【10話】 6人のロイヤルナイツ
ついに100話目となりました!
みなさま、お付き合いありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!!
こうしてオレはアクロチェア王国に迎えられ、オレの仲間達も一緒にアクロチェア王国に住む事を許してもらった。
オレはロアさまからの啓示を受けたこともあり、王国の騎士団団長として王に仕える事になった。
一方、オレの仲間達は非戦闘員であるため、一般の王国民として暮らす事になる。
王国はといえば、獣王ザザンに立ち向かうための準備に追われていた。
アクロチェア王国は小さく、騎士団や戦士、魔法使いなどを集めてもザザンの軍隊には遠く及ばない。戦う前に負ける事が明白だったのだ。
王は近隣のヒトが統治している国々に呼びかけ戦力を集める事で、ヒト対獣王の図式を作ろうとしていた。
その時に役立ったのが『魔法の武器』だった。
現状、ヒトが集まり獣王に立ち向かっても勝てる見込みはほぼないだろう。
だが、『魔法の武器』を使えばヒトの戦力は大幅に向上し、獣王ザザンにも勝てる………はず。
獣王ザザンを倒しヒトの為の世界を作ろう。
『我々が英雄となるのだ!』
この甘い言葉に各国の首脳陣は、まるで花に集まる蜂のように集まっていたのだった。
そんなある日、王に呼ばれたオレは謁見の間で王の前に跪き頭を垂れていた。
「ラーヴワス」
王は重厚な声でオレを呼んだ。
オレは頭を垂れたまま「はっ」と答える。
「お前にこの武器を授ける。 余のため、国のためにその力を存分に奮え」
王の言葉が終わると、横から文官のひとりが赤い布の上に置かれた『赤色の棍』を持ってオレの前に立った。
「これは…?」
「お前の武器だ。 魔法を付与している。詳しくは研究者に聞くのだ。 お前の働きに期待しているぞ」
オレは赤色の棍を恭しく受け取った。
「ははぁ! 必ずやご期待に添えてみせます!」
「うむ」
王は満足そうにオレを見ていた。
オレはさっそく魔法の武器を研究している部署へ行き、武器の説明を受けた。
魔法の武器である『赤色の棍』の見た目はただの派手な棍だったが、その性能はとんでもないものだった。
まず、この棍の特徴はオレの魔力とリンクしている事だ。
オレには魔力は無いと思っていたが、本来全ての生き物は魔力を持っているそうだ。
ただ、その量は個人差が大きい。オレは意外と魔力量は多いらしく、魔法の武器を扱うのに適しているとの事だった。
次に、その魔力を操作し『魔法』という形で操作できるのかどうかはセンスの問題らしい。
残念ながら、オレにはセンスが無いらしく魔力を魔法として扱う事は出来ない。
だが、この魔法の武器『赤い棍』は、センスのないオレでも強制的に魔力とリンクさせ、自在に操るようにできる代物なのだ。
しかもオレの魔力をベースにしているため、オレ以外の人間には使えないそうだ。
この赤い棍はオレの意思に従い長さが変化し、また太さも思いのままになった。
ただオレの魔力量では長さは最大で5mくらい、太さはオレの腰くらいが限界だった。
(戦場で戦うなら、これくらいで十分だ…)
オレは満足し赤い棍を短く細く変化させ、結えた髪に簪のように挿した。
「ラーヴワスさま、コレもどうぞお持ち下さい」
研究員はただの木の棒を手渡してきた。
「コレは?」
「それは、ラーヴワスさまの棍を作成していた時の試作品です。 長さなどは変化しませんが、その強度は素晴らしいモノを持っています。 捨てるのも勿体無いので、ぜひお使いください」
「おお! ありがたく使わせてもらうよ」
オレは、オレが敵にしたくなかった『魔法戦士』になったのだ。
有頂天になったオレは騎士団団長として、数多くの戦場で活躍するようになった。
そんな日々がしばらく続き、いつしかオレは王国の中でも上位の実力者と認められていた。
ある日、王はオレのような騎士を集めロイヤルナイツを立ち上げた。
それは個人で軍隊並の力を持つ精鋭中の精鋭6人で、各騎士が独自の魔法の武器を持つ『最強の魔法騎士』だった。
ロイヤルナイツの中には、オレが王国で衛兵に絡まれていた時に会った『ミナスリート・カラミント』もいた。
ミナスリートが背中に背負っていた大剣は魔法の武器だったそうで、一振りで一個軍隊を薙ぎ払ったというバカげたウワサが流れていた。
「ミス・ラーヴワス。 ご無沙汰しております」
ミナスリートは跪くとオレの手を取り、手の甲に軽くキスをして微笑む。
「お… おう」
オレがどう対応していいか分からずオロオロしていると
「よお! ミナスリート。 相変わらずキザな男だな」
そう声をかけてきたのは、腰に双剣を下げた屈強な男だった。男は黒い髪を短く刈り込み、ほぼボウズに近い角刈りにしていた。顔はどちらかというと四角く、その鋭い目は意思の強さを感じさていた。
「ギルエ。 貴方もお元気そうで」
ミナスリートは優雅に礼をしながら、双剣の男ギルエに微笑んでいた。
「そういうところがキザなんだよ」
ギルエは荒っぽくミナスリートの背中を叩き、豪快に笑っていた。
ミナスリートはポカンとしながらその様子を見ているオレに気がつき
「ミス・ラーヴワス。失礼しました。 彼は私の古い友人でギルエ・ブルガテアク。 ロイヤルナイツに選ばれた1人です」
「ギルエだ。 ミス・ラーヴワス。これからよろしく頼む」
ギルエは微笑みながら手を差し出してきた。
「ラーヴワス・リナワルスだ」
オレはギルエと握手を交わす。
(さすがに分厚い手をしているな…)
ギルエは鍛錬に鍛錬を重ねてきたのだろう、分厚く硬い手をしていた。
「さっきは王の手前、あまり話せなかったが… これから一緒に戦う仲間だ。 仲良くしようや!」
ギルエはブンブンと握手したままの手を振り笑っていた。
「そうだな。 ところで、他のヤツらはどうしたんだ? もう帰ったのか?」
オレはキョロキョロと周りを見渡すが、ミナスリートとギルエ以外に人影は無かった。
「あぁ、あいつらは人付き合いが苦手なんだろ。さっさと帰って次の戦場に行く準備をしているんだろう」
「そうなのか… 挨拶くらいしとけばよかったな…」
「ミス・ラーヴワス。気にすることはありませんよ。 彼らは彼らでやる事があるだけの事。 ところで、貴女は彼らの事をご存知ですか?」
「いや。 ほとんど知らない」
「そうですか。 せっかく仲間になったのですから、私から少しお話ししておきましょう。 今度、いつ彼らと会えるか分かりませんしね」
ミナスリートは微笑んでウィンクすると、簡単に他のロイヤルナイツメンバーを教えてくれた。
大楯を巧みに操り、鉄壁の防御力を誇る。大楯と呼ばれる男『リーク・ポケストオ』
そのチェーンはまるで意思を持っているかのように攻撃にも防御にも変幻自在に姿を変える。ヘビ使いと呼ばれる女『モニカ・ヤラセム』
彼女の弓には矢が必要なかった。彼女が弓を引くと淡く光る『光の矢』が現れるからだ。
『光の矢』は射出されると8本になり、彼女の意思に従ってまるで吸い込まれるように敵を屠っていく。人はこの光の矢を『天使の矢』と呼んだ。『熾天使のリダ』と呼ばれる『リダ・ニイキル』
そして、今目の前にいる双剣の『ギルエ』
彼の剣捌きはまるで乱舞のように激しく、そして美しい。人は濁流のギルエと呼んでいた。
大剣を操る『ミナスリート』の一撃は凄まじく、一個軍隊すらも薙ぎ倒すとウワサされる程だった。
その破壊力からミナスリートは人々に『巨神』と呼ばれていた。
最後に、赤い棍で暴れる猩猩『ラーヴワス』
とても腹立たしい二つ名だ。
この6人がアクロチェア王国最強のロイヤルナイツだった。
ロイヤルナイツは全員が特別な魔法の武器を所持しており、まさに一騎当千を地でいく者たちだった。
オレたちは基本的に単独で行動し、さまざまな戦場で功績を上げ続けていた。
いつしかオレ達の名は世界中で知られるようになっていた。
そんなある日、アクロチェア王国 国王は『自国の戦士には、全員に魔法の武器を与える』と宣言した。
その宣言はあっという間に国々に広がりアクロチェア王国の戦士を志願する者が押し寄せ、小国はアクロチェア王国の属国となる事で庇護を受けようとしていた。
そうして王の狙い通り、アクロチェア王国は巨大な王国と成長していったのだった。
王の策略により、アクロチェア王国は強大な国へと成長していく。
そして、ついに獣王ザザンとの戦いが始まった。
次回 絶望
ぜひご覧ください。
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