉殿を気に留められていた証拠でしょう」


「そ、それは…」


「わたしは、そんな秀吉殿が羨ましかった。そう嫉妬するほどに羨ましかったのです。 ふふ、お互いがお互いを羨み、嫉妬していたとは… 本当に人は面白いものですな」


「あぁ、ワシもそう思う」

羽柴秀吉が、くくっと笑うと、明智光秀は、ふぅと一息つき


「秀吉殿、最後に武将としてではなく、友として話せた事を嬉しく思いますよ。 それでは、皆々様。後はよろしく頼みます! 御免っ!」

明智光秀は一度だけ微笑むと、一気に首に当てた刀を振り抜いた。


静かな本殿に、ゴトンっと音が響き明智光秀の首が床に転がっていた。

首を失った明智光秀の体は振り抜いた刀を床に刺し、仁王立ちのまま絶命していた。

それは、正に身命を賭して主君に忠義を誓うサムライの姿であった。


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