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俺の異世界ハーレムがチート娘ばかりで、そろそろBANされそうです。  作者: EZOみん
第一章 ハーレムは一日にして成る。そう異世界ならね!
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第十六話 普通が一番

 リーファが軍曹の前に立ちはだかった。

 舌打ちして、軍曹は銃を下げた。

 

「なんですかね、代官殿?」

「止めてください、この人はまだなにも知らないっ!! 殺す意味なんてないでしょう!?」

「ありますとも。命令が下った以上、そいつの始末はもう任務なんですよ。軍人は任務を果たす。つまり、これは自分の仕事でしてね」

「抗議します! わたしは代官として――」


 ため息をつくと、軍曹はいきなり平手打ちをした。

 叩かれた勢いで身体が半回転し、リーファは尻もちをつく。


「調子に乗るな、クソ(アマ)。お前が命令できるのは、小鬼共だけだ。黙って見てろ」


 軍曹は再び俺に向けて銃口を据えた。


「く――っ!!」


 リーファは飛び起きると、俺に覆い被さってきた。

 俺の頭を守るようにかき抱き、ぎゅっと身体を押しつけてくる。


「ごめんなさい……わたしには止められない。ごめんなさい、ごめんなさい……!!」


 もう、それしか言えないのか、リーファは何度も同じ謝罪を口にし続けた。

 泣いているのだろう、水滴がぽたぽた落ちてくる。

 


 このまま殺されるのか、俺? 



 母さんそっくりなこの娘と一緒に。

 わけもわからず、異世界で。

 

 まるで悪い冗談だ。

 

 いや、冗談じゃない。

 まったく、こんなのは冗談にもならない。


「軍曹、あの。どうしますか、これ」

「頭を使え、ナット坊や。順番にやればいいだけだ。まず女、次に男。簡単じゃないか」

「いや――待て、待てっ!! まだリーファ・レンスは代官、連邦の総督に任命された現地代官なんだぞ! ヴェイロン卿も彼女の始末までは命じていないはずだっ!」


 リーファの身体で視界が覆われている俺には声しか聞こえないが、イルカが抗議しているらしい。

 軍曹はせせら笑いを返した。


「命令したって誰も聞かない。あんたがさっき、自分でそう言ったんじゃないか」

「しかし、これは――」

「いいかね? この女は警告を無視し、連邦軍の任務を妨害している。現地代官が、己の立場もわきまえずにな。故に自分の権限で処分する。どうだ、明確だろ?」

「だ、だが……いや、待ってくれ! 彼女は」

「黙れ、小鬼めっ!!」


 にぶい音とうめき声。

 どうやら、イルカも殴り倒されてしまったようだ。


「よーし、ナット、やれ。一応、女の脇でも突いてみろ。それなら、しがみつけなくなるはずだ」

「はい、軍曹。ですが、腕や脇のあたりって太い血管がありますよ。結局、死んじまうんじゃ……」

「それならそれでいいさ。待てよ、誰か賭けるか? ナットが一撃で女を仕留めるか、()()か」


 わっ、と周囲の兵士達が盛り上がった。

 サプライズプレゼントをもらった子供達のように。


「タバコだ! 俺は半日分の配給を、もつ方に賭けるぜ!」

「じゃあ、俺は一撃にニ日分だ!」


 おおっ、と笑い混じりのどよめきが起こる。


「やれるだろ、ナット! ぶっ刺して、ひねれば楽勝だって」

「いや、待ってください。もつってどの程度ですか、軍曹?」

「一分だな。一分で死ねば、一撃。それ以上ならもった、ってことにしよう」

「よっしゃ、自分が測ります。俺の懐中時計はいい品ですからね」

「おい、ホルテン。イカサマはするなよ? ちゃんと測るんだぞ」

「女の下で震えている腰抜けの方はどうする? 普通に殺るのか?」

「なに言ってやがる。もっと遊べるだろ」

 

 兵士達は和気あいあいと話に花を咲かせている。

 俺は強烈なショックを受けた。


 なんだ、これは。


 本気なのか、こいつら。

 どうしてこんなことで楽しそうにできるんだ。

 それこそ、こんなことをする理由はないはずだ。

 俺を殺すのが任務なら、ただそうすればいいだけじゃないか。


 楽しむ必要がどこにある? どうして楽しめるんだ?


 退屈な日常のちょっとした気晴らし。

 俺とリーファの命を、そんな風にもてあそぶなんて。


 こいつらは人間じゃないのか。こいつらは――バケモノなのか?



――ちがいますよ。なに言ってんですか、もー。



 どういうことだ?



――人間だからですよ。人間だからこうなんです。



 だって、こんなのは普通じゃない。

 こんなの、許されるはずがないだろう。

 人間じゃなくて、バケモノじゃなきゃ――



――戦だからですよ。戦だと、人間は普通、こうします。



 嘘だろ?

 戦争だから、これでいい?

 これが普通なのか?



――人間で、戦争で、彼らが勝った。だから、こうなる。それだけですよ。



 俺はゆっくり身体を起こした。

 リーファは引き止めようとしたが、俺は立ち上がった。

 

 倒れているイルカが見える。

 気絶しているらしく、ぴくりとも動かない。

 卑劣な奴だが、あいつなりにリーファを案じたのだろう。


 利益のために裏切りはしても、殺されるのは見すごせなかったのだ。


 ずらりと居並ぶ兵士達。

 俺は一人一人の顔を順番に見ていった。



 伝わってくるのは、驚き、苛立ち、おびえ、興味、興奮、怒り。



 なるほど、普通だ。

 いまだに遠くから散発的な発砲音と獣じみた悲鳴が聞こえていた。


 薄暗く煙った戦場で、兵士達は勝ち戦に酔いしれている。


 ただ、それだけだった。

 本当にそれだけなのだ。それだけで、人間はこうなるのだった。


「ナット。どうやらこの小僧は優先乗車券をお持ちらしい。順番を変えてやれ」


 油断なく俺に銃を向けたまま、軍曹が言った。


「はい、軍曹」


 まわりの兵士達は呪縛から解かれたようにはやし立てはじめた。


「ナット、まずはそいつで練習しろ!」

「喉を掻き切れ!」

「いや、心臓を突いてやれ!」

「腹をかっさばけ!」

「ナット、ナット、ナット!」

「おーい、しっかりしろ。顔がこわばってるぞ、ナット坊や!」

「まだ新兵だからな。よし、俺が手伝ってやるよ」

「なんだよ、じゃあ俺も。グリス、お前も一緒にやれよ」

「仕方ねぇな。まあ、いいや」


 三人は着剣し、ナットと並ぶ。

 彼らはお互いに仲間同士の微笑みを交わしあっていた。

 

 ようみんな、調子はどうだ? 問題ない?

 じゃあ、ちょっと楽しもうぜ――そう、まさにそんなノリだ。


 俺を中心にして、兵士達は気楽な表情で半円状に整列した。


 溶岩のように煮えたぎり、猛烈な腐臭を放つ、誰見境のない悪意が伝わってきた。

 俺はそいつが放つ死の実感にがっちりと捕まれていた。

 

 恐ろしい。やはり、死とは恐ろしく、おぞましく、無残なものだ。


 恐怖で全身が硬直し、俺はもう指一本動かせない。

 逃げ場はないのだ。最初から、どこにも。

 

 ぞくぞくっと凍えるような悪寒が走り、鳥肌が立ってしまう。


「おい、こいつ青ざめて震えているぜ。やっぱり腰抜けだ!」


 今笑ったのはホルテン君かな。

 ナットと違ってお前は本当の兵士。修羅場をくぐった経験があるわけだ。

 お前達は一人前の男だ。腰抜けじゃないさ、もちろんだ。

 ああ、でもこっちのことは心配するなよ。俺も大丈夫だぜ。

 

 確かに怖いが、()()()()()には慣れているから。


「こいつは小鬼と一緒なんでしょう。俺達みたいな男じゃないんですよ」

「言うじゃないか、ナット。なら、ちゃんとやってみせろ。きっちりな」

「大丈夫です、軍曹!」


 おや? ナット、お前も緊張がほぐれたみたいだな。

 よかったな、つき合いのいい仲間が沢山いて。

 おまけに面倒見のいい上司もいる。

 アットホームでフレンドリーな職場ってわけだ。実に素敵だね。


 すっかりリラックスした調子でホルテン君が軍曹をうながす。


「んじゃ、号令をお願いできますか、軍曹」

「わかった、わかった」


 だけどさ、ナット。

 殺される方は、それじゃたまらないんだよ。

 そんなんじゃ、お前ら。


「――剣、構え!!」


 逆にぶち殺されても、文句は言えないぜ。

ご愛読ありがとうございました!

よろしければ、ブクマ、評価など、ぜひぜひお願い致します~。


そして――予告ッ!!


次回『現金払いでお願いします』 回転すし屋で稀によくあり、時にびびる。


明日、1/11の更新予定でございます。

お楽しみに!!

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