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俺の異世界ハーレムがチート娘ばかりで、そろそろBANされそうです。  作者: EZOみん
第一章 ハーレムは一日にして成る。そう異世界ならね!
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第九話 お酒は二十歳になってから

 声をかけてきたのは、恐ろしく皺くちゃの老婆だった。

 腕にも首にも数珠のような飾りを大量につけている。

 頭にはターバンのようなものを被り、数人のお供を引き連れていた。


 壊れた飾り棚は手早く片付けられた。

 俺とハナ、老婆とお供達は向かい合ったベンチに腰を下ろす。

 

 老婆はしゃんと背筋を伸ばして座っており、鋭い眼光で俺達を見据えた。

 どうやら、彼女がここで一番上の立場らしい。


 背後のベンチにお供達も座る。

 おっと、ひょろ長君もいるぞ。


「――さて、落ち着いたかね?」老婆が口火を切った。

「それはこっちのバカ女に聞いてくださいよ」


 立てた親指を振って、俺はしょんぼりと打ち萎れているハナを指した。


「ううっ。すみません、タケル様。ちょっとテンションが上がりすぎて、わけがわからなく……」


 俺はあぐらだが、ハナはかしこまって座っている。

 頭をたれてはいるが、背筋は綺麗に伸びており、姿勢に無理がない。

 正座をすることに慣れているようだ。


 こいつも大人しくさえしていれば、ちゃんとして見えるんだな……。


 いや、見直してやる必要はないだろう。

 俺はこの女のせいでえらい目にあったのだ。

 打ち身と青痣で済んだのは運がよかっただけだ。

 鉄拳制裁の二、三発くらい受けて当然だろう。


 まあ、おかげでめまいや気分の悪さはどこかへ吹き飛んでしまったが。

 老婆はくぐもった声を漏らした。笑ったらしい。


「あまり邪険にするものじゃないよ。お前さんの身内だろう、その娘は」


 ハナは顔を上げ、ぱっと表情を明るくした。


「そう! そうなんですよ、おばーちゃん! わたくしとタケル様は――」

「無関係だ。さっきが初対面じゃないか、そもそも」


 俺が切って捨てると老婆はほう? と、探るような視線を寄越した。


「そりゃ、おかしいね。よほどの繋がりでもなければ、こうはならないはずだがね」


 なんのことだろうか? 

 膝立ちになり、ハナは「はいはい、はーい!」と挙手した。小学生かよ。


「わたくしとタケル様は血縁でこそありませんが、海よりも深ぁい絆で」

「結ばれてないって言ってるだろ。つーか、お前の話はひとまず後回しだ」俺は老婆に向き直り、「そちらから、なにか説明があるだろうと思っているんですが」


「ふむ。そうさね」


 老婆が身振りをする。

 控えていた男が小さなテーブルを俺の前に置き、別の女が器を並べた。

 パンに似たもの、なにかの干し肉、白く濁った飲み物だ。


「それがなにか、わかるかね?」

「なにって、ナムルでしょ。カブリの干し肉と……」


 言いかけて、俺は口ごもった。

 ナムル? ナムルって――知っている。


 赤麦の生地に砕いた木の実を混ぜ、平べったく伸ばして焼いた、ここらの主食だ。

 

 そう、子供でも知っている。


 カブリは一本角を持つ草食動物。足場の悪さを苦にせず、岩山を自在に駆ける。

 ヤギに似ているが、ひとまわり大きい。

 家畜化されたものだけなく、野生種もこの辺にいるから、子供でも知っている。

 

 そう、誰でも。俺でも。



 なんで、俺が知っているんだ……?



 おまけに、いつの間にか連中の言葉を完全に理解している。

 今、俺は何語で話しているんだ?


乳酒(バル)じゃないですか。飲んじゃダメですよ、タケル様。まだ未成年なんですから」


 横から手を伸ばしてひょいと器を取り上げ、ハナは一息に飲み干してしまう。

 こいつはカブリの乳を発酵させた酒で、さほどアルコールは強くない――はずだ。


「ふわーっ、美味しい! 久しぶりのお神酒は最高ですぅ!」

「おい」

「む、ハナは飲んでもいいんですよ? そりゃあ、姿は若くてキュートな美少女ですが、タケル様よりずっと前から()()んですからね。なんでしたら、ハナおねーさん、とお呼び下さっても結構!」


 まだ自分で美少女言うか、この女。

 いや、それはともかく。

 

 たぶん、こいつも俺と同じなのだ。

 知らないはずの知識が頭に入っている。


「理解できたようだね。嬢ちゃんや、わっしのこともわかるかね?」

「ほえ? おばーちゃんですか? おばーちゃんは……」


 怪訝そうだったハナの表情が、ぴきっと引きつった。

 見る間に冷汗をびっしりと浮かべ出す。


 ハナはぱっとベンチから飛び降りると、床に平伏した。

 おお、時代劇でよく見る奴だ。


「ご無礼の数々、なにとそご容赦を! ヒャクソ様!!」

「これこれ、頭をお上げ。なんだね、お前さん達のところでは、そんな習わしなのかね? もういいから、いいから」

「いっ、いえっ、ですが……ヒャクソ様は近在の眷属すべてを束ねる大主(おおあるじ)様。わたくしのような者が――」


 老婆、いやヒャクソ婆は鷹揚に手を振った。


「そんなに恐縮されちゃ、こっちがいたたまれないよ。おばーちゃんでいいさ」

「は、しかし……」

「わっしがそうして欲しいのさ。気にすることはないよ」

「ま、まことでございましょうか……?」

「おや、疑うのかね?」

「いえっ! とんでもございませんっ!!」

「お前さん達はわっしが招いた客人だ。気楽に構えておくれ」


 ハナは、にぱっと笑った。子供みたいな笑顔だ。


「はいっ! ありがとう、おばーちゃん!!」


 ヒャクソ婆は愉快そうに笑い返したが、後ろで控えていた連中はずっこけていた。

 うむ、これは昔の漫画でよく見た奴だな。


 すっかり許された気分になったらしい。

 ハナは(ハナだけに)鼻歌をかましながらベンチに戻ってきた。 

 いやいや、豹変しすぎだろ、お前。逆に怖いよ。


 ハナが座ると、話は仕切り直しとなった。


「カガシがお前さん達がそうなるよう術をかけたのさ。なにをするにしても、言葉やこっちの常識がわからないとお互い大変だからね」


 カガシ?

 俺が視線を向けると、ひょろ長君はわずかにうなづいた。

 

 ゴミを並べてこちらが理解できるものを選ばせたのは、術とやらを行使する事前準備だったのだろう。


「そりゃ、ご親切にどうも。でも勝手に叩き込まれた知識は、どうにもすわりが悪くて困るんですけど。頭の中に異物がある感じで、気持ちが悪い」

「実地で見聞きすれば、君の体験が上書きされ、なじむはずです。さきほどのように、知っていることをただ口に出すだけでも、だいぶ違うと思いますよ」


 丁寧な口調でカガシが説明してくれる。

 表情はにこりともしないが、それは最初からそうだった。

 悪い奴ではないのだろう。くそ、これ以上、嫌味も言いにくいな。


 俺は髪をぐしゃぐしゃとかきむしった。


 とても信じられない情報(こと)が、事実だと俺は()()()()()

 簡単には飲み込めない話ばかりなのに。


 あー、もう! なんでこんなことになってんだよ。

 めっちゃストレスたまるぞ、これ。

 仕方がない。ひとまず、アドバイスに従ってみるか。


 深呼吸して、俺はヒャクソ婆をぐっと見据えた。


「ここは俺が住んでいた世界じゃないんですね?」

「ああ、その通りだよ。お前さんにとっては異世界だね」

「お婆さん達がこの世界へ俺を呼びつけたわけですか」

「召喚術さね。我らにとっても簡単な術ではないがね、やる必要があったのさ」


 あっさり認めやがった。

 こっちにとっては大問題だぞ、それ。


「ここはあなた方、パダニ族の領地で、禁域と呼ばれる結界の中ですね?」

「そうとも。一族の名はこの洞窟――パダ二窟からとったのだよ。洞窟は広く深く通路が複雑に連なっておるが、わっしは中央部の大空洞を禁域としたのさ」

「この世界には俺みたいな人間も沢山いるが、あなた達は人間じゃない。神尊(こうそ)と呼ばれる、バケモノですね」


 俺はわざと侮蔑をこめて言い放った。

 カガシは落ち着いていたが、他の控えていた連中はざわっと色めきたつ。

 怒りと殺気が押し寄せ、呼吸が苦しくなる。

 俺は実際に締めつけられるような圧力を感じた。


 思った通りだ。

 こいつらは、悪霊なんかよりもはるかに恐ろしい連中なのだ。

ハナは昔の人間なので、正座や土下座には慣れているのです。

よろしければ、ブクマ、評価など、ぜひぜひお願い致します~。


そして――予告ッ!!


次回『なるほど、わからん』 無知の知より、ムチムチがいい(願望)


明日、1/4 22~23時頃の更新予定でございます。

お楽しみに!!

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