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Rev.ノブナカ  作者: わたぼうし
【1章】呪われた者達
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【19話】迎撃準備

翌日、迎撃準備のためミツヒデは村人たちと慌ただしく動いていた。



「ミツヒデさん、砦ってコレでいいの?」

ティアは出来上がった『砦』を見て、不安そうな顔をしていた。


「ホニードの襲撃までの時間がありません。それに限られた人数と資材を考えると、今できるのはコレくらいですね…」

ミツヒデは出来上がった『砦』を見ながら説明していた。


「まぁ、分かるけど… でも…コレで大丈夫なの?」


その『砦』は高さ1.5mくらいの杭を、50cm間隔で地面に打ち込んで村を囲い、村の入口に両開きの門を作っただけの物だった。


「大丈夫ですよ」

ミツヒデはニコっとティアに笑いかけるが、ティアや村人たちには不安しかなかった。


「さぁ、まだまだ準備する事があります! みなさん、頑張ってください!」

ミツヒデに押されるまま、村人たちは次の準備に向かった。


ふと、ミツヒデはティアを呼び止めると

「ティア殿、少しお伺いしますが、この村に弓矢はありますか?」


「え?弓矢ですか? いいえ、この村に弓矢はありません。狩で獲れる獲物はあたし達は食べることできませんので、狩をしないのです。 だから、弓矢は必要ない物なのです」


ミツヒデは少し考え、村人たちを集めると

「そうですか… では、準備を分担します」


キーノなど年齢層が高く非力な者たちは、板を集めて盾を作るグループ。

ティアなど若くて力強い者たちは、竹藪から竹を切り出して槍を作るグループ。

チカム、ヒカム、キカムなど子供たちは河原で石を集めてくるグループと3つに分けた。


各グループは自分たちが何をしてるのかあまり理解出来ていないが、とにかくミツヒデの言う通りにすればいいと信じ作業に取り組んでいる。


ミツヒデは村の入口の門に向かうと、少しだけ細工をして満足そうに門を眺めていた。


「ミツヒデ、順調か?」


「これはノブナガさま。 全て滞りなく進んでおります。この村の者達は、素直で愚直な者ばかりですな。この村に来て間もないわたしの言う事に文句も言わずに従ってくれています」


「ふむ。それがこの村の者たちの良いところでもあり、悪いところでもあるの。 あまりに愚直過ぎてヒトに虐げられ、巫女に騙されておるのじゃろう…」

ノブナガは村を見ながら、ため息をついていた。


「左様でございますな。 力を失った者が生きるには従うしかないのかもしれませんが…」

ミツヒデも村を見ながら、ため息をつく。


「そうじゃな。 ワシはそんな力を失った者も、笑って過ごせる世にしたいものじゃ」

ノブナガは強く拳を握りしめていた。




「ミツヒデーー! この石どこに置けばいいの?」

河原から両手いっぱいに石を集めたチカム達が、ヨタヨタしながらやってきた。


「おお!チカム殿! みなさん沢山集めましたな! さぁ、ここに集めておきましょう」

ミツヒデはニコニコしながら子供たちを迎え、村の通路の少し脇に石を置くように指示した。


チカム達は石を置くと、

「ミツヒデ、石はどれくらいあればいい?」


「そうですなぁ、あと2回同じ量を運んでくれますか?」

ミツヒデはしゃがんで子供たちの目線と合わせ、チカムの頭を撫でながらお願いをした。


「わかった!みんな、行こ!」

チカムは子供たちを連れて、河原へ走って行ってしまった。


「転ばないでくださいねー」

ミツヒデが走り去るチカムに声をかけると


「だいじょーーぶぅーー」

チカムは振り返ると手を振って応える。


「どこの世界も子供は元気じゃな」

ノブナガはウンウンと頷きながらチカムたちを見送っていた。



「ところでノブナガさま、巫女の方は何かわかりましたか?」

ミツヒデは声を潜め、表情を変えずにノブナガに話しかけた。


「うむ。どうやらあの寺には地下室があるようじゃ。巫女はその地下室で普段は過ごしてるらしい。 あの紫水晶もあの巫女が持って来た物らしく、舞う時以外は巫女が片付けているようじゃ」

ノブナガは『ホニードの襲撃について巫女に説明しておく必要がある』という理由をつけて、イルージュと巫女に話をしに行っていたのだ。

しかし話しは祭壇がある部屋で行われ、巫女の部屋である地下室に入れなかった。


「寺に地下室でございますか。 この世界では普通なのでしょうか?」


「うむ。もともとは遺体安置所として利用していたようだが、巫女の希望で巫女の部屋として使っているらしい…」


「遺体安置所を?」

ミツヒデが驚きノブナガを見ると


「うむ。屍らしいと思わんか?」

ノブナガはクククッと笑っていた。


「確かに… 屍らしいですな。ところでノブナガさま、巫女は生命力を集めて何をしようとしているのでしょう?」


「さぁな。 それはまだわからん…」


「左様でございますか…」

2人は「ふーむ…」と考え込んでいると、盾を作っていたグループが完成した盾を持ってやってきた。


「ミツヒデさま、盾が完成しました。 コレでよろしいでしょうか?」

完成した盾は4つ有り、縦1.5m、横1.0mの大きな板のようになっており、裏側に盾を持つ取手と、自立出来るように支柱が取り付けられていた。


「おお!キーノ殿! 素晴らしい出来でございます! では、その盾をこちらへ並べておきましょう」

ミツヒデは集めた石の前(村の入口側)に盾を並べ自立させた。


そこへティア達が竹槍を持ってやって来た。

竹槍は2種類有り、ひとつは長さが5mほどある長い槍。 もうひとつは長さか2mくらいの短い槍だった。


「ミツヒデ、コレでいいかな?」


「ティア殿。お疲れさまです。どれも良い出来ですね。 後は竹槍の先に刃を取り付けましょう」

ミツヒデは予め準備していた刃先… と言っても、各家庭で使用されている包丁や、先を尖らせた石を竹槍の先に取り付けていく。


「これで槍も完成しました。あとは、子供たちが石を集めてくれていますので、これで迎撃準備は完了です。みなさま、おつかれさまでした」

ミツヒデはニコっと笑ってティア達を労うと


キーノは軽く手を上げ、少し遠慮気味に声をあげた。

「あの… コレをどう使うのでしょうか?」


「はい。 それについては子供たちが帰ってきたら説明させて頂きます」

ミツヒデがそう言うと、ちょうど子供たちが石を持ってヨタヨタしながら帰ってきた。


「チカム殿、みなさん、お疲れさまでした。たくさん石も集まりましたし、少し休憩しましょう。 その後、皆さんに今回の策について説明させて頂きます」

ミツヒデはニヤリと笑って村人達を見ていた。

ミツヒデの自信とは反対に、迎撃準備に不安しかないティア達。そんな事は関係ないと言わんばかりに現れるホニード。


次回、襲撃


ぜひご覧ください!

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