第十三話~入学式~
いやぁ、中々ネタが浮かばない・・・
3月12日:加筆しました。
四月一日、入学式当日
俺はいつもより少し早めに起きたあと、朝食を作り、洗い物をし、洗濯機を回す。そして、壁に掛けてある新品の制服に袖を通す。
「何か気が引き締まるな……!」
俺は今、テンションアゲアゲ状態だった。
この学園の制服は男子は黒のワイシャツにグレーのベスト、一年は青、二年は赤、三年は緑の斜めの縞模様の黒ネクタイ、学年毎の色のラインが入ったジャケットに似た金色のラインの入った黒い上着を羽織る事になっている。女子はグレーのブラウスに学年毎の色のネクタイ、そして、金色のラインが入ったダブルジャケットタイプのブレザーを羽織る事になっている。しかし、校則が魔物や、色彩魔術関連以外緩いため、着崩していても特に怒られることはない。
「さて、そろそろ行くか」
◇◇◇◇◇
学園内の昇降口に張り出されたクラス割りの表を見て、自分のクラスを確認する。
「俺は……一ノ三か。おっ、雅也と同じじゃん」
俺はホッと息を着く。やっぱり一人ってのは心細いからなぁ、雅也と同じで良かった。他には、と。
「うぉっ……!」
雅也の名前を確認したところで人混みに揉まれた。
◇◇◇◇◇
「ふぅ、酷い目にあった・・・」
まさか一ヶ所にしか張り紙が無いとは、これいかに。
その時、突然教室の入り口から黄色い声が聞こえて来た。
「久しぶりだな、琥太郎」
「あぁ、久しぶりだな、雅也」
黄色い声の発生源は雅也だった。
「いやぁ、雅也と一緒でよかったよ。一人知らないところに放り込まれても馴染める気がしなかったからな!」
「それでよくお前は学園に入ろうと思ったな」
「誉めるな誉めるな……寒気がするだろ?」
「誉めていない。というか寒気がするとはなんだ」
「冗談だって、二割」
「八割は本気だろうが。それに二割というのは、あれのことだろう?」
「お前も見たか」
「あぁ、あれは……」
「「濃いな」」
俺と雅也は見事にシンクロした。
「だよな?あれは濃い」
「あぁ、部下は苦労してるんだろう」
雅也も感じ取っていたか……と言うことは、コイツも……。
「お前もこちら側の人間か」
「琥太郎もか」
俺達は顔を見合わせて……、
「「はぁ……」」
同時にため息を着いた。
え?こちら側ってなんの事だって?決まってんだろ、いつも誰かの皺寄せを喰らう苦労人ってことだよ……自分で言ってて悲しくなってきた。
「まぁ、切り替えていこう」
「それまそうだな」
「じゃ、改めて。宜しく、雅也。制服似合ってるぞ。イケメンはなに着ても様になるな」
「あぁ、此方こそ宜しく、琥太郎。お前も似合ってるぞ」
俺達は握手を交わした。その時。
「あれー? コタ兄と雅也?」
聞き覚えのある声が聞こえて来た。それと同時に教室から、
「「おおぉ!」」
と言う声が聞こえた。
「おぉ、皐月! お前もこのクラスだったのか」
「ひ、久しぶりだな、皐月」
「うん! 二人とも久しぶり!」
皐月は跳ねながら手を振ってくる。動きに合わせて、アホ毛もピョコピョコしてる。一方雅也は若干顔がひきつり、冷や汗もかいている。
「二人とも! 元気だった?」
「あぁ、元気元気」
「ま、まぁな」
「うーん、雅也元気無いよ?」
「そ、そうか?」
「そうだよ! 元気出しなよ! 楽しいよ?」
「お、おう。そうだな」
「あ! 琥太郎、雅也! 制服似合ってるよ!」
「そうか? 皐月も似合ってるぞ」
「あぁ、俺もそう思うぞ」
「ありがとう!」
皐月は女子の制服を着てはいるが、少しサイズが大きかったのか、袖から腕が完全に出ておらず所謂"萌袖"状態となっていた。加えて肩の幅も大きかったのかずれていて、彼女持つ幼さと相まって、可愛さを醸し出していた。
「お? 皐月ちゃんに雅也に琥太郎やないか! 久しぶりやなぁ!」
琥太郎達が話をしていると、そう言って近づいてきたのは……
「「宗!」」
──宗だった。
「「キャァァァァァ////」」
「「ええぇぇぇぇぇぇぇ!?」」
──それと同時に黄色い声と驚きの声が同時に聞こえた。
けっ、高スペックエセ関西弁イケメン(笑)が。それにしても、宗も雅也もイケメンは凄いなぁ~。完璧に制服を着こなしている。端から見ればモデルにて見えるんじゃね?
「ん? 琥太郎、今えらい失礼なこと考えなかったか?」
「ソ、ソンナコトナイヨー。ハッハッハッ」
「そうか? ならええけど」
チッ、間の鋭い奴め。早々に話題を変えよう。
「にしても、四人も同じクラスってのも珍しいよな」
「そうだな」
「せやね」
「うん! 何か運命みたい!」
「「うん、そうだねぇ~」」
「どうしたの?声を揃えて」
「「いや、何でもない」」
「変なの」
そう言って首を傾げる皐月。実は皐月の無邪気な笑顔に和んでいただけなのだが、本人には口が裂けても言えない。
そういうとこなんだよなぁ、と、この時三人は思ったのだった。
暫く四人で世間話をしていると。
「「おおぉぉぉぉぉぁぁぉぉぉぉ!!!!」」
「「よっっっしゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」
教室中の男子生徒から歓声と勝利の雄叫びが上がり、
「「おぉぉぉぉぁー」」
と、女子から感嘆の声が出た。
「此処までくると、な……」
「そうだな……」
「せやね……」
「んー? どうゆうこと?」
「ん? あぁ、それは」
言葉を発しようとしたその時、
「琥太郎っ」
俺は後ろから腕に抱きつかれた。
「うおっ!?」
それを見た皐月は、
「そーゆーことだったんだね!」
そう言ってサムズアップしてきた。
「どうゆうこと!?」
何に納得したんだお前は!?
──腕から脳に伝えられる幸せな感触ににやけそうなるが、何とか留まり、麗奈に、
「ってゆうか離せ麗奈!」
「むぅー」
そんなことされたら、勘違いするだろうがっ!
不満そうな声を上げながら、麗奈は組んでいた腕を離す。麗奈も皐月と同じ女子制服を来ていたが、リボンをしておらず、少しラフな感じを出していた。ソレがまた彼女の気まぐれさを表しているようだ。しかし、入学そうそう気崩すとは、中々度胸がある。
「いきなりくっつくでない。女子だろ? 襲われたらどうするんだ?」
「琥太郎なら大丈夫」
「俺には襲われても大丈夫だと……」
「ん」
「……」シュン
何気に傷付くんですけど……此処まではっきりと、襲われても対処出来るって言われるとは……。
「いい感じにすれ違っとるね」
「あぁ、それでいて会話が成立してるのがまた凄いな」
「え? 琥太郎気付いてないの?」
「そうなんよ。びっくりするやろ?」
「知ってるよ! こーゆーの鈍感って言うんだよね!」
「そうだな。でも琥太郎に入ってやるなよ」
「せやね。その方が面白そうやし」
「いや、そうゆうわけでいったんじゃ・・・まぁいいが」
琥太郎はこの時麗奈に言われたことがショックで話は耳に入っていなかった。それと同時に、
「「はぁ・・・」」
「くっそ・・・リア充めぇ・・・」
「堂々とイチャイチャしやがって・・・」
「何であんなパッとしない奴に・・・」
等々、罵詈雑言が飛び交っていたが、これも琥太郎の耳には入っていなかった。
「相変わらず仲がいいですね? お二人さんは」
そんなことを言いながら教室に入ってきたのは
「「澪!」」
「はい、皆さんお久しぶりです」
澪だった。そして……。
「「きたぁぁぁぁぁぁぉぁぉぁぁ!!!!」」
「「うをぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」
と、男子。そして……。
「「め、女神・・・!」」
「「お、お姉さま・・・!」」
と、女子からも何やらフラグの匂いがしていた。
「な、何故だかものすごい数の視線を感じるのですが・・・?」
「諦めろ」
「ああぁ、そうだな」
「慣れやで?慣れ」
「よく判らないけど、久し振り!」
「久しぶり」
「えっ、慣れですか……?」
澪は先の二人と違い着崩すこともなく、完璧に制服を着こなしていた。そこが彼女の真面目さをあらわしているのだが、それでも尚、彼女には気品が溢れんばかりに漂っていた。
「まぁ、それは置いといて」
「いや、置かないで欲しいのですが……」
「全員揃ったな!」
「スルーですか……?」
「全員揃ったな!」
「何が何でも流すんですね……」
「……」
ノーコメントで。ケッシテメンドクサイワケジャナイヨ?
「はぁ、分かりましたよ。流しましょう」
「よぉし、澪が折れたところで話を続けるぞ?全員揃うって偶然じゃないよな?」
「そうやなぁ……なんでやろな?」
「麗奈は何か知ってるか?教官から何か聞いていたりとか」
「知らない」
「そうか……まぁ気にしてもしょうがないし、そのうちわかるだろ」
「フッ……お前らしいな、琥太郎」
「せやね、確かにその通りや」
「もっと楽しいこと喋ろー?」
「そうだな」
「私の用件ってこれだけのためにスルーされたんですね……」
人知れず、落ち込む澪だった。
◇◇◇◇◇
そして皆で世間話をしていると、教室のドアが突然開いて教官が入ってきた。
「「おおぉぉぉぉぉぁぁぉぉぉぉ!!!!」」
──今度はクラス中の生徒が声を上げる。
「うるさい!!」
「「お、おぉぉぉ……」」
今度はさっきとは違う意味で声が上がる。
「まったくなんなんだ、一体? 入った途端に大声を上げられるなんて初めてだぞ?」
まぁ、教官の見た目じゃあねぇ? 傍目からみたら軍服姿の美女にしか見えないからなぁ。これで四十才越えてるとか詐欺だろ。
「こほん。えー、今日からお前たちの担任となった桧並だ。桧並先生でも、教官でも好きなように呼べ。先に言っておくが、其処にいる桧並 麗奈とは親子だ」
多分さっきからチラチラと教官と麗奈をクラスのやつらが見比べてたからだろうが……。
「「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」」
「うるっっさぁぁぁい!!」
「ええぇぇぇぇ……」
やっぱこうなった。なんの茶番だ、これ?皆も呆れた顔してるじゃねぇか。
「話を続ける。これから講堂へと移動し、入学式を行う。そのあとはカククラスの教室へもどり自己紹介などを含めたレクリエーションとカリキュラムの説明、デバイスと校章の配布と、その後身体測定を行った後に、"異彩開花の儀"を行う、以上だ。質問はあるか?」
「教官、質問良いですか?」
「駄目だ」
「えっ……?」
いや、「今質問はあるか?」ってきいたじゃん、あんた。
「冗談だ……そのっ……なんだ……場を和ませようと思ったんだよ……うぅ、そんな目でみるなぁ!///」
「逆ギレ!?」
「「ズッッッキュュュュュュュュン」」
「うわっ!?」
なんだ今の!?
「ま、マイエンジェル・・・」
「神々しい・・・」
「お嬢様・・・」
「か、可愛い・・・」
「な、なんだ!? 急にどうしたんだ!?」
クラスの女子を中心的にそんな事を口走るやつが出て来た。そして現在、教官に詰め寄って質問責めにしてる。
「いやいやいや、明らかにおかしいだろ!? 特に"お嬢様"ってなんだよ!? お嬢様な年齢なのはお前らだろ!? 何で女子のほうが多いんだよ!?」
「おぉ! 鋭い突っ込みやなぁ。芸人目指せるんちゃう?」
「そうだな、今のは鋭かった」
「お笑いはよくわかりませんが、凄かったです」
「うん!」
「ん」
「納得してねぇで止めんの手伝だえやぁぁぁぁぁ!!」
ここに今、一際大きな声が響いた。
「まったく、いい加減にしろ」
「「すみませんでした……」」
あの後結局教官の一喝で事態は収まった。
「教官が始めからビシッと言えば好かったのに……」
そんな俺の呟きが聞こえたのか違うのか教官が、
「何か言ったか?」ニコッ
「イエ、ナンデモナイデスヨ?」
「……ふんっ」プンプン
「あはははは……」
大丈夫か? このクラス?
「それじゃ時間も押してる。番号順に並べ、講堂へ行くぞ」
◇◇◇◇◇
無事に入学式を終えた後、俺達は教室へ戻ってきた。途中まで内容は覚えていない。だって寝てたし。驚いたことと言えば、学園長が団長だったり、新入生代表で澪が抱負を述べたぐらいか?そう言えばいつの間に居なくなってたな、澪のやつ。
「さて、それじゃあ自己紹介といこうか。前から順番に行ってくれ。なに、そこまで詳しく言わなくてもいいさ。時間はこれからはたっぷりとあるからな」
教室の構成は大学の教室に近い構造だ。擂り鉢状の空間の底の方に黒板と端末がセットしてある。席は自由で、それぞれの席に画面があって、其処に黒板に書かれた板書が写される仕組みだ。
よく出来てんなぁ。にしても、2000年代は黒板に書かれた文字を直接見ていたらしい。遠くからじゃ見えにくいだろうに。
「さ、どんどんいこう。それじゃあ始めてくれ」
「は、はい!」
指名された女子生徒は声を上擦らせながら自己紹介を始める。
「さ、笹木 恵梨、です。しゅ、趣味は──」
と、どんどん自己紹介は進んでいく。
「青山 輝樹だ。みんなと仲良くしていきたいと思ってるから、そのつもりで。趣味はサーフィンで、好きな食べ物は、オムライスかな?みんなよろしく!」
「「キャァァァ///」」
女子たちが黄色い声援を送る。
「「チィッ……イケメンがァ……」」
男子達が舌打ちをする。
うへぇ、イケメンだよ。しかも爽やかタイプの。宗と丸被りしてんじゃねぇか。エセ関西弁が無かったら。完全にキャラ被ってるぞ。
……にしても、胡散臭い笑顔だな。心の中では人を見下してそうな、そんな気がする。俺がイケメンを憎みすぎてそう見えるだけか?どんだけイケメンを憎んでんだよ、俺。
そうこうしているうちに、澪の番が来た。因みに男子達の注目度が尋常じゃない。
「みなさんこんにちは。私は鞠智 澪と言います。趣味は料理と読書です。これけら同じ学び舎で過ごす皆さんと仲良くできたら、と思います。よろしくお願いします」
男子達から、ため息が出た。
「あの方は新入生代表の……」
「か、完璧だ……」
「宝だ……我が国の至宝だ……!」
……うわぁ、気持ち悪っ……。熱に浮かされてる様な顔してやがるぜ奴ら。確かに澪はそんじょそこらのアイドルより整った容姿をしてるが、それを差し引いてもキモイ位の反応だ。
これが後の、[澪様親衛隊]の創立生徒に対する俺の第一印象だった。
お、次は宗か。
「お、どうもー。わいは槶原 宗っていうんや。よろしゅーな。趣味は特に無いなぁ。あ、剣術だったら修めとるで。みんなよろしゅーな」
ぶれねぇな。ここでもエセ関西弁を続かんのか。もはや尊敬するは。
「「かっこいい・・・」」
……え?
「剣術のできる関西弁のお兄さん……」
「「キャァァァ///」」
あんれぇ?おっかしーなー?
普通驚くとこだろ・・・あ、もしかして剣術と、関西弁が和風の雰囲気を醸し出してるのか?それに初対面だし。ははぁん、それで不自然に思われなかったのか。けどこのままじゃバレた時に困りそうだな。まぁ、自業自得だな。
後に、[宗くんを可愛ガールズ]が結成される事になる。
「皐月はねー?皐月だよ!よろしくね!動くことと、お菓子がすきだよ!みんなよろしくね!」
「「そうなんだねぇ〜」」
「あぁ、癒される・・・」
「あの未成長のなだらかな肢体……なんと尊いのだ……!!」
「あの笑顔こそ、我が誉よ」
「おぉ!我が同志達よ!!」
クラス内に潜む変態紳士が覚醒した瞬間だった。
お巡りさん、こいつらです。
やばいな。何がって、一クラス50人近く居るこのクラスだけでも、4人の変態紳士を観測してしまった・・・。さっきの澪の時のやつらのことを考えるとこのクラスに居る変人の割合は多そうだ。
余談だが、この変態紳士達が後に、[皐月ちゃんにお菓子をあげ隊]の創立者となるのは最早言うまでも無い。
「桧並 麗奈」
そう言うやいなや、麗奈は机に突っ伏した。
……ぶれねぇなぁ、麗奈のやつ。
まぁ、ぶれないのは悪い事じゃ無いが……
「ちゃんと自己紹介をせんか!」ゴツン
「ううっ、痛い……趣味は無い。好きな動物は猫。以上」
「はぁ、もういい。次に行こう」
はぁ、無口過ぎるのもどうかと思うんだがな……表情はコロコロ変わるのに。
「無口で神秘的な少女……女神!!」
「心が浄化されていく……はぁぁ!!」
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…///」
うわぁ……こっちにもいたよ。まぁ、麗奈は可愛いいから仕方がないって言えばそうなんだけど。
最早お察しだと思うが、[桧並さんに癒され隊]が結成された。
おっと、遂に俺の番か……めんどくさいなぁ。
遂に来たか、覚悟を決めろ。………しんどいなぁ……はぁ。
「御笠 琥太郎です──ひっ!?」
俺はクラス中の男子生徒から殺意の込められた視線を向けられていた。
「あいつめェ……澪様と話していたな……殺す」
「なんだと!………殺す」
「ほほぉ……あいつがそうなのかぁ……殺ろうじゃないか」
「あ! それにあいつ、朝、桧並さんと腕を組んでやがったヤツじゃねぇか!……ぶっ殺す……」
「はぁ!? 二股だとぉ?……殺ってやんよぉ!!」
「それだけじゃない、皐月ちゃんとも話していたぞ!!」
「なんだとぉ!!……粛・正☆だな」
「そうだ! 粛正するんだ!」
「「粛正!!」」
「「粛正!!」」
「「粛正!!」」
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺──」
「ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!」
怖っ!!命の危機を感じる……俺の生存本能が今までにないほどの警戒レベルに引き上げられている!!
早く座ろう……。
こうして俺の自己紹介は終了した。
「はぁ……これからどうなるんだ?俺は」
粛正される未来しか見えない。
校舎裏への招待状を渡されるのだろうか……。
いや、めげるな俺よ!まだ高校生活は始まってすらいないんだ、これから友達を増やせばいいじゃないか!……増やせなかったら強制バッドエンドだけどな!
やっぱ不安しかないや、ははは。
「次のやつ、自己紹介だ……ふわぁ~」
「先生眠そうだよね?」ヒソヒソ
「だよねー!でも、そこがまたあの見た目とのギャップ萌えってやつ?があって可愛いよね~!」ヒソヒソ
女子生徒のそんな密談が聞こえた。
……自分の預かり知らぬ所で好感度稼いでるな、あの人。
「ん?俺か……」
──そう言ってとある男子生徒が立ち上がった瞬間。
「「キャァァァァァ!!///」」
──女子達から今日最大の黄色い悲鳴が上がった。
「クール系王子様よ……!!」
「かっこいい……///」
「あぁ、神よ。このクラスにしてくれたことを感謝します……」
「きゅぅぅぅぅ」バタリ
まじかよ……一人気絶したぞ。どんだけイケメンだよ、雅也は。
気絶した女子生徒を見ながらそんな事を考える。
「俺は水上 雅也。趣味は修練と写真を撮ること。得意なことは……そうだな、強いて言えば槍術を嗜んでいる程度だ。これからよらしく頼む」
へぇ、写真を撮るのが趣味なのか。意外だな。でもどんなものを撮ってるんだろ?後で聞いてみよう。
「きゅぅぅぅぅ」バタリ
「きゅぅぅぅぅ」バタリ
「きゅぅぅぅぅ」バタリ
あ、さっきまでキャアキャア言ってたやつじゃん。結局お前らも気絶すんのかよ!
その後も自己紹介は進んでいき、遂に最後の一人となった。
「小生の名は、拿戸邉東郷でごさる!だがしかし、この名は世を凌ぐ仮の姿。しかして我真名は──」
「よーし、全員自己紹介は終わったな?」
「なっ!……またれよ!我真名は──」
「終った、な?」
「はい……」
折れるの早っ!何が「我真名は~」だ。只の厨二病拗らせたやつじゃねぇか。教官めんどくさくなって途中で割り込んだにちげぇねぇな。
「よし、じゃあ次は身体測定と"異彩開花の儀"を執り行う。男女共に更衣室へ行き、ここへ十分後に集合だ。いいな?それじゃあ、各位解散!」
こうして入学式と初日の日程は進んでいくのだった。
お読みいただきありがとうございます。
次回もお読みいただけると幸いです。