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Rev.ノブナカ  作者: わたぼうし
【3章】ノブナガと王都騎士団
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【28話】面白い世界

ラーヴワスが過去の話を始めようとした時、ノブナガはふと思い出した。


(こやつの話しは長い!)


「ラーヴワスに代わり、ワシが簡単に説明してやろう」

ノブナガは片手で合図してラーヴワスに留まるよう指示する。


「ええ? 大丈夫、オレ、ちゃんと説明できるぞ?」

ラーヴワスは不満そうな顔でノブナガを見ていた。


「お主の話しは長いのじゃ。 今はゆっくり聞いておる時間はないのじゃ。 お主はそこに座っておれ」

ノブナガはピシャリとラーヴワスの話を遮った。

ラーヴワスはしぶしぶその場に座ると、不貞腐れるように頬を膨らましていた。


ノブナガはそれを無視すると、ラーヴワスの生い立ちについて話し始めた。

その内容はこうだった。


ラーヴワスは獣王ザザンに一度は敗北したが、アクロチェア王国でロイヤルナイツの1人として活躍し、見事にザザンから勝利をもぎ取った。

ちょうどこの頃、アクロチェア国王は金を集める為に悪事を働いていた事が国民にバレそうになり、獣人に全ての罪をなすりつけて殺した。


王国はラーヴワスも獣人であるため、悪事の首謀者として処刑する事も考えた。しかし、ロイヤルナイツであるラーヴワスを同じ罪で殺すと、ロイヤルナイツに任命した国王が責任を問われると考え、ラーヴワスは魔物達と共に地下に捕らえられる事になった。

こうしてラーヴワスは国民から隠されてしまった。


ある時、ラーヴワスは一緒に捕らえられていた魔物達と脱走に成功し、魔物達と王都から逃げ出した。

これを王国は情報操作し『獣人が魔物を連れて王都を襲撃したのをロイヤルナイツが追い払った』と国民に伝えた。

国王は、この事件を機に『ヒト種族至上主義』を掲げるようになったのだ。


一方、ラーヴワスはロイヤルナイツから命からがら逃げる事に成功し、一緒に逃げた魔物『ゴブリン』達と、森の洞窟に隠れ住むようになった。



ノブナガが簡単に説明した事で、ラーヴワスの生い立ちについて短い時間でミツヒデたちに説明する事ができた。

しかし、ラーヴワス本人からすると物足りないようで、チラチラとノブナガの顔を見ていた。


「後にせい」


ノブナガはチラチラと見てくるラーヴワスに、一言だけ言ってラーヴワスを黙らせてしまった。


「さて、ミツヒデ。 お主の策を聞かせてくれるか」


「はっ。 恐れながら、ご説明させて頂きます」

ミツヒデは胡座で座り、両拳を床に着いて深く頭を下げた。


「まず、我らの現状の戦力についてご説明します」

ミツヒデは頭を上げると、真剣な目になりノブナガを見る。

ノブナガは黙ったまま頷き、ミツヒデに了承の意を伝えた。


「まず、月女族。実戦ではティア殿を筆頭に15名程が戦えます」

ミツヒデの言葉をティアは頭を下げて肯定し、イルージュも黙って頷く。


「続いて元獣人解放軍のセミコフ殿。 セミコフ殿の配下には約50名の戦士と、約20名の魔法使いがいます。 ゆくゆくは魔法使いだけの部隊を独立させたいのですが、現状では部隊を任せられる魔法使いがいないためセミコフ殿の配下としております」

セミコフは胸を張り力強い笑顔を見せた。


「そして半獣人たちを束ねるカーテ殿。 半獣人たちは30名ほどいるのですが、みな商人として活動し情報操作をしてきた事もありますので、戦場で戦うよりも各国へ赴き情報収集などの任務が適任だと具申します」

カーテは真剣な顔で頭を下げていた。


「カーテ。お主らはある程度の戦闘も出来るじゃろう? 以前のチトナプでの戦では、みながよく戦っておるように見たのじゃが… どうじゃ?」

ノブナガは鋭い目でカーテを見て質問した。


「はい。我々はセミコフ達程ではありませんが、ある程度なら戦える自信があります」


「うむ。 ならば、カーテら半獣人達は忍として働いてもらおう。 よいな?ミツヒデ」


「はっ。 承知しました」

ミツヒデは頭を下げながら、今後のカーテら半獣人達の使い方を考えていた。


「ノ… ノブナガさま。 シノビとは、いったいどのような仕事でしょうか?」

カーテは初めて聞く『忍』という仕事のイメージが出来なかったのだ。

それに答えたのはミツヒデだった。


「カーテ殿。 忍とは各国で情報収集や情報操作、必要ならば破壊工作や暗殺など暗部の仕事を行う者達です。まぁ、破壊工作や暗殺などは稀ですが、無いとは言えないですね」

ミツヒデが淡々と説明する。


「あ… 暗殺?」

カーテが少し驚きながら復唱していると


「ええ、必要ならば… です」

ミツヒデはニコっと笑い答えていた。


「そう心配するな。 ワシは暗殺は好かん。やるなら戦じゃ」

軽快に笑いながら答えるノブナガにカーテは軽く笑いで応えていたが、その目は真剣で覚悟が宿っていた。


「続いて協力者であるソレメル殿。

先程、ご紹介したようにソレメル殿には秘書と役員と呼ぶ家臣がおり、主に内政や外交などを得意としております。

我々はこの世界に疎い部分もありますので、ソレメル殿の知識は大変有用なモノとなるでしょう」

ミツヒデの説明に、ノブナガは「そうじゃな」と短く答え頷いていた。


「最後にホニード殿。 ご存知のようにこの町の自警団団長であり、バハカイ副団長とユソルペ副団長を配下にし、各々50名ほどの戦士を従えております。 また、ホニード団長直属の精鋭部隊10名も組織しており、町を守る重要な戦力として活躍しております」


「うむ。自警団の力は把握しており、ワシも一目置いておる」

ノブナガの言葉にホニードは嬉しそうにしていた。


「あとは、アネッサ殿のゾンビ部隊ですが、これは状況や場所の影響を受けることがあります。 とは言うものの戦力としてはかなり大きく、上手く立ち回れば戦況を左右する事になるでしょう」

ミツヒデがチラッとアネッサを見ると


「わたしは月女族(むすめ)達の為にここに居るの。 これから先、月女族(むすめ)達が幸せに暮らせるなら、協力してあげてもいいわ」

アネッサは少しツンとした態度でミツヒデの言葉を補足していた。


「ああ、分かっておる。 お主は月女族(むすめ)達のために戦えばよい。 ワシは民のために戦う。その中にお主も、お主が大切にする月女族(むすめ)も、獣人や半獣人も全てが含まれておるのじゃからな」

ノブナガは微笑みながらアネッサに答えていた。


「な… なによ」

ノブナガの答えを聞いたアネッサは、どこか少し嬉しそうにしながらもソレを隠すように頬を膨らませていた。



「ノブナガさま、あとは今回、ノブナガさまの戦友(とも)となられたラーヴワス殿が入ります」


「うむ。ラーヴワスの力はワシが保証する。 ワシやミツヒデと同等の力を持っておる。 あとはラーヴワスの家臣じゃが、お主らも会ったようにゴブリンなどの魔物共じゃ。 その数は… どれくらいじゃ?」

ノブナガの問いにラーヴワスは、「ん?」と答えて中空を見ながら考える。


「そうだな… オレの世話をさせていたゴブリン共はすぐに数が増えるから、正直分からん。 まあ、300はいると思うぞ。 あとはホブゴブリンやオーク、オーガ… トロルなどだな」

ラーヴワスはニコっと笑うが、その答えに驚いたのはソレメル達だった。


「さ… 300?? それに、オーガやトロル!?」

先日、メルギドにきたラーヴワスと共にいたゴブリンは数十体程度だったのだ。

さらにオークやオーガ、トロル()()がいる。

いま、メルギドの近くの森は元々いた魔物に加えラーヴワスの仲間が増えたことで、魔物の巣窟と呼ばれてもおかしくない状態になっているのだ。



「ラーヴワス殿、その… 魔物たちはヒトを襲ったりしないのだろうか? 町の者たちや町にくる商人たちは大丈夫なのだろうか?」

町長であるソレメルには当然の疑問であり、不安でもあった。


「ん? ああ、大丈夫だ。 やつらにはヒトを襲うなと言い聞かせているし、それにそもそもお前たちが襲わなければ、ゴブリン共はヒトを襲わない」

ラーヴワスの答えに反応したのはホニードだった。


「ヒトを襲わない? オレたちは何人もゴブリンに襲われる町のヒトを見てきたぞ。 そんな言葉を信じられるとでも思うのか?」

少し苛立ちも含んだホニードの言葉に、ラーヴワスは少し考えてから答える。


「え…と、ホニード…?殿。 あいつらにも知性はあり、感情もある。 あいつらはお前達ヒトに殺されるから、殺される前に殺そうとするんだ。 お前たちだって同じだろ? 確かに、魔物はヒトを食う。だが、それは他に食う物がない時なんだ。 食い物があって、お前たちに襲われないなら魔物共は人間を襲わない」


「うむ。 確かにラーヴワスら魔物共がこの町に来る道中で、ヒトが襲われたという話しは聞かなかった。 何人にも目撃はされておったがな…」


ラーヴワスはノブナガに『何人にも目撃されていた』と言われ、頭を掻きながら「へへへ」と笑って誤魔化していた。


「…たしかに。 魔物の集団がメルギドに向かっていると情報はいくつもあったが、誰かが襲われたとちう話しは聞いていない。 それよりも、妙にエロい女がフラフラ歩いているらしいという話しばかりだった…」

ホニードが聞いていた情報に、ソレメルやカーテ、セミコフもうんうんと頷く。


「エロい女って…… オレ?」

ラーヴワスはキョロキョロしながら自分を指差し


「それしかあるまい」

ノブナガが半笑いでこたえる。


「ラーヴワス殿、あなたの話は分かりました。 ここにいる私たちはあなたを信じる事にしましょう」

ソレメルが全員の意をまとめると、ラーヴワスはホッとしたように笑う。


「ですが、町の者や街道を行き来する商人達は、そうはいかないでしょう。 なので、魔物達にはなるべくヒトに姿を見られないようにしてもらえませんか?」

ソレメルは真剣な目でラーヴワスに提案する。


「んー… オレの仲間ならそう言い聞かせるけど、元々森にいる魔物は勝手にヒトを襲うだろうからなぁ。 それをオレたちのせいにされても困るし… どすればいいか…」

ラーヴワスが悩んでいると、ミツヒデがポンと手を叩いて全員の視線を集めた。


「ラーヴワス殿。 ならば、森に住む魔物共も仲間にすればよいのではないか? 町の者に聞いた事があるのですが、魔物は自分より強い者に従うのでしょう?」


「なるほど、森に住む魔物を全員ボコボコにしたらいいのか… なんだ、簡単だな」

ラーヴワスは不敵な笑みをこぼす。


「それと、ソレメル殿。 町の外れに魔物の町を作るのはどうだろう? 森に隠れ住ませていると、いつかヒトと襲うかもしれないと考える続ける事になるでしょう。 ならば、いっそ魔物の町を作りそこで生活させておけば管理もできるでしょう。 それに、いつかは町のヒトと魔物達が仲良くなれる日がくるやもしれん」


「魔物の町… ですか…」


「ええ、魔物の町です。 いつかお互いが行き来し商いをするようになる。そんな面白い世界になるのではないでしょうか」

ミツヒデの提案にソレメルは「ふーむ…」と考えていた。その顔はどこか楽しそうで、そんな『面白い世界』を作りたいと考えているように見えた。


「よし! ラーヴワス。森の魔物を全て配下に収めよ。 ソレメル、魔物の町の準備を進めるのじゃ」

ノブナガが2人に指示し、ラーヴワスとソレメルは「ははぁ!」と頭を下げて答えていた。

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