表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

歯みがき

作者: 森内哲

私の友人の話です。

 朝目覚めるとひどい気分だった。頭が重く吐き気がする。ゆっくりと体を起こし周囲を見ると、そこはよく見慣れた自分の部屋だった。

 壁に二つ並べている本棚は好きな時代小説が乱雑に並べられている。最近の作家のものから司馬遼太郎、歴史IFや幼いころに買ってもらった真田十勇士のジュニア小説まで、時代小説であれば片っ端から読んでしまう歴史マニアだ。

 一方で壁に貼ってあるのはアイドルの水着ポスターだった。それ以外にあるものといったら小さな衣装ケースぐらいで、これが男子大学生の部屋だと言われたら、教科書どころか筆記具すらなくてどうやって勉強しているのかと問い詰めたくなるだろう。



 それにしてもどうして自分の部屋で寝ていたのだろう。昨夜は確か遅くまで友人の部屋で飲んでいて、そのまま泊めてもらったはずだ。夜はすでにコートがなければ耐えられないような季節だというのに、記憶のないうちに歩いて帰ってきたのだろうか。


 なにか手掛かりがないかとスマホを見るが、なにもメッセージは残っていない。寝ぼけまなこのまま記憶を辿るがなにも思い出せない。


 ひとまず二日酔いの不快さをなんとかしようと洗面所へ向かった。12月に冷水で顔を洗えるほどの気合はない。蛇口を温水の方に回し水を出した。蛇口から出るのが湯になるまでには少し時間がかかる。

 それまでの間に歯も磨いてしまおうと歯ブラシを手に取り、三色ストライプの歯磨き粉を先に乗せた。そしてそれを口に含み、鏡に映しだされた自身の顔を見た瞬間思わず体が硬直し、一気に目が覚めた。手遅れにならずに助かったと安堵しながら咥えたものをゆっくり口から引き出す。

 私は手に持っている()()()をじっと凝視した。蛇口からは湯が流れ始めている。


ちなみに友人は手遅れになりました。痛そうでした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ホラーエッセイとでも言いましょうか。結末をあれこれ考えながら読み進め、ああそういうことか!と納得のオチでした。描写が具体的なので(部屋や歯みがき粉など)、現実感をもって読み進められたのが良…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ