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Rev.ノブナカ  作者: わたぼうし
【0章】プロローグ 本能寺の変
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【1話】ノブナガ

天正10年5月30日 一通の文が各武将に届いた。


『本能寺へ馳せ参じよ』


送り主は織田信長。

各地へ出兵していた武将達は副将に戦場を任せると、急ぎ本能寺へ走った。


6月1日 一番最初に信長の下に着いたのは明智光秀だった。


本能寺に着いた光秀は急ぎ本殿へ向かうと、信長は胡座をかき煙管で紫煙を燻らせていた。

「お館様! 光秀、ただいま到着致しました!」


光秀は信長の前で膝をつき、腰に下げていた刀を自身の前に置く事で忠誠を示して頭を下げていた。


「光秀よ。やはりお主が一番であったな」

信長はぷかぁ と、紫煙を燻らせながら満足そうな目で光秀をみていた。


「ははぁ! この光秀、お館様のご指示とあればいついかなる時も真っ先に馳せ参じまする!」

光秀は更に頭を下げると、信長の次の言葉を待っていた。

その時、本殿の前をドタドタと走る足音と共に羽柴秀吉が信長の前に飛び込んできた。


「お館様!ただいま秀吉到着致しました!! って、光秀殿!!」

秀吉はすでに到着している光秀を見つけると、誰にも見られないように「ちっ」と小さく舌打ちをし、すぐにいつもの飄々とした表情に戻り光秀の隣にドカっと座った。


「おぉ、光秀殿。 もう着いておられたか!さすが光秀殿でごさるな!」


「わたしはたまたま戦場が近くであったからでごさるよ。運が良かっただけでござる。 それより、秀吉殿は備中からこんなにも速く参られるとは… さすが秀吉殿。感服仕る。」


「いやいや、光秀殿には敵いません。 して、お館様、この度はいったい何事でござるか?」

秀吉は信長に向き直り、刀を自身の前に置くと信長の顔を伺っていた。


「うむ、お主らには先に説明しておこう…」

信長が煙管を一度大きく吸うと、煙管の先にある煙草がチリチリと赫くなる。

信長は肺いっぱいに溜めた煙を一気に吐き出すと、ニヤリと笑いゆっくりと話し出した。



◇◇◇◇



6月1日の夜半、佐々成政や前田利家など続々と武将達が信長の下へ到着していた。


信長は本殿の奥に座り、集まる武将達を満足そうに眺めていた。


「さて、全員揃ったな」

信長は煙管を灰吹きに叩き、灰を落とすと集まった武将達の顔を一通り見てニヤリと笑った。


「お館様、此度の召集、いったい何事でごさいましょうか?」

柴田勝家はズイっと前に出て、信長の真意を確かめようとしていた。


「皆、聞け。 ワシはお主達と共に泰平の世を作ると決め、この戦乱の世を駆け巡ってきた。お主達と駆ける戦は最高の時間であった」

信長は煙管で武将達を指し、不敵な笑みを浮かべていた。


「お館様! お館様の采配の下、ワシら一同戦場を駆ける事、至極の極みでござる!」

元来、声の大きい柴田勝家は更に大きな声で応えると、他の武将達も賛同の意を示していた。

そんな中、秀吉だけは鎮痛な面持ちで顔を伏せていた。


「なんじゃ、秀吉殿! お主、泣いておるのか?」

前田利家が秀吉に気付き、声をかけると


「な… なんでもござらん!」

秀吉は顔を背け、袖で涙を拭っていた。


「秀吉殿、そんなにお館様の言葉に感銘したのか?」

前田利家が秀吉を笑い、からかっていると


「うぉぉぉぉおおおん!! お館様ぁ! なんと勿体なきお言葉!!」

わざとらしく柴田勝家が嘘泣きをはじめていた。


「また、柴田殿の下手な演技が始まりましたぞ…」

佐々成政や前田利家らがヒソヒソと話し出す。


「はっはっはっはっ  相変わらず騒がしいのぉ」

信長が上機嫌に笑うと武将達も楽しそうに笑っていた。ただ、秀吉の笑いだけはどこか寂しげだった。


信長はふと、真面目な顔になり武将達を見て話し出した。

「さて此度の戦で、我らの悲願である泰平の世は現実的となってきた。 ワシはふと考えたのじゃ。泰平の世が成った後は何があるのだ?…と」


「それは、いったいどのような意味でごさるか?」

前田利家は不思議そうに信長を見ると、信長はアゴを一撫でし口を開いた。


「ふむ。 先程申したようにワシはお主らと戦場(いくさば)を駆けている時が至高の時であった。 我らの悲願である泰平の世も、もう目の前じゃ。だがな、泰平の世が成ったなら、ワシが戦場(いくさば)を駆ける事も無くなるだろう。 ワシはそれがつまらんのじゃ。 ワシはもっと多くの戦場(いくさば)を駆けたいのじゃ」


「お館様、それではまた戦乱の世に逆戻りさせるおつもりでございますか?」

前田利家が尋ねると


信長は煙管に煙草を詰め、火をつけると一息紫煙を燻らせて前田利家を睨むように見た。

「それはならん。民には泰平の世を満喫させてやらねばならん」


「それでは、いったい…?」


信長は手を二度叩き、よく通る声で「入れ!」と誰かを呼んだ。

すると控えの部屋の襖がスッと開いた。

そこには黒髪を首辺りで切り揃えた若い女が、頭を下げて控えていた。


「ボクはロア。 ロア・マナフと申します。よろしくお願い致します」

ロアがゆっくりと顔を上げたその額には、宝石の様に赤い3つ目の瞳が付いていた。

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