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Rev.ノブナカ  作者: わたぼうし
【3章】ノブナガと王都騎士団
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【23話】護衛の理由

無事、報酬を前借りできたノブナガたちは食料などの準備が完了していた。

明朝、出発するため今日も宿屋に泊まり、荷物の確認や、武器や防具(と、言っても黒大蜘蛛の糸で作ったアンダーしかないのだが)の点検をしていた。


「これでよし… と」

アネッサは準備した荷物を確認し、「ふぅ」と一息つくとソファーに腰を下ろす。


今日、泊まる宿の部屋にはベットが2つと、少し大きめのソファーが1つある2人部屋で、ひとり銀貨4枚にしては豪勢な造りになっていた。


「この部屋で銀貨4枚なんて、お得よねぇ」

アネッサはソファーで寛ぎながら、心の声が自然と漏れていた。


「そうじゃな。 ワシは畳の方が落ち着くが… まぁ、この世界に無いものは仕方ない…」

ノブナガはベットに座り、刀の角度を変えながら異常が無いかチェックしている。


「タタミ…?」

アネッサはソファーに寝転びながらノブナガを見る。


「うむ。畳じゃ。 新しい畳の香りは最高じゃぞ?」

ノブナガは相変わらず刀のチェックをしながら答えていた。


「ふーん… また、あんたの故郷の話? あんたって、ホント、ナゾよねぇ」


「ふむ… そうじゃな。 話してもよいのじゃが、話したところで分からぬじゃろうな」

ノブナガは刀を鞘に戻すとベットから降りて、バックパックなどの荷物の横に刀を置いた。


「ふーん… まぁ、いいんだけどね。 別にあんたがどこの誰だろうが、わたしには関係ない事だし」

相変わらず月女族(むすめ)達以外には興味を持っていなかった。


「お主というやつは…」

ノブナガは呆れた様子でアネッサを見ると、苦笑いを浮かべるだけだった。

もし、アネッサが根掘り葉掘り聞きたがったとしたら、逆にノブナガがめんどくさくなり適当にあしらうだけで答える事はなかっただろう。

結果、この2人は良い関係なのかもしれない。





翌朝、ノブナガとアネッサはドナールと待ち合わせした町の広場へ向かった。

広場にはドナールの他に商人が3人と、馬車が合計で4台集まっていた。


「おはようございます! 今日からよろしくお願いします!」

ドナールが元気に挨拶をし、3人の商人も頭を下げていた。


「おはようございます。 あの… こちらは?」

アネッサは3人の商人をチラチラと見ながらドナールに挨拶をする。


「はい、実は先日のギルドでの一件が広がってしまって… ちょうどメルギドへ向かおうとしていた商人仲間が同行させてくれ… と…」

ドナールが苦笑いを浮かべながら説明すると、3人の商人達のうち1人が一歩前に出てきた。


「はじめまして! オレはアスター。 ドナールとは友達でね、よく一緒に行動しているんだ」

アスターはドナールより少し背が低く170cmくらいで、やはり体格はよく赤い髪に黒い目をした美丈夫だった。


「で、こいつがダナで、こっちがセルジ。2人とも気のいい奴らさ」

ダナと呼ばれた男は身長が160cnくらいで青い髪で金色の目で鷲鼻をしていた。


「俺はダナ。 あんたらの強さは聞いているよ。 俺もメルギドに行くんだ。よろしく頼むよ」

ダナがニコニコしながら握手を求めてきたので、ノブナガたちも思わず握手を交わしてしまっていた。


「やぁ、僕はセルジ。 1人を守るのも4人を護るのも変わらないだろ?」

セルジは一番背が高く190cmくらいあった。

スキンヘッドで顔に大きな傷のあるセルジは商人というより戦士という方がしっくりくる外見をしていた。


4人とも体格はよく、おそらく1人で旅をしても多少の魔物や野盗くらいなら返り討ちにしそうな男達だった。


「うむ… 同行するのは構わ…」

ノブナガが話し出したところ、アネッサがノブナガの言葉を遮って大きめの声を出した。


「ドナールさん? わたし達はドナールさん1()()を護衛する契約で来ています。 それが4人に増えるのは問題あるのではないですか?」

アネッサの剣幕に少しおされながらドナールが頭を下げる。


「アネッサさんのおっしゃる通りです。 なので、報酬の方も3人分として金貨を6枚追加させて頂こうと思います」

ドナールが少し申し訳なさそうに答えると


「ん? 金貨6枚? ドナールさんひとりで金貨3枚なのに? 他の3人は金貨2枚づつですか?」


アネッサの素早い計算にドナール達は「あー…」と小さく反応しすると、アスターが一歩前に出で話し出した。


「では、道中の宿代と町での食事代は全てオレたちが持ちます。これでどうですか?」

アスターの提案にアネッサは少し黙り、考えていた。


(今の所持金では宿に泊まる事はできないし… 野営時は仕方ないけど、町じゃベットで寝たいしねぇ)


「…わかった。 それじゃ、追加報酬として金貨6枚と道中の宿代ね。 ノブナガ、それでいいわね?」

アネッサの問いかけにノブナガは


「うむ」

とだけ答えて了承していた。




少しゴタゴタはあったが、無事メルギドへの旅が始まった。

ドナールたち商人は自分の荷馬車に乗り込むと、一列に並んで街道を進んでいた。

先頭はドナール、アスター、ダナと続き、最後にセルジという順番だった。


ノブナガは御者台に座るドナールの横に座り、馬車での旅を楽しんでいた。

その頃、アネッサはドナールの荷馬車の荷台に乗り込み、どこから持ってきたのクッションを敷いてぼんやりと景色を見ていた。



ドナール一行は、頂上を過ぎた太陽の光を浴びながら順調に歩みを進めていた。


「平和じゃな…」

ノブナガは欠伸をしながら、ポツリと呟いていた。


「そうですね。 まぁ、昼間はこんなもんですよ。 危険なのはやはり夜ですね」

ドナールも欠伸をしながら答える。


「ところで、ドナール殿。ひとつ聞いてもよいか?」


「はい、なんですか?」


「うむ。お主ら商人はみな良い体格をしておるが、いつもこのような護衛を依頼しておるのか?」

ドナールやアスターなど、ここにいる商人達が集まれば野盗くらい撃退できそうな者達だった。

今回のようにわざわざお金を使って護衛の依頼などしなくても、4人でメルギドへ行けるのではないか?

ノブナガはそこが不思議だったのだ。


「そうですね。 普段なら護衛は必要としません。 今回は、もともと僕ひとりでメルギドへ向かう予定であった事と、最近、野営中にこの付近でゴブリンの集団を見かけたという情報があったからなんです」


「ゴブリンの集団?」


「ええ、どうもゴブリン達はメルギド方面へ移動しているらしくて… その数もかなり多く、中にはホブゴブリンもいたという情報も聞いています」


「ホブゴブリン…?」

ノブナガが『よく分からない』という顔をしていると、ドナールはすぐに察して説明してくれた。


「僕たちがこの辺りでよく出会うのはゴブリンなのです。 ゴブリンでしたら僕でも倒すくらいできます。ですが、ホブゴブリンは同じ『ゴブリン』という名前ですが、全く違う魔物なのです。 やつらは知能が高く、身体能力もゴブリンとは比較になりません。 1体ならなんとか僕でも撃退できるでしょうが、複数いると逃げるしかありません。 それでも、逃げ切れるかどうか…」


「ほう… そんなに強いのか」


「はい。 今回の情報によるとゴブリンに混じってホブゴブリンが複数いるそうです。 もし、そんなやつらに遭遇したら商売どころか、命の危険もありますからね。 だから、今回は冒険者さんに護衛を依頼した…ってわけです」

ドナールはニコっと笑ってノブナガを見ていた。


「なるほどの…」


「あ、そうそう。もうひとつ情報があるのです」

ドナールは前方を見ながら、言葉を繋ぐ。


「もうひとつ…じゃと?」


「ええ、実は、そのゴブリンの集団の中に1体だけ奇妙な魔物がいるそうなんです。 どうやらその奇妙な魔物がリーダーらしく、ゴブリンもホブゴブリンも従っているらしいのです」


「奇妙な魔物?」


「はい。 そいつはまるで赤いサルのような魔物で、顔も髪も赤い女のような姿だそうです」

ドナールがそこまで説明したとたん、ノブナガは「ぶっ!」と吹き出してしまった。


「ノブナガさん?」

ドナールは突然吹き出したノブナガを不思議そうに見ていた。


「あ、いや… なんでもない」


(まさかな…)

ノブナガは誤魔化すように話を進める。


「ドナール殿、その赤いサルのような魔物が、どうして女だと?」


「その魔物を見た商人が言っていたのですが、魔物はボロボロの服… と言うより、ボロ布を適当に体に巻き付けているだけだったらしく、胸が月明かりに照らされて丸見えだったそうです。 で、なぜか大事そうに甕を小脇に抱えていて、甕の中の水のようなものを飲みながらフラフラ歩いていたそうです」


「そ… そうか…」

(あやつ、めちゃめちゃ目立っておるではないか…)


「それが、なかなかいいオッパイだったそうで… ちょっと僕も見てみたいなぁって」

ドナールは「はははは」と笑っていると、



「……最低」

荷台の方から、ボソっと声がしていた。



こうして、思いがけずノブナガの役にたっていたラーヴワスのおかげで、ノブナガ達のメルギドへの旅は何の問題もなく終わるのだった。

無事メルギドに着いたノブナガ達は、あまりの驚きに言葉を失っていた。


次回 メルギドの新名所

ぜひご覧ください。

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