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Rev.ノブナカ  作者: わたぼうし
【3章】ノブナガと王都騎士団
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【62話】王宮攻略

「いくぞぉ!!」


「おぉぉぉ!」

ノブナガの掛け声に応えるようにノブナガ軍が雄叫びをあげた。


「弓矢隊、火を放て!」

ノブナガは高く上げた右手を王宮に向けて振り下ろす。

それと同時に後方の弓矢部隊から無数の火矢が放たれた。

火矢は次々と王宮に飛び込み外壁を燃やすものや、窓を打ち破り王宮内部に火をつけるものがあった。


王宮はあっという間に炎に包まれ始める。

炎に驚いたのか、パニックを起こしたのか執務官や王宮内で働く男や女が玄関や窓から飛び出してきた。


「ミツヒデ!」


「はっ! 魔道銃部隊! 構えぇ!!」

ミツヒデは即座にノブナガの意図を理解し魔道銃部隊に指示を出す。


依然、王宮からは戦場から逃げ出そうとヒトが飛び出してきていた。


「撃て!」


『どぱぱぱぱぱぱぱーーーーん!!』

魔道銃が火を噴き、王宮から飛び出してきた男や女達が次々と撃ち殺されていく。


「ラーヴワス! セミコフ! 突撃じゃ!」

ノブナガの号令でラーヴワス率いる魔族部隊とセミコフ率いる獣人部隊が、王宮の玄関から突撃を開始した。


「ミツヒデ! フレカと共に国王を捕らえよ!」


「はっ! フレカ殿! 参るぞ!」

「は! はい!」

ミツヒデとフレカは魔族部隊について行くように王宮に入って行った。


「騎士団『セラフィム』はホニードと共に、王宮から逃げ出した者を捕えよ! 魔道銃部隊はその場で待機じゃ!」

次々と指示を出していくノブナガに圧倒されるように、各部隊が動いていた。



◇◇◇◇


正面玄関から突入したミツヒデとフレカの目の前には広々としたロビーがあり、奥にはアーチを描くようにふたつの大階段があった。

ロビーの両側には広い廊下が続いており、その奥に先ほど飛び出してきた使用人達がいたようだった。


セミコフの指揮で獣人部隊は二手に分かれ両側の廊下に向かい、ラーヴワスら魔族部隊は大階段に向かっていた。


「フレカ殿、国王はどこにいる?」

「王は、司令室だと思うけど…」

いつもガザム帝国やアクスムーン法王国と戦争する際、国王は司令室から指示を出していたのだ。


「それはどこにある?」

「4階です。 4階に上がった1番奥の部屋が司令室です」

「うむ、ならば一気に行くぞ」


ミツヒデとフレカが大階段を駆け上がっていると、そこにラーヴワスと大楯を装備したオーガ、騎士の盾を持ったオーガが3体とゴブリン3体が待っていた。


「よお、ミツヒデ。オレもお前らについていくよ」

ラーヴワスはニヤニヤしながら、赤い棍で肩をトントンと叩いていた。


「ラーヴワス殿は魔族部隊を統率しなくてよいのですか?」

ミツヒデが尋ねると


「ああ。あいつらには『国王を探せ。国王以外は殺せ』と命じている。あとは任せていて大丈夫だ」

ラーヴワスは笑いながら答えていた。


「なるほど、わかりました。では、一緒に参りましょう」

ミツヒデはワーヴワスの部隊に口を出すことはしない。

戦争下において、指揮命令系統は重要である。

ひとつの部隊の中においても部隊長を無視して勝手に指示・命令をした場合、その部隊の指揮命令系統は混乱し、その部隊は敗北する。

つまり『死』を意味するのだ。

まして、よその部隊長が指揮命令することなど、言語道断なのである。


過去、八甲田山で雪中訓練に多くの兵士が死亡した事故があった。

この事故は部隊長を無視した№2が勝手に指揮命令したことによる、指揮命令系統の混乱が要因のひとつであったともいわれている。


それほどに部隊にとって『指揮命令系統』は重要なのだ。

ミツヒデはそれをよく知っていた。

だから、ミツヒデはラーヴワスの部隊に口を出すことはしなかったのだ。


ミツヒデとフレカ、ラーヴワスらは4階にある『司令室』を目指して走り出した。


大階段を上がりきると、先ほどのロビーよりも広いフロアがあり、その奥に豪華で巨大な二枚扉があった。


「アレは?」

ミツヒデは立ち止まり、フレカに尋ねる。


「あそこは玉座の間です」

「玉座の間?」

「はい、王が国外からの使者や要人と接見する部屋です。 わたし達ロイヤルナイツや騎士などは、3階にある『謁見の間』で王に接見するのです」

フレカはそう言いながら上を指差していた。


「なるほど。つまり、ここは王国の威信をかけた部屋であるということか」

ミツヒデは興味深そうに辺りを見渡していた。


「なぁ! ちょっとだけ見ていいか?」

「オデも! オデも見たい!」

ラーヴワスとゴブリン達は、そう言いながら玉座の間の扉に向かって歩き出した。


「ラーヴワス殿!今はそれより国王の捜索です!4階の司令室へ向かいますよ!」

ミツヒデが叫んでラーヴワスを嗜める。


「そうは言ってもよ、この王宮は焼け落ちるんだろ? 今しか見れないじゃないか。 ちょっと見るだけだからさ」

ラーヴワスがロイヤルナイツに任命された頃は、まだアクロチェア王国は小さく、こんな立派な王宮を建てる力は無かったのだ。

ラーヴワスは両扉に手をかけると、ゆっくりと押し開いた。


「伏せろ!!」

ワーヴワスは叫び、倒れこむように床に這いつくばった。

ワーヴワスの声に反応してミツヒデとフレカも床に這いつくばる。


次の瞬間

『カカカカカカっ!』

乾いた音と共に開かれた両扉に衝撃が走り、扉の隙間から短い矢が数本飛び出してきた。


「ぎゃっ」

「ぐぁ」

ワーヴワスの声に反応できなかったゴブリンが、両扉から飛び出してきた矢に撃たれ血を噴き出して倒れていく。

オーガ達は咄嗟に盾を構え、なんとか矢から身を守っていた。


「何事ですか!」

ミツヒデが叫ぶ。


「玉座の間にいるぞ!」

ラーヴワスは叫びながら、扉の陰に身を隠した。


「国王がここに?」

ミツヒデはラーヴワスと反対側の扉の陰に身を隠しながら尋ねる。

フレカも慌ててミツヒデの隣にやってきた。


「あぁ、国王だけじゃない。 ロイヤルナイツのふたりもだ」

ラーヴワスはフレカを睨みながら、吐き捨てるように答えた。

その目はフレカに対し『怒り』の感情をあらわにしていた。


「ロイヤルナイツが? あやつらはあと数日帰ってこないはずでは?」

ミツヒデもフレカを見ると、フレカも驚いたように目を丸くしていた。


「ミナスリートとモニカが? なぜ?」

「それはこっちのセリフだ! お前、オレたちを騙したのか!」

ラーヴワスが大声でフレカを非難する。


「待って! わたしは騙してない! ミナスリート達はまだ帰ってこれないはずよ!」

「現にここにいるじゃないか! お前の先祖も平気でヒトを騙し、仲間だったオレもあっさりと殺そうとしていた! お前もか! お前もオレを騙し、殺そうとするのか!」

ラーヴワスの声の大きさに比例するように、怒りが大きくなっていく。


「違う! わたしは騙したりしない! 信じて!」

フレカも必死だった。

彼女は単純に『死にたくない』だけでリークを、そして王国を裏切ったのだ。

ここでノブナガを裏切ると完全に殺される。

フレカにとって、それだけは回避しなければならないことなのだ。

もし、ここでミナスリート達に付けばミツヒデらを殺すことが出来るかもしれない。

でもそのあとはどうなる?

王都は焼け、王宮の中も外もノブナガ軍が攻め込んでいる。

運よく王宮から脱出したとしても、『あの武器』で撃ち殺されるだろう。


(…ダメだ。 わたしが生き残れる道はミナスリートを殺すしかない)


「お願い!話を聞いて! わたしは王国を裏切った!ここで貴方達を裏切れば、わたしに生きる道は無くなるわ。 わたしは死にたくないの! だから王国を裏切ったの! お願い!信じて!」

フレカはラーヴワスに、そしてミツヒデに必死に訴えていた。


「わかりました」

ミツヒデが静かに答える。


「ミツヒデ!」

「ミツヒデさま!」

ラーヴワスは驚いたように、フレカは小さな希望を掴んだようにミツヒデを見た。


「ノブナガさまはフレカ殿を仲間として受け入れました。わたしはノブナガさまのご判断に従うまで」

「ミツヒデさま!! ありがとうございます!」

フレカは涙を流しながらミツヒデに頭を下げる。


ラーヴワスは「ふん」と鼻から息を吐き、少し間をおいてから大きくため息を吐いた。


「…そうか、わかった。まぁ、ここでこいつを殺すより、役に立ってもらう方がいいしな」

ラーヴワスはそう言うとフレカを睨み言葉を続けた。


「おい、フレカ。お前が先陣を切れ」



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