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Rev.ノブナカ  作者: わたぼうし
【1章】呪われた者達
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【12話】ソテの実のパン

「ノブナガ、ミツヒデ。 おはよう」

ティアの声でノブナガとミツヒデは目を覚ました。


「ん? もう朝か…」

ノブナガは体を起こすと、「んーーっ」と声を上げながら背筋を伸ばした。


「よく眠れた?」

ティアはニコニコしながらノブナガたちの顔を見ていた。


「うむ。よく寝たのじゃが… 体が痛いの」

ノブナガは苦笑いしながら答えていた。


「左様でございますな。 わたしも体のあちこちが固まっています…」

ミツヒデは腕や腰を回して体をほぐしていた。


「ノブナガもミツヒデも軟弱だなぁ」

ふふふふとティアは笑いながら焚き火の火を起こしていた。


「そうじゃな。 ワシもミツヒデもまだまだじゃな」

あはははと、ノブナガが楽しそうに笑っていると


「おはようございます。 ノブナガさま、朝からご機嫌ですね」

イルージュがクスクス笑いながら入ってきた。


「おお、イルージュ、おはよう。 ワシはこんなにも楽しい朝を迎えたのは久しぶりじゃ」

ノブナガが体をほぐしながら笑うと


「左様でございますなぁ」

ミツヒデも楽しそうに笑っていた。


「ノブナガさま、ミツヒデさま。お食事の用意をしますのでしばらくお待ちください。 とは言っても、たいした事はできませんが…」

イルージュは苦笑いをしながら、木の実をすり潰し始めていた。


「おお、突然来たのに… かたじけない」

ノブナガは頭を下げると、イルージュの料理を興味深そうに見ていた。


「イルージュ殿、それは何という木の実ですか?」

ミツヒデも興味深そうにイルージュの手元を見ている。


「コレはソテの実です。 そのままでは食べれませんが、一度火を通してから乾燥させて粉にすれば食べる事ができるのです」

イルージュは説明しながら手際良くソテの実を粉にし、丸めて焚き火で焼いてノブナガとミツヒデの前に置いた。


「どうぞ、ソテの実のパンです」


「ほぉ、ソテの実というのか… 見た目は焼き団子のようじゃな」

ノブナガはソテの実のパンを口に運ぶ…


「美味い! コレは美味いの!」

焼きたてのソテの実のパンは、生地がふわふわでほんのりと甘く上質な食パンのようだった。


「おお! このような食べ物は初めてでございます!」

ミツヒデも驚きながら、ソテの実のパンを食べていた。


「ふふ、お口にあってよかったです」

イルージュはニコニコしながらノブナガとミツヒデを見ていた。


「お主らは食べんのか?」

ノブナガは、パンに手をつけようとしないイルージュとティアに気がつき声をかける。


「わ… わたし達はもう食べてきましたので…」

イルージュがオロオロしながら答えると


『ぐぎゅうぅぅぅ…』

ティアの腹が鳴いた。


「………」

「………」

イルージュは小さな声で「こらっ」と言いながらティアの顔を見た。ティアは自分の腹に驚き、申し訳なさそうに俯き胃の辺りをギューっと抑えている。


「ははは。ティアの腹は正直じゃな。 ほら、お主たちも食え。メシは大勢で食う方が美味いのじゃ」


「で… ですが… コレはノブナガさま達の…」

イルージュが断ろうとすると


「イルージュ、ワシはノブナガじゃ。ヒト様ではない。 そうじゃろ?」

ノブナガはニコッと笑う。


「…よろしいのでしょうか?」

イルージュはまだ戸惑っていると


「……では、頂きます!」

ティアは焼き立てのソテのパンを手に取り、香りを楽しんでからパクッと一口食べた。

イルージュがおどろいていると


「お… おいひい!!」

ティアは両手で頬を押さえて幸せそうな顔をしていた。


「こら! ティア!」

イルージュがティアを叱ろうとするが


「よいよい、ティアの幸せそうな顔を見ていると、ワシも嬉しくなる。ほれ、イルージュも食え」

ノブナガは楽しそうにソテのパンをイルージュに手渡す。


「そ… それでは、頂きます」

イルージュは遠慮がちにソテのパンを口に運ぶと、その顔はみるみる幸せそうな顔になっていた。


「お主らは、本当によく似た親子じゃな」

ノブナガは楽しそうにティア達を見ていた。


「イルージュ殿、村の方達はこのパンを食べないのですか? 貴方達を見ていると、初めて食べたかのように見えるのですが…」

ミツヒデが聞くと


「このパンはお客様が来られた時にお出しするもので、わたし達は食べることはできません。昔はわたし達の主食だったそうですが、『ヒト様』から食べる事を禁じられております」


「また、ヒト様… か」

ノブナガはイライラしているようだった。


「ノブナガさま、まずは状況の確認からでございます…」

ミツヒデはイライラし始めていたノブナガを抑え、話しを進める事にした。


「イルージュ殿、ティア殿。 よろしければこの国や町の事を教えて頂きたいのだが…」


「はい、いいよね? 母さま」

ティアがイルージュに伺うと


「もちろんです。 ティア、ノブナガさまとミツヒデさまがお聞きになりたい事に答えなさい。 わたしはお祈りの時間なので一度席を外しますね」


「はい」

ティアが返事をすると


「ノブナガさま、ミツヒデさま。 わたしは少し席を外させていただきます。 ティアを置いて行きますので、何でもお聞きください」


「おぉ、忙しいところ申し訳ない」

ノブナガは頭を下げて、イルージュが出て行くのを見送った。


「ティア殿はお祈りは行かなくてもよかったのですか?」

ミツヒデはティアに確認すると


「はい。母さまが行けば大丈夫です。村の人達も集まるし… 1人くらい居なくてもバレませんよ」

ティアはカラカラと笑う。


「それなら良いのですが」


「ふむ、ティア。 お主、話し方がくだけてきたの」

ノブナガがニコニコしながらティアを見ると、ティアはハッとしたように両手で口を押さえ


「も… 申し訳ありません…」

と頭を下げた。


「いや、いいのじゃ。ティアの言葉がくだけているのがワシは嬉しいのじゃ。 何も気にせず、村の者と話すようにワシらとも話してくれ」


「いいの?」

ティアが上目遣いでノブナガを見ると


「もちろんじゃ」

ノブナガが笑うと


「そうですよ。ティア殿。わたし達は友ではないですか」

ミツヒデも笑っていた。


「よかったぁ。あたし、敬語って慣れてないのよね。 だから、なるべく喋らないようにしてたんだ」

ティアはカラカラと笑いながら、ノブナガとミツヒデの肩をバンバンと叩いて笑っていた。


「これが… 素のティアなんじゃな…」

ノブナガとミツヒデはお互いに顔を見合わせて苦笑いしていた。

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