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Rev.ノブナカ  作者: わたぼうし
【3章】ノブナガと王都騎士団
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【18話】金貨の重み

「ルートハイムさま、ノブナガさま、クエストお疲れさまでした」

金髪をポニーテールにした笑顔の可愛い冒険者ギルドの受付嬢は、受付カウンターから2人を見つけると満面の笑みで声をかけてきた。

この女性はノブナガたちが冒険者登録をした時の、あの受付嬢だった。


「無事クエストからお帰りになられ、安堵しました。半数くらいの冒険者さまは初めてのクエストで重傷か最悪、死亡しますので、本当に無事帰って来てくれて嬉しく思います」

受付嬢はノブナガと目線を合わせ、2人の無事に胸を撫で下ろしていた。 この受付嬢は過去に何度も送り出した冒険者が、無事に帰って来ない経験をしていたのだろう。

その目は、心から2人の帰還を喜ぶものだった。


「うむ。 クエストを終わらせてきた。この後はどうすればよいのじゃ?」

ノブナガは受付嬢の歓迎を受け取ると、さっそくクエスト完了の手続きについて尋ねた。


「はい。 今回、ノブナガさまは『討伐』としてクエスト受注でしたね?」

受付嬢は仕事の顔に戻ると、いつものように笑顔を絶やさず話しを進める。


「うむ。 その通りじゃ」


「承知しました。 では、冒険者カードをご提出下さい」


受付嬢に言われ、ノブナガとアネッサは冒険者カードを取り出しカウンターに置く。


「では、確認しますので、しばらくお待ちください」

受付嬢はカードを受け取ると、手元にあるカードホルダーにノブナガの冒険者カードを差し込んだ。


しばらく様子を見ていると、カードホルダーの横に置いてある羊皮紙に文字が浮かび上がった。


受付嬢は羊皮紙を手に取ると、その内容を確認している。


その間にノブナガの冒険者カードを抜き取ると、アネッサの冒険者カードに差し替え、同じように羊皮紙に浮かんだ文字を確認していた。


「ルートハイムさま、ノブナガさま。 かなりのゴブリンを倒したようですね…」

受付嬢はその数に驚きながら羊皮紙を読み続けていた。


「うむ。 あやつらは弱いから問題なかったのじゃが、なにせ数が多い… 流石にワシも疲れた」

若干、ドヤ顔になりながらもノブナガはクエストを達成する為に、かなり苦労したのだ…とアピールしていた。


「ですが…」

受付嬢は言葉を詰まらせながら、ノブナガとアネッサの顔を見る。


「ですが? なんじゃ?」


「はい、この記録を見ると何体かのゴブリンを逃していますね。 それに、とても強い個体とも会敵していますが… これも逃げらましたか?」

受付嬢は少し上目遣いでノブナガを見ていた。


(そんな事まで分かるのか…)

ノブナガは驚きどう答えるか逡巡するが、すぐに答えなければ怪しまれると考え口を開いた。


「うむ。 確かに何体かのゴブリンには逃げられてしまった。 だが、その強い個体とやらには、町や村を襲わないよう約束を取り付けておる。 それで問題なかろう?」


ノブナガの答えに受付嬢は、少しだけ考え尋ねた。

「ノブナガさま、それは契約魔法を施した… と、いうことでしょうか?」


「契約魔法?」

ノブナガがまた新しい単語に戸惑っていると、これまで黙っていたアネッサがノブナガに説明する。


「契約魔法は、相手と契約する際に行う魔法よ。 その契約内容を反故した場合、魔法が発動しなんらかのペナルティが与えられるわ。 まぁ、殆どは死を与えられるのでしょうけどね」


「そ… そんな魔法があるのか? ならばあの時、なぜそれを言わん?」


「わたしが使えるのは回復系と死霊系の魔法だって言ったでしょ? わたしに契約魔法なんてできないわ」


「な… むぅ…」

ノブナガは口から出そうになった言葉を飲み込み、受付嬢に向き合う。


「契約魔法とやらは、使っておらん」


「作用でございますか。 では、ノブナガさまはその魔物と『口約束』をした… と、いう事でよろしいですか?」

受付嬢は事務的に確認をする。


「…うむ。 そうなるの」


「そうですか。 それでは、先程の『約束』につきましてはギルドとして承認する事はできません。 よって、今回のクエストは残念ながら『失敗』となります」


「はぁ? なぜじゃ? 確かにいくらかのゴブリンは逃げたじゃろう。 じゃが、そのゴブリンの頭領は屈服し、村を襲わぬと約束した。 それに、その洞窟からは出て行ったのじゃぞ? 近くの村はゴブリンに怯えずに暮らす事が出来るようなった。 ならば、当初の目的は果たせたであろう?」

ノブナガが食いよるが、受付嬢もこの道のプロ。

そのようなクレームには慣れたもので、淡々と説明を始める。


「そうですね。ノブナガさまの言う事も一理あるかと思います。 しかし、魔物がヒトとした『口約束』など守ると思いますか? ヒトですら平気でウソをつくのですよ?」


「ぅ…」

ノブナガは言葉を詰まらせてしまう。


「今回の『討伐』の条件に『殲滅』がある事は、ご説明しましたよね? それは、王国はゴブリンを討伐する為に騎士団を動かす必要があるのですが、騎士団も無数にいるわけではありませんので、いくらかを冒険者に依頼して人々の平穏を守っているのです。 なので、その騎士団を動かすお金が冒険者に支払われるという仕組みになっているのです」


「う… うむ…」


「今回、ノブナガさまが『殲滅』出来なかったゴブリンや、その強い個体は洞窟から出ていったでしょうが、その先でまた洞窟に住み着き近くの村や町を襲うようになるでしょう。 そうすると、また情報を集めてゴブリンを掃討する為に騎士団が動く必要があるのです。 しかも、一度逃がしていますのでゴブリンも警戒し、掃討作戦は困難を極める事になるでしょう」


「うぅ…」


「よって、当ギルドとしては今回のクエストは『失敗』と判断せざる得ないのです。 ノブナガさま、申し訳ありませんが、ご理解のほどよろしくお願いします」

受付嬢は丁寧に頭を下げて、話しを終わった。


「………ノブナガ。 その子の言う通りだわ」

アネッサはノブナガの肩に手を置いて、そうつぶやいた。


「うむむむ。 確かに、お主の言う事は分かる。 じゃが… じゃが…」

ノブナガが悔しそうに言葉を詰まらせていると、受付嬢が優しく話しだした。


「ノブナガさま、ルートハイムさま。 クエストは失敗となりましたが、初めてのクエストから無事生還されましたので、当ギルドからご祝儀として金貨1枚をお贈りします」

受付嬢は机の下から金貨を1枚取り出すと、丁寧にカウンターの上に置いた。


「……」

ノブナガが少し驚きながら受付嬢と金貨を交互に見ていると


「これは、ご祝儀です。 どうぞお納めください」

受付嬢は微笑みながら金貨を、クイっとノブナガの方へ押し出した。


次にノブナガはアネッサの顔を見て、金貨を見る。


「貰っときなさい。 いまはお金が必要なんだし」


「…うむ」

ノブナガはカウンターの金貨に手を伸ばし、自分の方に引き寄せると人差し指と親指で摘んでしげしげと金貨を見る。


「この金を稼ぐ為に、ワシらは頑張ったんじゃな… この金貨は大切に使わねばならんな…」

ノブナガは初めて給料を貰った新入社員のようだった。

金貨の重みを感じていたノブナガはヤールガと再会する。

そこでロイヤルナイツの話しを聞くのだが…


次回 熾天使


ぜひ、ご覧ください。

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