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Rev.ノブナカ  作者: わたぼうし
【3章】ノブナガと王都騎士団
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【29話】ミツヒデの策

あけましておめでとうございます。

本年もRev.ノブナガをよろしくお願いします。


「ノブナガさま、現在の我らの戦力をふまえ、わたしの策についてご説明します」

ミツヒデは一度頭を下げると、ゆっくりと顔を上げ不敵な笑みを浮かべる。


「うむ」

ノブナガは頷き、ミツヒデに策について話すことを了承した。


「ノブナガさまがご不在の間に、この世界についてある程度調べてみました。 ここアクロチェア王国の隣国としてアクスムーン法王国とガザム帝国があり、お互いに睨み合っているのはご存知のとおりです。 この他、付近には隠れ里のような小さな獣人の国や、半獣人の国が点在しております。 ヒト以外で大きな国を持つのはドワーフやエルフと呼ばれる亜人種などがいるようでした」


「ドワーフとは、先程お主が鉄砲を作らせておると言っていたあの者じゃな?」

ノブナガの質問にミツヒデは頷き


「左様でございます。 ですが、鉄砲を作らせているドワーフはメルギドに住み着いた者で、ドワーフの国には属していないようです」

ミツヒデは間違いがないか確認するようにソレメルを見た。


「はい、そのドワーフは我が町に住む者で、ドワーフの中では『変わり者』のようです」

ミツヒデの説明にソレメルがドワーフについて補足する。


「変わり者?」

ノブナガは『変わり者』と呼ばれるドワーフに興味があるようで、目を輝かせてソレメルを見ていた。


「はい、元来ドワーフは伝統を重んじる種族で、自国から出ることも少ないのです。 ドワーフが作る武器や防具は細かな装飾が施されており、武具としての性能はもちろん、見た目の美しさにも拘った物が多いのです。 ですが、たまに伝統よりも新しいモノが好きな者もおり、国を出てヒトの町に住み着いたり、各地を放浪するドワーフもいるのです」


「なるほどのぉ。 どこにでも変わり者と呼ばれる者はおるものじゃな」

ノブナガは過去、自分が傾奇者と呼ばれていた事を思い出し、そのドワーフと会ってみたいと考えていた。



「よろしいでしょうか?」

ミツヒデはノブナガに静かに尋ねると、ノブナガは「うむ」とだけ答える。


「アクロチェア王国の戦力についても調べました。 アクロチェア王国の主な戦力はロイヤルナイツをはじめとした騎士団です。 先日のヤールガ殿は騎士団の中でも下流だと言っていましたので、本国には相当の力を持った騎士団がいるものと考えられます。 また、ロイヤルナイツに至っては憧れる民も多く、神から授かった専用の武器を持っているとの事でした」

ミツヒデの説明にノブナガはチラっとラーヴワスを見ると


「ラーヴワス、ロイヤルナイツの武器は神から授かったのか?」

と、ノブナガは答えを知っていながら()()()尋ねた。


「確かに強力な魔法の武器ではあるが、神から授かってなんかないぞ。 当時、アクロチェア王国には魔法の武器研究所があって、そこでオレたち専用の魔法の武器を作ったんだ」

ラーヴワスはそう言いながら頭の中にてを突っ込んで、髪を留めていた赤い棍を取り出した。

ラーヴワスの赤い髪は更にボリュームを増し、ますます猩猩のようになっていた。


「それが魔法の武器… ですか…」

ソレメルやミツヒデたちは物珍しそうに赤い棍を見ていた。そんな中、元来武器コレクターでもあるホニードは、憧れのロイヤルナイツの武器を間近で見れた事もあり、まるで子供のように目を輝かせていた。


(やはり神から授かった武器ではありませんでしたか。 そもそもロア殿の言動からヒト種族だけに加担するような事はしないだろうとは思っていましたが…)

ロアは事あるごとに「ボク神さまなんだから、全てのものに平等でなければならないんだよ」と言い、誰かだけを特別に助ける事はしないのだ。

ノブナガとミツヒデにしても最初に若返りと身体能力の向上をしただけで、基本的にはロアは手を出さなかった。そんなロアがヒト種族にだけに武器を与えるとはミツヒデは考えられなかったのだ。


ミツヒデは自分の推理は正しかったと確認し、策についても問題ないだろうと考えていた。


もし、ロアが何かの気紛れでヒト種族に武器を授けていたとしたら、いったいどんな武器でどれほど強力な物なのか想像もつかなかったのだ。

この世界では魔法という強い力があるが、ヒトが作り出した武器ならある程度限界があり、対処も可能であろう。

ミツヒテはそう考えていた。


「騎士団以外の戦力としては各町にいる自警団と、この世界にいる冒険者と呼ばれる者達です。 ただ冒険者はいわゆる傭兵団と同じで金しだいでは我らの兵とする事も可能です」

ノブナガはうんうんと頷き、ミツヒデの説明を黙って聞いていた。


「さて、ノブナガさま。 これらを踏まえ結論を申しますと、アクロチェア王国を倒す事は可能だと考えます」

ミツヒデの言葉にソレメルやホニード達は驚愕し、ザワザワとし始めていた。


「ですが、我らにも相当の被害が出ると考えられます。 先程も申しましたが、アクロチェア王国とアクスムーン法王国、ガザム帝国はお互いに睨み合う事で均衡を保っております。 つまり、この三国はほぼ同等の戦力を有していると考えられます」


「うむ。そうじゃろうな…」

ノブナガもミツヒデの考えに同意する。


「なので、もし今、我らがアクロチェア王国を倒したとしても、戦で疲弊したところをアクスムーン法王国かガザム帝国に攻撃され敗北する事が目に見えております」

ミツヒデはノブナガの顔を伺い、自分の考えがノブナガの考えと相違ない事を確認し話を続ける。


「よって、我らが勝つ条件としてはアクロチェア王国に()()()()()で勝つか、アクスムーン法王国もしくはガザム帝国と手を結んでから戦に臨む必要があると考えております」

ミツヒデの説明を聞いたノブナガは胡座をかくと、両腕を組み「ふむ」と短く答える。


「ミツヒデよ、手を結ぶとしてアクスムーンとガザム… どちらが良いと考える?」


「はっ。 ガザム帝国と手を結ぶべきだと考えております」

ミツヒデは頭を下げて答える。


「なぜじゃ?」

ノブナガは胡座から片膝を立て、膝に腕を乗せてミツヒデを見ていた。


「どちらもヒト種族が支配する国ですが、アクスムーン法王国はアクロチェア王国ほどではありませんがヒト種族を優先しております。 よって、我ら獣人や半獣人などが集まる国とは考え方が根本的に違います。 一方、ガザム帝国は種族よりも力を尊重しております。 聞いたところによると、ガザム帝国には獣人の部隊長もいるそうです。 我らの力を示せば友好的な関係も築けるやもしれません。 ですが、あくまでもアクスムーン法王国よりは可能性がある… と、いう程度です」


「そうじゃろうな。 じゃが、それは()()()()であれば…の話しじゃ。 鉄砲を作り、我らの圧倒的な力を示せば我らを無視できなくなるじゃろう」

ノブナガはニヤリと笑いながらミツヒデを見ていた。


「おっしゃる通りでございます。 すでにその準備としてドワーフに鉄砲を作らせ、町の男たち集めて鉄砲隊を編成中でごさいます」

ミツヒデがチラッとソレメルを見ると、ソレメルは軽く頭を下げ


「現在、隊員を集めており順調に人数を増やしております。 ただ、わたしを含め『鉄砲』という物が分かりませんので、現在は基礎体力をつける訓練をしているところです」

ソレメルの報告に、ノブナガは満足そうに笑って頷いていた。


「して、ミツヒデ。 準備が整うのにどれくらいの時間が必要じゃ?」


「おそらくは2年〜3年は必要かと…」


「なるほど。 ならば、準備が整うまではこの事は極秘とするのじゃ。 王国はもちろんアクスムーンにもガザムにも情報は流さないよう留意せよ」


「はっ。 つきましてはノブナガさま、お願いがあります」

ミツヒデは深く頭を下げて、ノブナガの返事を待った。


「なんじゃ? 申してみよ」


「恐れながら、ノブナガさまには安土城の城主として、そしてキシュリ殿には姫として振る舞って頂くとで、安土城をメルギドの新しい()()としたく存じます。 安土城を名所とする事で金を集め、新たな武器や砦を作り、より強固な城壁を築きたく存じます」

ミツヒデの申し出にノブナガは、うむむ…と少しだけ考え


「わかった。 ワシだけが何もせん訳にはいくまい」

と、ミツヒデの申し出を了承したのだった。


ノブナガの背後ではキシュリが嬉しそうに両手を合わせ微笑み、事前に打ち合わせていたのかソレメル達も、ほっと胸を撫で下ろしていた。



「では、安土城 城主ノブナガさま、キシュリ姫。 これからどうぞよろしくお願い申し上げます」

ミツヒデが深々と頭を下げるのに合わせ、ソレメルやイルージュ、ホニードたちも頭を下げた。

ここ異世界で安土城 城主ノブナガが誕生し、ミツヒデの策が開始されたのだった。

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