途中
「いいか、お前たち。まずは体内に流れる、色素の脈……"色脈"を感じとれッ!」
そう言って教官は腕を組み、ドヤ顔で仁王立ちをする。
「いや……いきなりやれって言われても……」
何の説明も無しにやってみろって、無理だからね? 普通無理だからね?
「あの、せめて何かヒントか、お手本を見せてもらえませんか?」
──澪の言葉に、クラスの全生徒がうんうんと頷いています。
「むぅ……それもそうだな……わかった。一度私がやってみるからよく見ておけ」
──そう言うと、教官は目を瞑り、肩の力を抜いていきます。
「──ふぅ……こんな感じだ。さ、やってみろ」
「「……いや、わからねぇよ!?」」
"やってみろ"って、目を瞑ってただけじゃん。どうしろってんだよ。もっとなんか無いのか?
「すんまへん。教官、何かコツみたいなのはあらへんのですか?」
お、ナイスだ宗。良くぞ言ったてくれた。
そう、ヒントだ。ヒントが欲しい。目を瞑りました、はい、やってみて……じゃ判らないんだよ。
「ん? 仕方ないな……いいか? まずは、こう……グワァァ!ってやるだろ? それから……バーン! ってやるだろ? そしたら、後はドドーンッ! て出来る」
「「………………」」
──思わず開いた口が塞がらない生徒達。まぁ、仕方ありません。私も分からなかったですし。
「参考にならねぇ……」
「余計に分からなくなりました……」
俺と澪が目頭を抑え、
「うぅーん……難しぃよぉ……」
皐月が唸り、
「なぁ、雅也は今の説明分かったか?」
宗は口調が素に戻り、
「あぁ、分かったぞ。特に、グワァァ! と、バーン! が分かりやすかったな」
「ん、分かりやすい」
雅也と麗奈は……理解してるっ!?
「え!? お前らあの説明分かったの?」
「ん? あぁ、分かったぞ」
「ん、簡単」
二人が"え? 当たり前じゃん"みたいな顔をして、怪訝そうに言う。
「……えぇ……まじ?」
「あぁ、俺なりに要約するとだな。
"開花の儀"の時のように、自分中で、何かが動く感覚を掴み、その流れに追従する感じだな」
「ん、そうそう」
──雅也が説明し、麗奈が同調するように頷きます。
「いや、お前の説明の方が百倍分かりやすいわ」
「えぇ、とても分かりやすかったです」
「せやな。教官の説明は、説明とは言わないやろ」
「んんー? 皐月まだ分かんないよぉ?」
皐月はまだ判らないようだ。皐月ってどっちかって言うと、感覚タイプだから今の説明は逆に難しかったのかもしれない。
「皐月、"開花の儀"は覚えてますか?」
「うん、覚えてるよ?」
「その時の、感覚は覚えてますか?」
「うーん……あっ! あのくすぐったい感じのこと?」
「多文そうです。その感覚をもう一回思い度してみて下さい。そしたら、その流れを追いかけてみてください」
「わかった! ……………ん! 出来た!」
早いな。皐月って以外と天才肌なのか?
「ありがとー! なんかね? ズズズー! ってなってね? グググってなって……びゅーん! ってなった!」
「……さいですか……」
やっぱ教官と同類じゃねぇか。