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Rev.ノブナカ  作者: わたぼうし
【3章】ノブナガと王都騎士団
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【60話】フレカ・ニイキル

「うわ! おもっ!!」

ホニードはリークの大楯を持ち上げようとしていたが、あまりの重さに持ち上げることが出来ず驚いていた、


「そんなに重いのか?」

セミコフが大楯を持ち上げようとする。


「おもっ!!」

セミコフは虎の獣人だ。ヒトよりも強靭な体と強い力を持っている。

そのセミコフでさえ、大楯を持ち上げることが出来なかった。


「リークさまは、こんな重い盾を軽々と扱っていたのか…」

ホニードにとってロイヤルナイツは全員が憧れのヒトだった。

今回、敵対してしまったが、本当は一緒に戦える仲間になって欲しかっただろう。

そんな気持ちが『リーク()()』と、無意識に言ってしまったのだ。


「その大楯はリークにしか扱えませんよ」

リダはホニードとセミコフの背後から声をかけた。


「やはり、神から授かった武器だからでしょうか?」

ホニードが尋ねると、ラーヴワスが


「オレらの武器はヒトが作った魔法の武器だ。 前にも言っただろう」

とため息まじりに答えていた。


「え? いや、まぁ、そうなんですが…」

ホニードが言葉を濁している横で、リダが目を丸くして固まっていた。


「リダ()()?」

ホニードが声をかけると、リダは『はっ』と我に戻りラーヴワスを見た。


「あの、今の話しは本当なのですか?」


「あぁ、間違いない。オレの棍もそいつらに作ってもらった魔法の武器だからな」

ラーヴワスは赤い棍を取り出して見せた。


「もしかしてあなたが6人目のロイヤルナイツ…?」


「おう。 オレは800年前、アクロチェエア王国 国王から初代ロイヤルナイツの称号を授かったラーヴワス・リナワルスだ」

ラーヴワスが胸を張ると、形のいい胸がプルンと揺れた。


「え? あいつが言ってた話しは本当だった…?」

リダは、投獄されたギルエと話したことを思い出していた。


◇◇◇◇


「ねぇ、ヴァナラ。 あなた、何をしたの?」

リダは鉄格子を挟んでギルエに話しかけていた。


「リダか… 何しに来た」

ギルエ(ヴァナラ)はチラッとリダを見て不機嫌そうに答えていた。


「えぇ? 冷たい。幼馴染がわざわざ来てあげたのよ? もう少し喜んでくれてもいいんじゃないの? それに、子供のころはわたしの名前『フレカ』って呼んでくれてたじゃない。『リダ』って呼ぶなんでちょっと寂しくない?」

リダ(本名:フレカ・ニイキル)は頬を膨らませて抗議していた。


「うるさい。用がないなら帰れ」


「用ならあるわよ。 ねぇ、ヴァナラ、あなた何をしたのよ。ノブナガ討伐を失敗しただけで、こんなことならないでしょ?」

フレカの言うことはもっともだった。

普通、任務を失敗した場合、敵の情報から騎士団の構成を再検討し体制を整えて再度任務にあたるものだ。

確かに損害を出しているため責任を取らさえることはあるが、ギルエのように投獄されることはない。


(ヴァナラの性格なら、王国を裏切るようなことはしないだろうし…)

フレカはギルエがなぜ投獄されたのか分からなかったのだ。


「なんでもない。 オレは任務を失敗した。だから、ここにいる」

ヴァナラは不貞腐れるように答えていた。


「それはあり得ないわ。 わたしだって任務を失敗した事ある。 でも、それで投獄された事なんてないもの。 あなたがそれ以上の事をした… 例えば、王国を裏切った… とか」

フレカの言葉にヴァナラはピクッと反応した。


「え? まさか、ホントに裏切ったの?」

目を丸くしてフレカが大きめの声を出すと、ヴァナラは人差し指を口に当てて『シーー』と声を抑えろと意思表示した。


「あっ」

フレカは思わず両手で口を押さえ、辺りをキョロキョロと見る。

牢屋兵は地上にある休憩室にいるようで、辺りには誰もいなかった。


「お前は、昔から変わらないな…」

ヴァナラは苦笑いを浮かべると、真剣な顔になりフレカに近づき小さめの声で話し出した。


「フレカ、お前も知っているだろう? あのお伽話を」

ヴァナラはロイヤルナイツの家だけに伝わる『お伽話』の話を始めた。


「え? えぇ、もちろん知っているわ。 それが何?」


「あのお伽話は真実だった」

ヴァナラが辺りに注意しながら囁く。


「は? 何言ってるの?」


「居たんだ。6人目のロイヤルナイツが。オレはそいつと会って話をした」


「ちょっと待って。 ヴァナラ、あんた頭がおかしくなった?」

フレカは心配そうにヴァナラを見ていた。


「本当なんだ。 昔、王国には獣人もヒト族と一緒に暮らしていた。 そして、その6人目のロイヤルナイツは獣人だったんだ」

ヴァナラの話にフレカは『可哀想な人』を見る目になり、軽く頭を横に振っていた。


「あのね、ヴァナラ。 アレはお伽話。 作られたお話なの。いくら現実がイヤだからってお伽話に逃げちゃダメ。 それに、もし、その6人目が生きていたとしら800歳は超えているのよ? ありえないわ」

フレカは優しく諭すように話していた。


「本当なんだって! 昔の王国はヒトも獣人も関係なく仲良く暮らしていた。 でも、王国の策略で獣人が虐げられるようになったんだ。 メルギドはそんな昔の平和な王国のような町だったんだ。 今の王国は間違っている! あの頃の王国に戻さなければならないんだ!」

ヴァナラは少し興奮して声が大きくなっていた。


「なるほどね。 あなた、それを王さまに言ったんだ」


「あぁ。 それが王国の本来の姿なんだから…」

ヴァナラは鉄格子を掴み、力無く答えていた。


「ヴァナラ… いや、ギルエ。わたし達はロイヤルナイツなのよ? 神から授かった武器で王国民を守る。その為にわたし達はいるの。 王国の本来の姿? そんなものは王族に任せておけばいい。 わたし達はこの素晴らしい武器で戦う事が使命なのよ?」

フレカはうっとりした目で、いつも手にしている弓をイメージしていた。


「それ、神から授かってないぞ? それはヒトが作った魔法の武器だ。 それに、お前はその弓で弱いヤツを射抜きたいだけだろ」

ヴァナラは軽蔑するようにフレカを見る。


「は? そんな事ないし? わたしは使命だから仕方なく殺してるだけだし? てか、なに? この武器、ヒトが作ったの? ウソでしょ?」


「いや、本当だ。オレたちの武器は神から授かっていない。ヒトが作った魔法の武器だ」


「ちょっと、冗談はやめて! それじゃ、わたしが特別じゃないみたいじゃない! わたしは特別なの! この神から授かった武器はわたしにしか使えない特別な武器なの!」

フレカが反論すが、ヴァナラは憐れみの目になりフレカを黙って見ているだけだった。


「そんな目で見ないで! わたしは特別! わたしは神から愛された特別な女なの!」

フレカは立ち上がり胸に右手を当てながら主張した。


「……ほんと、お前は変わらないな」

ヴァナラはため息を吐く。


「まぁ、あなたがくだらない夢を見てここにいる事は、よくわかったわ」

フレカはそう言うと、膝をパンパンとはたきヴァナラに背を向ける。


「わたしは王国がどうとか、種族がどうとか興味ないわ。 わたしはわたしが楽しく生きていければそれでいいの。 ヴァナラ、あなたはあなたの夢を見て死になさい」

フレカはそう吐き捨てると、地下牢を出ようと歩きだした。


「フレカ、お前の言う『楽しい』とは『殺戮』じゃないのか? お前のその力は『殺戮』のためだけに使うのか? お前ならヒトも獣人も亜人も救えるんじゃないのか?」

ヴァナラがフレカの背中に叫ぶ。


「は? 誰かを救う? そんな事、興味ないわ。 わたしはわたしの『楽しみ』のためだけに力を使うだけ。 あなたみたいなアツいヤツがわたしの圧倒的な力の前に倒れる… ふふ、想像しただけでも濡れちゃうわ」

フレカは残忍な笑みを浮かべながら、頬を紅潮させ、目を潤ませながら妖しく唇を舐めていた。


「フレカ!」

ヴァナラが叫ぶが、フレカは振り向く事なく手をヒラヒラと振るだけだった。


フレカはそのまま地下牢の登り階段付近まで歩くと、不意に振り向いた。


「それじゃ、ご機嫌よう。 次に会うのは来世かしら?」

フレカは笑いながら地下牢を出ていった。



◇◇◇◇



(まさか、あの話しが本当だったなんて…)

リダはラーヴワスを見ていた。


「なんだ?」

ラーヴワスが尋ねると、リダは慌てたように笑みを作り


「あ、いえ。ヴァナラ… いえ、ギルエから聞いていたのですが、正直信じられなかったので… 改めて、6人目のロイヤルナイツに会えた事に感動しているのです」

リダは優しい笑みを浮かべ、軽くお辞儀する。


「そうか! そうか! お前の先祖は怖かったけど、お前はいいやつだな!」

ラーヴワスはご機嫌になりリダの肩をバンバンと叩く。

リダは若干、顔を引き攣らせて痛みに耐えているが、ラーヴワスの機嫌を損ねないよう愛想笑いを浮かべていた。


その時、リダの視界に魔道銃を持った兵士が映った。


(それにしても、あの武器は何? あんなの反則じゃない)

リダは魔道銃を見ていた。


「リダ殿、ノブナガさまがお待ちです」

その時、ミツヒデが背後から声をかけてきた。


「え? あ! はい!」

リダは慌ててミツヒデの方を向き、背筋を伸ばす。


「こちらへ」

リダはミツヒデに付いて歩いていった。

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